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竜宮城に招待されました

「キュゥゥ…」


 なぁに、どうしたのシエル。私は大丈夫よ。だって、もっともっと苦しい人達がいるんだから。こんな私を心配してくれるなんて、お前は優しいね。


「…っ」


 羽を整えてあげようと腕を動かしたら、皮膚が引き攣る嫌な痛みがして呻いた。


 すると、その部分と顔にモフっと柔らかい何か。え、なにこれ気持ち良い…。思わず手を伸ばそうとして、やっぱり痛んで、それを叱るようにまたモフモフされる。叱られているのに気持ち良いってなんのご褒美だろう…?


「…?」


 ゆっくり目を開けると、そこは竜宮城でした。


 所々に埋め込まれているのは、もしかして真珠…?

 なんて贅沢なんだろう、ディアマント家も贅沢の限りを尽くしていたけれど、上には上がいるものね…。でも、ここはなんだかウチとは違って、上品な感じがする。イヤミな雰囲気がない。


 ボーッと内装を眺めていると、ぬ、っと後ろから覗かれた。


「グルル…」

「キュィっキュィっ」


 シエルは、誰かに羽を矢で傷つけられて飛べないでいたのを拾った小鳥だ。

 私を覗き込んでいるのは、そのシエルの巨大版。…え、なにこれ、鳥ですか……?


「それはグリフォンだ」


 振り返ると、その人がいた。夢じゃ、なかったの…。


「お前、まさかそいつがグリフォンの子供だって知らなかったのか?だとしたら、懐かせたのは天性の才能か」


 淡い金色の髪に褐色の肌。真珠の虹彩を写し取ったような瞳。…人間、なのかしら?


「っごほ、ゴホゴホ…ッ」

「あー、喋るな喋るな。煙で喉やられてんだろう」


 悲しいお知らせです。

 声、出ません。


「しかもお前、裁判か何かで魔力、奪われたまんまだろう。治癒魔法もポーションも効かん。まぁ安心しろ、今は魔力ナシのやつのための薬や治療法も確立されてる。魔法より時間はかかるが、お前の脚もちゃんと治るさ」


 脚…。


 下を見ようとして、何故か手のひらで両目を覆われた。


「下を見るな。前と上だけ向いてろ。あぁ、海なら見下ろしても良いぞ、自慢の海だ」


 たぶん、包帯か何かでグルグル巻きにされてるわね…。


「………」

「…ん?あぁ、本当に知らなかったようだな。お前が世話してたコイツはグリフォンという精獣の一種だ。で、寝そべってる方は母親だな」


 聞いたことはある。

 精獣。聖獣。精霊。魔獣。怪物。エトセトラ。


 …でも、それは空想の動物で、御伽噺の生き物じゃなかったの?


「あっちの大陸の奴らはあまり縁がないか」

「………」

「エーデルシュタイン。ここは魔法と精霊の世界さ」


 エーデルシュタイン。

 本当に、あったのね…?


「とんだ箱入りだなお前。それなのに、悪役令嬢演じようだなんて、考えなしのバカなのか無類のお人好しなのか」


 たぶん、圧倒的に前者です。


「お前達は歴史上、度々こっちに戦争を仕掛けてきている。最近また動きが怪しいから俺自ら偵察に潜り込んでいたら、偶然、話を持ちかけられてるお前を見つけてな。こっちもまた救いようのないバカの一人かと思ってたんだが、そいつが助けてくれと訴えてきたから仕方なく、ってやつだ」


 ナミルさんは、私が何も言わなくても知りたいことを説明してくれた。


「ここは、今は俺の離宮だ。先祖代々、この海とエーデルシュタインを守るための砦の主人として王族の中から選抜される。何代か前にも『蛇眼』の持ち主がここを治めていたらしい」


 私を拾った人は、どうやら海の王族のようです。

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