第7話 対スプリガン亜種
超絶お久しぶりです。
前に投稿していたものに納得いかなかったので、少し改良して挙げます。
楽しんでいただければ幸いです。
「今日は3階層までいくぞ」
「あの、1階層でも苦戦してるんですが……?」
まだ筋力があまり無いせいか、急所を確実に叩かなければ即死させることが出来ないが、ゴブリン1体であれば時間をかければ勝てるようになってきた。
しかし、スライムはまだ倒せていない。
如何せん武器との相性が悪く、核を攻撃しようにも溶解液が厄介で、核のような小さい的を狙って穿つことは難しい。
ほかの1回層のモンスターだってまだ苦戦しているのに、次の階層に進んでも大丈夫なんだろうか。
「まあ、3階層まではあんまり強さも変わらないし、俺たちがいるから大丈夫だ」
「それならいいんですが……」
「ま、ちょっと(防御が)固くて、(攻撃が)痛いだけだ、だいじょうぶだって」
「カルラさん、それフォローになってないです……」
「ま、とりあえず2階層行ってみよう」
「おー!」
こういう時だけ意気投合するのだから、タチが悪い。
☆☆
2階層--
「1階層とあまり変わらないんですね」
「ああ、3階層まではこんな感じだ。3階層から強さのレベルが上がる。それから5階層ずつ上がる毎にモンスターの強さも、環境も大きく変化していく」
魔素というのは上の階層に行けば行くほど濃くなっていき、それだけ魔法の威力も上がる。モンスターも魔素から作られているため強くなっていくわけだが。
今はモンスター相手の立ち回りを実戦で覚えていくことが目的なので、戦うモンスターの種類は多ければ多い方が良い。
ただし、モンスターも強くなることを考えて、3階層までにしておこうとのことだった。
と、バルドの説明を受けている間にカルラが炎で作った剣でバッサバサ斬り倒していた。
「あれ?カルラさんって剣持ってきてましたっけ?」
「いや、あいつが魔法で作った魔法剣だ」
「そんなこともできるんですね、なら剣いらなくないですか?」
「あれは高等技術だ。あんな密度の魔素を封じ込めた剣を作り出すことは簡単じゃないからな」
俺は出来ないしな、とバルドが付け加える。
一方、アルクはというと、鳥みたいなモンスターに大いに苦しまされた。なんてったって槍では届かない位置を飛び回るし、炎のブレスを放ってくるのだ。
幸い2階層だからか、モンスターも冒険者が手も足も出ないようなモンスターは出てこない。
炎のブレスは射程が長くないので、剣や槍でも十分に届く距離まで降りてこないと当てられない。
が、倒せるかどうかはまた別問題だ。ブレスを放ってる間は高度が下がっていても避けるのに集中しているせいで、なかなか攻撃が当たらない、どころか攻撃することすらままならない。
カルラが風の魔法で強制的に槍の射程圏内まで撃ち落とし、アルクがトドメを刺すというカルラ頼みの戦闘をすることになった。
幸いなのは、アルクでも倒せるくらい鳥みたいなモンスターの防御力が無かったことだ。
そして、バルドは後方からアルクの動きやモンスターの動きを見つつ、アドバイスをしている。
そんなこんなでかなりの数のモンスターを倒して、順調に進んでいるかと思われたその時だった。
ズゥゥン--
どこからか、腹の底まで響くような重苦しい音が聞こえてくる。
アルクですら、間違いなく自分達のいる通路の奥にいるモンスターの仕業だと気づいた。
それ程に、この音を生み出しているモンスターが漂わせるプレッシャーは大きかった。
「こいつは……2階層のボスだな」
「いや、、こいつは……」
「こいつ以外にこの階層にいるモンスターであんな音出せるのか?」
「いや、確かにスプリガンに似ている、が何かが違うな」
と、カルラとバルドが話している。そしてその巨体がはっきりと見えた瞬間。
「ハッ!!」
カルラの体から迸る魔力の奔流にアルクは圧倒される。
「んなっ!?」
魔力の奔流だけで吹き飛ばされそうになる、それくらいの迫力が今のカルラにはある。
「どうした、カルラ」
「こいつとは個人的に因縁があってな。まあそいつはとっくに誰かにやられてるだろうから、今から私がやることはただの八つ当たりだ」
「カ、カルラさん?」
(空気がカルラさんが全身から放つ魔力で灼ききれそうだ……!)
