適当にキャラクリする
うむ。なんとも違和感はない。
だが、生身の感覚ではない。夢の途中のような、奇妙な感覚の中にいる。
身長を伸ばそうと思えば伸ばせるし、女の子になろうと思ったらそのままなれる。
うーむ、なんかくすぐったい。
「種族を選んでください。出自表でダイスを振りたい場合は1を、それ以外の場合は、2を押してください。」
押す?と思ったら、昔使っていたパソコンのキーボードが、目の前に現れた。
1と2以外をガチャガチャと触ってみる。打鍵感も、昔使っていたもののそれだ。
一年で使い潰して捨てたはずだが・・・そうか、考えてみれば、もう俺の体も無いんだよな。ウケる。
【出自表とは】
3D6を振って、その出目でキャラクターの種族などを決める行為である。
平均値に近いほど、平凡なキャラクターになる。
うむ。記念すべきダイスロール一回目が【3】である。人間の貴族。しかもトップエリートだ。
しかし、貴族・・・とんと想像ができない。ダイヤモンドを持ってそうなイメージしかない。
「年齢を指定してください。」
おっと、ダイスロールじゃないのか。せっかくだから、16歳・・・まだスケベなことができない年齢にしておこう。
まあ、法律なんてあってないようなものだが。
16歳の時の俺は、まだ中二病が抜けきっておらず、第二次反抗期のまっただ中だった。
荒れに荒れた時期だったが、あの頃の自分を再現してみようか、という欲が出てきた。
「16歳、人間、男、で能力表を作成します。」
はーい。じゃあ能力値のダイスロールね。これはGMロールなのかな?この世界の基準がよくわからん。
-数分後-
・・・なんだこの超人・・・
そう!何故かすべての項目で最大値が入ったのである!
ストレングス 8+12
アジリティ 8+12
ヴァイタリティ 8+12
インテリジェンス 8+12
デクスタリティ 8+12
ラック 9+12
勝ったなガハハ!(何に)
我、16歳の最強能力エリートぞ?
我、エリートぞ?
「名前を決めてください。」
じゃあ「ロンメル」で。砂漠の狐かっこいいよね。
「職業を決めてください。あなたはすべての職業を利用することが出来ます。」
すべての・・・と言われたが、どんな職業があるのか分からない。
そういうときは、キーボードで/helpを打ち込めば良いらしい。
戦士、魔術師、僧侶・・・と色々あるが、ここは色々つぶしのきく『ロードナイト』を選ぶことにした。
僧侶系の呪文を使うことが出来るし、アンデッド相手には破魔が出来る。
都合の良いことに、出自表でも相当の出目を引いている。
「16歳、男性、『ロンメル』、ロードナイト、以上でよければシナリオを開始します。」
「y、と。」
ここからが、元43歳無職の本当の冒険だ!
「キャラクターのマッチングを開始します。しばらくお待ちください。」
【マッチングとは】
シナリオにおいて、パーティーに必要なキャラクターを引き合わせる行為。
初期パーティーは戦士・魔術師・僧侶・シーフ・シャーマンという例が多い。
「お待たせしました。キャラクターを転送します。」
まばゆい光があふれた。
脳内までもがしびれてしまうほどのそれは、すぐ収まった。