1.新人アルカタリア
二度寝をした結果は言うまでもなく異世界でオーナーをやるなんていう夢じゃなく、現実であることがわかった。
どうして俺が異世界に来てまでコンビニ経営をしなければいけないのかはわからないが、ポイントがなくなれば俺は生きてはいけないようなので、まずは従業員の召喚をすることにした。
今のポイントは9000以上なので最初は1万あったということだろう。マウスを動かして召喚という項目をクリックする。
・新人500P(時給10P)ランダム 【初回ボーナスあり】
・リーダー1000P(時給15P)選択可能
・店長1万P(月給5000P)選択可能
初回ボーナスと表示されているのでガチャ感覚で新人をクリックすると初回ボーナスと画面いっぱいに表示され、数秒後には美男美女の写真に画面が変わった。
写真の下には名前と年齢が書かれているのでこれがランダムではなく選択可能ってことなんだろうと思いながらスクロールしていくと1人に目を奪われた。
アルカタリア。16歳。
一目惚れって本当にあるんだなと思いながら写真を見ていたが、やはり先のことを考えれば最初は気軽に話せる同性で年が近い人間を雇うべきだろうと思いながらもアルカタリアの写真をクリックする。
魔族、男性という文字が視界に入ってきた。あ、男なのね。そっかそっか。
そのまま確認ボタンをクリックすると完了の文字に画面が変わった。
従業員が決まったので開店時間を設定する。まずは俺とアルカタリアくんだけなので9時から17時に設定した。もちろん土日休みにする。ちょうど明日と明後日は土曜日と日曜日なので休みだ。
あとは月曜日から金曜日の9時から17時にアルカタリアくんをシフトに登録する。そうする事で明々後日の9時までにアルカタリアくんが出勤してくるのだろう。
ある程度の設定が終わり、ふと男に一目ぼれしてしまったことを思い出してからすぐに忘れようと二度寝からさほど時間は立っていなかったが部屋に戻って眠りについた。
目が覚めて時間を確認すると夜中だったが眠気が全くないので部屋を出て店に向かい、マニュアルに目を通そうと椅子に座って読み進めていく。
マニュアルはゲームの設定書みたいで休憩することなく読み続け、マニュアルを読み終われば最初にざっくり読んでしまったことを後悔しながらもしっかりと内容を理解することが出来た。
まず元の世界で俺は死んだこと、オーナー=ダンジョンコアであること、俺が死ねばこの空間が無くなること、ポイントは俺の命であって無くなれば死ぬこと、ポイントを使ってダンジョンを広くしたりコンビニ以外の店を作れることなど。
なんで俺とマンション、コンビニが一緒にダンジョン内に現れたのかはわからないままだが、ここで生きるしか選択肢がないのだがポジティブに考えることにして、せっかく異世界に来れたので楽しみながら生きてみようと思った。
最初にマニュアルを軽く読んでしまったことでいろいろとすっ飛ばしてアルカタリアくんを雇ってしまったことがわかったので急ぎ開店できるようにするためパソコンを操作してポイントを使い準備を進める。
まずこの空間、ダンジョンには出入り口がないのでどこにでも繋げられるという異次元式の出入り口を一つ設置することにした。-500P
設置する場所を決められるようだが知らない場所の名前ばかりなので、とりあえず王国と書かれている場所に決めた。-50P
時間設定すればその時間だけ出現させることもできるようなので月曜日から金曜日の9時から17時に設定しておく。-50P
来た人にいちいち店の説明をするのも面倒なのである程度の説明が書かれた看板を入り口付近に設置することにした。-50P
出入口通路に扉を設置することも出来るようで、いくつか設置して扉にルールでも書いておき、読んで同意できるなら通れる。なんてことも出来るようだがマニュアルを読んだ限りでは防犯システムは完璧なので犯罪を犯すような人間が入ってきても何とかなるだろうと思い、ポイント節約のために設置はしないことにした。
コンビニで買ったものはダンジョンの外に持ち帰れないとマニュアルに書かれていたので買った後に食べられるスペースを設置することにした。-1500P
ゴミは放置して1分後にはダンジョンに吸収されて消滅するとのことだが、さすがのその辺にゴミが散らばっているような状況は好ましくないのでゴミ箱の設置はしておく。-5P
残り7000ちょっとか。まだ開店してないのでこの世界でどんな事が起こるのかわからないのでこれくらい残っていれば何かあったときに対応できるだろう。
マニュアルを読んだりパソコンの操作で疲れてしまったので発注などは起きてからすることにして一度部屋に戻ることにした。
ひと眠りしてから店に戻って商品の発注を行う。慣れた作業なのでパパっと終わらせることが出来た。
店の開店まで約一日。マニュアルでも読んで時間をつぶそう。
翌日の8時に店に入ると商品が棚に並んでいた。マニュアル通り棚に並びきらなかった物は段ボールやプラスチックの箱に入って置かれていた。
普通なら商品の数を機材を使って確認するところだが足りなかったらどこに連絡すればいいかわからないので確認作業は無しでいいだろう。
商品が並んでいる棚を眺めていると店の自動ドアが開き誰かが入ってきた。開いた自動ドアの方を見るとアルカタリアくんだった。
「あの、今日から働くことになりましたアルカタリアです。オーナーさんですよね? 宜しくお願いします」
「こちらこそよろしく。俺の事はオーナーでも店長でも何でも構わないよ」
「じゃあオーナーで。僕の事はアルと呼んでください」
「了解だ、アルくん。先に部屋まで案内しようか? それとも制服に着替えて開店時間まで仕事の説明でもしようか?」
召喚した従業員はマンションに住むことが決まっている。アルくんが住む部屋の家具などの設定は昨日のうちに済ませているので問題はない。
「あ、初回ボーナスでの召喚でしたので、僕は新人ではなくリーダーとしての知識があります。ですので、ご指導は不要です」
「お、そうなのか。楽で助かるよ。じゃ、これが君の部屋の鍵ね」
てことはアルくんの時給は15Pなだろうかと疑問が浮かんだので後ほど確認することにした。10Pだったら15Pに変更しなければならない。
パソコンの召喚画面に表示されていたのは目安であって確定ではなく、上げることも下がることも出来るのだが給料が少なすぎれば辞表を出して消えてしまうらしい。
極端に下げるようなことをする予定はないが、まじめに働いてくれれば時給を上げる予定だ。
「ありがとうございます。荷物を置いてきますね」
部屋まで案内しようと思ったが不要らしい。初回ボーナスだけあって500P以上の価値があるようだ。