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第8話 ソロ戦

今回はソロ戦、次回はギルド戦です。

楽しんで頂けると幸いです。

「ハァッ!」


 声をあげながら、槍を薙ぐ、薙ぐ、薙ぐ。

 バルドさんに涼し気な顔でスルりと受け流される。


「アルク、それじゃあ一生当たらんぞ」

「これはどうだ!」

「むっ」


 魔素がアルクの槍に集まっていく。

 アルクは槍に魔素を纏わせて、威力を高めた突きを放つ。

 だが、、


 ドンッ


 バルドの槍とアルクの槍がぶつかると、鈍い音がした後、アルクの槍は吹っ飛ばされ数メートル後方に飛んでいく。


「強化魔法か……カルラだな?」

「……」


 カルラさんはだんまりを決め込んでいる。


「ったく、魔法はまだ早いって言ったのに」

「教わりたいって言ったのは自分ですから」


 アルクが自ら教わりたいと申し出たことをバルドに言う。


「そうか……まあ確かに強化魔法は物理職でも使うことが多いしな……」


 こんな風に、最近は早朝にバルドさんと2人、もしくはカルラさんを含めた3人で訓練してからギルドに向かっている。


 いつもかなり扱かれるのだが、ギルドハウスにはちゃんとシャワーや浴槽が複数あるため、家に帰る必要は無い。

 シャワーや浴槽どころか、設備はかなり充実してるため、普通に生活するにも不自由ない。


 基本的には、シャワーを浴びて準備したらすぐに迷宮へ向かうパターンが多かったのだが、どうやら今日はカルラさんが久しぶりに闘技場でソロ戦を行うらしいため、バルドさんやエースさんとともに観戦に行くことにした。


 特に冒険者屈指の実力と評されるカルラさんの戦闘だ。しっかりと目に焼き付けておこう。



☆☆



 カルラは準備のため、一足先に闘技場入りしている。

 観戦には、バルドやエース以外にも5~6人ギルドメンバーが来るみたいだ。


 ソロ戦はポイント制である。

 勝てばプラス、負ければマイナスされる。


 負けるマイナスポイントよりも、勝った場合のプラスのポイントの方が高いため、試合数をこなせばこなすほど上位に行くことができるため、一概にポイントが高い方が強いとは言えない。


 しかし、猛者揃いのソロ戦で勝利することはかなり難しいため、その上位に位置するだけで相当な実力を持っていると言えるだろう。


 と、エースから闘技場のソロ戦について説明してもらっているうちに、闘技場に着いた。


 闘技場には初めて来たが、すごい賑わいである。観戦者用の席もかなり埋まっている。

 今は大手ギルドの大剣使いと魔術師が対戦している。どちらも相当な実力らしく、観戦者が感心するように見つめている。


 そのあとのマッチも電光掲示板に表示される。どうやら、この次にカルラさんは登場するらしい。


 相手は……槍使いのオスカーという冒険者。同じ槍使いとしてカルラさんだけじゃなく、オスカーさんにも注目しておこう。


 そう思っていると、大きな歓声が上がる。

 大剣が魔術師の首元を切り裂く。どうやら大剣使いが勝ったらしい。


 いよいよ、カルラさんの出番だ。

 ほかの《アルスター》のメンバーも雑談をやめて食い入るように見つめている。


 赤コーナーからカルラさんが出てくる。

 青コーナーからは槍使いのオスカーさん。


 どうやらカルラさんの相手も相当の手練なのか、この試合も観戦者が多い。


 3.2.1 始め。


 合図があると、オスカーが一瞬のうちにカルラとの距離を縮める。槍の間合いに持ち込み、突く。


「速いッ!」


 《アルスター》のメンバーが声を上げる。

 カルラは冷静に足元に火を放りつつ後退、その間に次の呪文を準備し、備える。


「カルラの凄さはその引き出しの多さにある」


 そうエースが言うように、身体の周りに炎を発生させて牽制したりすることで相手の接近をどうにか防いでいる。


「このままだとジリ貧ですね」


 相手の攻撃を捌くだけでは相手にダメージを与えることはできない。


「最初に距離を詰めさせない方が良かったのでは?」

「まあ見とけ、カルラの戦いはこれからだ」


 カルラはあらゆる手を使って、再度距離を取ることに成功する。

 そして当然オスカーの方は距離を詰めてくるのだが……


 オスカーがカルラとの距離を半分ほど詰めた時、オスカーの足元が光りを放ったあと、爆発する。


「設置魔法だな」

「いつの間に設置したんだか。横から見てても分かりませんでしたよ」

「絶妙なタイミングだな、流石カルラ」


 《アルスター》の面々は、バルドやエースがほかのメンバーの疑問に答えながら解説するという具合になっていた。


 爆発の勢いに逆らわずに後退するオスカーだが、ここぞと言わんばかりに多重呪文で攻め立てるカルラ。


 捌ききれずに被弾するが、タダではやられないオスカー。空中で体を捻りながら槍を投擲--凄まじいスピードでカルラに迫るが、カルラの炎剣がそれを撃ち落とし、時間差で待機させていた呪文を一斉掃射して、決着。


 熱い戦いに観戦者も大いに盛り上がった。

 その後、カルラさんはそのあと3戦ほどして戻ってきた。結果3勝1敗。


「どうだった?久々のソロ戦は」

「まあ……悪くなかったな、久しぶりの割には勝ち越せたし。最後の1戦はキツかったが」

「最後戦った大剣使いのジャレドは、今総合ランク3位だからな。相当な実力だった」

「それでも負けると悔しいなぁ、とりあえず飯いこう、飯」


 もうすっかり日が暮れていたので、ちらほら盛り上がっている声も聞こえている。

 《アルスター》の面々も、多くの冒険者で賑わっている店に入っていく。


 店に入ると、カルラさんの知名度はかなり高く、整った外見に、水着という服装も相まって視線が集中する。


「今日はすげぇ久しぶりだったじゃねぇか!最近あまりソロ戦やってなくて寂しいぜ。もっとやってくれよ!」

「ああ、これからまた少しずつやるつもりだよ」


 こんな風に多くの冒険者に話しかけられ、それに対応している。


「面倒くさそうだなぁ」

「お前マスターなんだから、あれよりめんどくせぇことのが多いだろ」

「間違いねぇ」


 エースさんやバルドさんはカルラさんを見ながら、そんな会話をしている。お酒が入ってるからか、心の声が漏れている。


 そんなこんなで話していたら、周りの人達も帰り始めたので、解散することにした。


 今日は明日ギルドマッチが控えているため、ギルドハウスに泊まって対策を練るらしいんだが、相当酔っぱらってるぞ……エースさん……。


 バルドは脳筋突撃するだけだから、アルク送って帰っていいぞと言われたから帰るらしい。


 バルドに送ってもらい、帰宅し今日のソロ戦のことを思い出す。オスカーさんといい、ほかの冒険者といい、今日は学ぶべきことが多かった。


 1対1での立ち回り。対人の戦い方。

 得物の違いによって戦い方を変えたり……トップレベルの冒険者ばかりで真似できることは多くないが、出来ることからやってみようと思いながら、眠りにつくのだった。

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