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冒険者登録・依頼受注 ギルド受付にて

「はぁー」

 

 クロックはシオンと別れてからアリスと一緒に冒険者登録の為ギルドの受付に来ていた。


「それでは、アリス様のご活躍を女神アリア様の名をお借りして心よりお祈りします」


 クロックのため息をよそにアリスはギルドへの登録を終えたようだ。


「ありがとうございます。それではクロックさん依頼板のほうへ向かいましょう」


 自身に発行されたカードを眺めながら、アリスは席を立とうとする。


「少しお持ちください」


 受付の女性が声をかけてきた。


「すみません。何か不備でも?」


 アリスが椅子から少し浮かしていた腰を椅子に戻す。


「いえ、クロック様の事で……」


 そう言うと受付嬢は眼鏡のブリッジを人差し指で直してからクロックの方へ顔を向ける。


「僕ですか?」


「ええ、クロック様も今日から難易度の高い依頼を受けることができるようになります」


「はい」


「これは新人にありがちなことで一般論なのですが……あまり高ランクの依頼を受けようとしないでくださいね。それでは頑張ってください」


 受付嬢は二人を見て激励する。


「ええ? ありがとうございます」


 それをアリスは不思議そうにしながらお礼を言う。対してクロックは無言のまま首を縦に振るだけだ。





 クロックとアリスは依頼板の前に立つ。

 低ランク依頼板にはいつでもある薬草採集の依頼と、ペットの捜索、失せ物探しの三件だけしかなかった。だが高ランク依頼の方はかなりの量があった。


「ドラゴン退治の依頼なんかもあるのですね」


 アリスがぼそっとつぶやいた。


「そちらは騎士隊が出向いて討伐する予定になっているはずです」


 クロックは依頼表の補足事項の所を指でさす。


「本当ですね。ずいぶんのんびりというか雑な集め方ですね」

 アリスは思ったことをそのまま口に出す。実際五日後に現地集合といったことだけが書かれているだけになっている。


「僕もそう思いますけどしょうがないです」


 この都市でドラゴン退治ができるのは騎士隊と名の知れた冒険者数パーティーだけだ。もしかしたら流しの冒険者で狩れる者もいるかもしれないが、騎士隊が討伐に向かうことが決定しているので依頼報酬がものすごく減額されている。そのうえ戦利品も都市が回収することのなるため高レベルの冒険者はこの依頼は受けないだろう。


 それにこの依頼のドラゴンは今の所敵意は感じられない為騎士隊が行くには行くが対話で片付くのならそうする予定のようだ。


「もしよければこれ受けませんか? シオンさんには明日相談するとして」


 アリスの方から別の依頼を受けないかと提案がクロックになされる。


「魔界の門の調査ですか」


 魔界の門とは、言葉通り魔界へと繋がる門だ。通常この門は人が住んでいる近くには出現しない。ただたまに人里近くに出現し、そこから魔物が出てくる。今回はアリアベルクの北にある村の近くの森に現れたようだ。


「ええ。それもいいかもしれませんね。とりあえず人数制限とかは大丈夫か聞きに行きましょうか」


「先ほどの受付嬢さんの所が今空きましたね」


「……ええ、では聞きに行きましょう」


「どうかしましたか?」


 少し間の空いたクロックの返事にアリスは疑問に思ったようだ。


「すみません」


「もう決まったのですか?」


 それをクロックは無視して受付嬢の所に先に向かっていた。


「はい、魔界の門の調査依頼の人数状況だけ聞きたくて、受けるかは明日また報告します」


「シオン様とパーティ組むのでしたね――。そちらの依頼なら人数は全然余裕がありますね」


「それなら良かったです」


 クロックはそのまま席にも着かずに立ち去ろうとした。


「まぁ、そう焦らずに。受けるのを前提で依頼内容を詳しく説明させてもらいます。アリス様は初めてですしレクリエーションもかねて……」


「お願いします」


 アリスは受付嬢に言って用紙貰い、メモを取り始めた。こうなっては自分も席に着かなくてはならないと思い、クロックも席に着く。だが話が終わるまでの間、クロックは目をつぶり腕組みをして座っていた。


「と、まぁこんな感じです。アリス様、お分かりいただけましたか?」


「はい。ご丁寧にありがとうございました」


「いえ、これが私の仕事ですので……」


 話が終わったようなのでクロックは目を開ける。


「本来ならお二方は受けられないランクの依頼だと思います。ですが今回は新人も受けれるよう手配されているので、死ぬようなことは無いと思われます」


 受付嬢はアリスの方へ向けていた顔をクロックの方へ向ける。


「ええ、安全だと思います」


 クロックも三日前この依頼を受けようとしていたがその時はまだ制限がついていた。それが今は外れているということは安全性が確保されたのだろう。


「アリス様、もしクロック様が無茶をしそうになったら止めてくださいね」


「無茶?」


「本来なら薬草採集のときにモンスターが現れたら冒険者なれした人が 先陣を切って対処するのですが、クロックさんはそれを無視して回避楯役をかってでたりしていたので心配なんです」


「その時のクロックの判断に間違いがありましたか?」


「無いので逆にギルドとしては困っているのです」


 アリスは首をかしげる。


「ギルドとしてはただ単に功名心で動いた方や単細胞の方などが実力もないのに動いた場合は叱りつけることができるし、最悪放っておきます。けれどクロックさんの場合、いくら犠牲が少しで済むからといってもかなり自分の命を懸けにしていました。そういのは叱りづらいし、優秀なのでギルドとしては末永くいてもらいたいのです。それに……」


「それに?」


「この話はここで止めましょう」


 クロックは最初から分かってはいたが“ああ、この人もか”と思いながら、冷ややかな目をして席を立つ。


「そうですね。とりあえず今日はこの辺で失礼します」


「ありがとうございました。もし明日シオン様が先に来られていたらこちらから話をしておきましょうか?」


「お願いします」


 クロックとアリスはそのままギルドを後にする。


「それでは僕はこれから行くところがありますので」


「私も一度宿に戻りましょうかね」


「では明日は一三時にここ集合で」


 そう言ってクロックは、姉フィートの墓がある市民墓地に向かい、その足でエバンスのもとに今日の報告に向かうのであった。

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