回想②
クロックはエバンスの家の地下室に連れてこられていた。
無機質な正方形の白い壁にベッドが一つに大きな箱が一つだけの部屋だ。
「起きていた方が反応を楽しめますよ」
「……。そうね」
エバンスはクロックに手のひらをかざす。そして小声で治療魔法を唱える。
「あれ、すみません寝ちゃいましたか。え」
クロックは目を覚ました。そして自身がベッドに寝かしつけられているのに気が付いたので急いで起きようとしたが、身体が動かなかった。
クロックは鎖で両手両足をベッドに縛り付けられていた。
「あなたが悪いんだからね」
そう言ってエバンスはクロックの服の中に手を入れる。
「エバンスさん。何してるんですか!?」
クロックは驚いて身体をねじる。だがエバンスはそれを気にも止めず、クロックの身体をまさぐり続ける。
「まぁ、悪いようにはしないから。痛かったらちゃんと言いなよ」
後輩が箱の中からお香のようなものを出してきて、それに火を点ける。
部屋が小さいためすぐに一面に、甘ったるい香りが充満する。
「もう、じれったいわ」
エバンスはクロックの服を腕の力だけで破く。
「あの、どういうことですか」
クロックは優しかったエバンスの行動に初めて恐怖を覚えていた。
「大丈夫優しくするから」
エバンスはクロックのズボンに手を掛ける。
「ちゃんと説明してください」
クロックは大声で叫ぶ。
「私はあなたとこういうことがしたかったの。だからあなたの姉が死ぬまで我慢していたのに……」
エバンスがしぶしぶといった表情で言う。
「姉が死ぬまでってどういうことですか」
クロックは自身の状況よりもその言葉に引っかかった。
「安心しなさい。私も医師としてこれでもプライドがあるから、私ができる最高の仕事をしたと胸を張って言えるわ。治せたらそれが一番良かったのだけどね。私の技量では無理だったわ」
「そうですか」
それを聞いてクロックは少し安心した。まさかとは思ったがエバンスがわざと医療ミスをしたのかと思ってしまった。
「なら、好きにしてください」
いくらクロックでもここまで言われれば分かってしまう。
エバンスが自分たち姉弟を格安の料金で見てくれていたことや、自分を引き取ると言ってくれたこと。それらは全部、純粋な慈悲からのくるものではない。自分という利益の為だったのだ。だからその利益を自分は支払わなければならない
別にそれを責めようとはクロックは思わない。ただ、自分が会ったことのない親というものをエバンスに重ねかけていたクロックにとっては、それはダメージのでかいものだった。
「本当にいいんですか?」
クロックの表情を見て、後輩はエバンスに聞く。
今回でこういうことは四回目だが今までの三回とは様子が違うことに後輩は気が付いていた。
前回までの者は受け入れてはいても顔が嫌がっていたり、抵抗しようとしたりしていた。ただそれは金がないから体を売った結果だ。後輩自身なにも思わなかった。ただ今回はなにやら事情が違いそうだと思い、エバンスに聞く。
「ええ、この子も良いって言っているわ」
エバンスの表情は言葉に反して暗い。
「わかりました」
後輩は、今回の件は何も見なかったことにしようと思った。お香の影響で記憶もおぼろげにしようと思えばできる。なのでクロックには悪いが、楽しもうと思った。
「それじゃ、クロックちゃん。脱がすわよ」
「はい」
クロックはエバンスに魂の抜けた返事をする。いっそのこと、この状況を楽しめれば良いのだが、そんな気分になれるはずがない。ただ、部屋にお香の香りが充満しており、それを吸っていれば現実逃避できる。そう思い、クロックは一気にお香を鼻から吸った。
「もういいや」
クロックはつぶやく。このまま眠ってしまおうと思って目を閉じた。すると、何故か身体が勝手に動く感じがする。
これはお香の影響だなと思い、クロックはそのまま気を失った。