冷静さを保っているように見えるが、静かに怒っていることがわかる。
「待て!」
バルドが制止するものの、聞こえていないようだ。
「待てと言っている!」
バルドがカルラの前に立ちはだかる。
「冷静になれ、怒りに身を任せてもいいことは何もないぞ」
「……わかっているさ」
徐々にカルラから放たれる魔力の奔流が収束していく。
「どうする?アルクがやるにしては重すぎると思うが」
「今回は俺らがやろう。万が一が無いとは言いきれない。あいつに対しての立ち回りをこれで覚えてもらおう」
アルクはカルラがスプリガンの亜種と言っていたモンスターの存在感に圧倒されて棒立ちになっている。
バルドはアルクの側まで行くと、槍を構えた。
「俺たちがずっと一緒に行くわけにもいかないだろう、こういう敵に対しての立ち回りも教えておく」
すると、バルドの雰囲気がガラリと変わる。
「アルク、見ておけ。これが槍使いの立ち回り方だ」
スプリガンの亜種に向けて走り出す。
バルドの見せるスピードはアルクにも視認できるスピードだ。
アルクでも立ち回りがわかるようにスピードを調整している。
バルドは身長が高く、体格もガッシリしているので一般の成人男性よりも体は大きいが、スプリガン亜種の大きさはバルドの5倍ほどある。
それに加えこのスプリガンは亜種。突然変異のようなもので、とても珍しい。
実際、バルドほどのベテランでさえ初めての遭遇であり、攻撃はスプリガンと戦った時のことから、凡そ予想がつくものの初見であることには違いないが、亜種は基本的に普通の種類よりも強いから油断ならない。
--間合いを詰めるバルド
それに対し、腕を振り上げ横に薙ぐ。
あれ程の巨体、質量から放たれることで相当な威力を発揮する。
当然真正面から受けることはせず、減速して間合いの外で停止するバルド。
幸い石のような物質で出来ているスプリガンは動きが速くはない。
腕を戻すまでの時間でスプリガン亜種に詰め寄る。そしてお返しとばかりに槍を薙ぐ。
バルドのパワーですらそれほど吹っ飛ばされていない。
だが、バルドの本命は吹っ飛ばすことではなく体勢を崩すことだ。
ここぞとばかりにスプリガン亜種の胸の中心を突く。間髪入れず2.3発同じ場所に突く。
1発では与えられないダメージも複数発当てることによって蓄積し、やがてガタがくる。
「グオォォォォ」
低い唸り声ともとれる声が響き渡る。
痛みに対する叫び声だろうか、そんなことを思っていると、後ろから音がする。
さっきまで何体も倒していた飛んでいるモンスターだ。
「ちっ、仲間を呼びやがったのか!」
「カ、カルラさん!」
「私が纏めて焼き払う!」
「火炎地獄!!」
カルラが編み出した火属性の魔法の中でも屈指の火力を誇ると言われる魔法。
アルクは初めて見るが、凄まじい威力だ。
カルラの使う火炎地獄は範囲も広く、灰塵と化すモンスターたち。
流石のオリジナルの使い手だ。
「ハッ!!」
バルドさんが奥でスプリガン亜種を相手に目まぐるしく移動しながら、ダメージを与えていく。やがて、スプリガン亜種にガタがくる。
ズガァァァン!!
スプリガン亜種が倒れた衝撃で物凄い音が聞こえてくる。スプリガン亜種が倒れたことを確認し、バルドが声をかける。
「おし、帰ろうぜ。3階層はまた今度だ」
そうバルドが言い、反対意見を言うものは誰もいなかったため帰還することにした。
「ふぅ……疲れた。アルクがこれから俺との訓練で出せるようになるでありう力でスプリガン亜種の相手をしてみたから、割と参考になったと思うぞ」
「え?どういうことです?」
「ん?つまりアルクの俺との訓練後に予想している攻撃力になるよう加減をして戦ってたんだ」
「そこまでこだわってたのか」
「まあな」
今の実力で最善を尽くして倒せなかったら逃げるしかないだろ?立ち回りをしっかりすれば、倒せるってことを証明したかったからな。
とバルドは言っていたが、自分が倒せるとは毛ほども思えなかった。
そして、帰路--
悔しさはあるものの、何だかんだアルクが1番疲弊している。
帰還することに異を唱えることはしなかった。
何しろこの2人の冒険者はトップレベルだろう。
アルクに役割を与えるより2人で手分けした方が、断然効率がいい。
そこで役割を与えられるのは余程の手練か、特化した何かを持っているかだろう。
彼らの元で経験を積めることはこれ以上ない環境であるとポジティブに思うことにした。
こうしてグルグルと色々な考えが頭の中を巡る。考え事をしながらも、迫りくるモンスターを倒し、ギルドハウスに帰るのだった。
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