言えないこと
「ヴィクトリア、貴女のことを悪役令嬢だというウワサを流したのはボクです。それでは、またね」
「ちょっと!?」
そう言ってハリーは立ち去った。私はちょっと考えている。さっきのハリーが話した内容は信じられない。しかし、ハリーは、メインヒロインという言葉を使っていた。信じられないけど、やはりハリーの中身は女性なのだ。それも誰かが本当に転生している。私以外の誰かが。ちょっと考えて、どうしても誰が転生しているのかはわからない。私はただただびっくりしている。
「あれ、ヴィクトリア? どうしたの?」
「ハンナ!? ううん? なんでもないよ?」
うーん、ハンナがやって来た。いかん、普段通りにしないと。私はハンナと貴族学校を出る。私の家の部屋にハンナをまた招いた。しかし、ハリーはいったい誰なのだろうか。
「ヴィクトリア、ちょっと様子がおかしいね? 本当にどうしたの?」
「えーっと?」
いかん、ハンナが私の様子がおかしいことに気付いている。どうしたものか。私はハンナとお茶をしながら言い訳をしている。しかし、ハンナは質問をやめない。私は言うべきかどうかで悩む。だが、言えるわけがなかった。私が乙女ゲームや転生やメインヒロインのことだとか言えば、間違いなく私はおかしいと思われるからだ。信じられないけど、私とハリーの中身は転生してきたのだ。
「ヴィクトリア、私は悲しい。私はヴィクトリアと友だちなのに何も教えてくれないから」
私はハンナの言葉が心に刺さる。本当はハンナに言いたい。でも、乙女ゲームや転生やメインヒロインだとか言えば、ハンナは恐らく私から離れるだろう。私はいったいどうしたらいいのだろうか。いきなりのことで、私は頭がぐるぐると回る。私はとても悲しい。友だちのハンナに何も教えてあげられないから。私とハンナは無言でお茶をしていた。
続く




