第5話 最強の魔術師
申し訳ないです、投稿遅れました。
次の更新は明後日に出来たら、と思っています。
結局この日は、ゴブリン2体しか倒せずに1日を終えた。
しかも、援護を貰って、だ。
改めて1人じゃ無力なことを思い知った。
黒装束の女なら、二十階層の敵も倒せるレベルだ、とバルドさんは言っていた。
彼女の攻撃を一撃を防げたのだから、一階層のモンスターは問題ないとたかを括っていたのかもしれない。
現実は決め手に欠けて、ゴブリンにやられ掛けバルドさんに助けてもらい、エリさんにもサポートしてもらいっぱなし……
情けない限りだ。
「くそっ……」
この前組んでた冒険者達は、ほかの冒険者達の取り分の2分の1程度しかくれなかったが、相手を引きつけるだけで、倒すことの出来る攻撃がない自分はこれで当然なのかもしれない。
バルドとエリと共に換金所へ向かう。
今日狩ったゴブリンの討伐証明部位、耳を渡す。
今日は合計で50体狩った。
ゴブリンの耳が1つで銅貨1枚なので、銅貨50枚と交換する。
ちなみに銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚である。
一般的な家庭の収入が1ヶ月金貨1枚程。無論、もっと上の階層のモンスターなら高く買い取ってもらえるが、死ぬ危険があることを考えると割のいい仕事ではない。
そして今日は、エリとバルドというかなりレベルの高い人と組んでこれだけしか手に入らないのだ。
「よし、これで換金完了だな。 アルク、お前の取り分だ。」
皮袋の中を見ると、明らかに取り分より多いお金が入っていた。
お膳立てされたトドメを刺すだけの状態のゴブリン2体しか倒してないのに!?
バルドが28体、エリが20体倒している。
「半分持ってけ」
「えっ!? そんな! 頂けません……」
「別に俺らはそんな金に困ってないしな。な? エリ」
「ええ、サポート行きたいって言ったの私ですしお金はそこまで」
エリも異論はないようで、それに同調する。
「……ありがとうございます!」
アルクは涙ぐみながら感謝の言葉を述べる。
どうやら、迷宮に着くまでに話した、ギルドに入るまでに野良パーティーにやられていたことを思ってのことらしい。
エリもバルドもこういう時はお互い様だと言いながら、笑っていた。
俺もこの2人、ギルドメンバーに恩返しをするために強くなろう、そう心に決めたのだった。
☆☆
「とりあえずギルドハウス帰るぞー」
そう言って3人は迷宮近くの換金所からギルドハウスへ向かう。
しかし、ギルドハウスに戻る途中で1人で歩いているカルラを見つけたので、そちらへ向かって歩いていく。
人が多いとおりだが一際目立っている。
美人だし水着だし。
カルラさんに声をかけようとした。
「よお、カルラ。調子はどうだ?」
ハットを深く被った男がカルラに話しかけている。
「何の用だ」
ドスの効いた声で応じる。
少なくともカルラにとって都合の良い相手では無さそうだ。
「最近、調子悪いらしいじゃないか。魔術師最強と謳われたお前も今じゃTOP5にすら入れていない」
「……」
カルラは足早に立ち去ろうとする。
「俺らのところへ来い。お前なら歓迎する。いつまでぬるま湯に浸かってるつもりだ?あんな雑魚どもと居て何がいいんだ?」
カルラに向かって少し熱のこもった声男そう語りかけた。
カルラは足を止めて振り返って笑っている。
凄い形容のしがたい笑顔(?)だ。
「私のことを悪くいうのはいい。だがな、ウチのギルドを悪くいうな」
「「「殺すぞ」」」
顔から笑みが消え、カルラから凄まじい殺気が放たれる。
何も言ってはいないのに、放たれる殺気がそう言ってるかのように。
こっちを向いてるわけじゃないのに金縛りのようになっている。
「ふっ、今日のところは引いてやる。だがいずれ俺らの仲間になる。それまで精々冒険者ごっこを楽しむんだな」
「死んでも行くものか」
こ、こえぇぇぇ
俺が入ったギルドここで本当に良かった。
あんな人もいるんだな……
「お、エリにバルドに、アルク。ごめん、変なとこ見せちゃったな。おし、ギルドハウス戻るかぁー!」
カルラは努めて明るく振舞っている。
「どうだったよ、迷宮は」
カルラは3人と向き合うように体をこっちへ向けて言う。
「アルクはよくやってたぞ、どうすればいいのかってのを常に考えながら動いてる。パワー、技術はまだまだだが」
おお! 師匠から褒められた!
いや、2体しか倒せてないんだけどね!
しかもお膳立てして貰ったやつ。
それでも尊敬する人から褒められると嬉しいものだ。
思わず笑みがこぼれる。
「ほほぉ? それは将来有望だなぁ、アルク!」
思いっきり背中叩かれた、痛い。
この人魔術師じゃないでしょ、戦士? いや、バーサーカー?
「次はおねーさんと迷宮行くか!」
「え? あ、はい。是非お願いします!」
最強の魔術師の魔法が見れるなんてそんな機会そうそうないし、見てみたいという好奇心が凄い。
「何言ってやがる、こいつは俺が面倒みるからカルラはタイマンでもしとけ」
「槍と魔法両方とも使いたいよね? アルク?」
「物理で十分だ、魔法にも手を出して中途半端にやっても逆効果だ」
「やってみないとわかんないだろ?」
そんなやり取りがしばらく続いたが、ようやく落ち着き、4人でギルドハウスへ向かっていた。
「カルラさん」
(それにしてもアイツら……実力行使に出てこなけりゃいいんだが……ギルドに迷惑はかけられない、私が1人で切り抜けてみせる!)
「カルラさん?」
「あー悪い悪い、少し考え事してたんだ」
妙にカルラさんらしくない真剣な顔してたから、気になって声を掛けたけどまだ気になるようだ。
気にはなったが触れないでおこう。
師匠は、といえばこちらを一瞥して肩を竦めていた。
気にするなってことだろうか?
エリさんはふっふーん♪ と鼻歌を歌いながら軽い足取りで歩いていた。
あぁ、この人は気づいてないな。
☆☆
ギルドハウスに着いた頃には、もう既に日が暮れそうな時間だった。
中から陽気な笑い声が聞こえてくる。
「ありゃ?もう始めちゃってるんですかねぇ~」
「あいつら主役のことなんかお構い無しだな」
「何かやってるんですか?」
「入ってからのお楽しみだ」
少し気になったが、ドアを開く。
すると、みんな陽気に呑んだり食べたり豪華な食事とお酒を楽しんでるようだ。
「いっつもこんな豪華な食事してるんですか?」
結構どころかめちゃくちゃ驚きだ、そんなに儲かるのか……?
「違うよ、これはアルク達の歓迎会だよ」
「こいつら豪華な食事用意して、アルク含めた新入り5人の歓迎会を開くって話してたんだ。んで用意してたら腹減って耐えれず食べてしまったんじゃないかねぇ」
「子どもかよ」
思わず突っ込んでしまった。
いやいや、俺のために祝ってくれるんだからありがたいんだけど、突っ込まざる負えないよね。
そういや確かまた今度歓迎会開くって言ってたけど、今日だったのか。
それなら明日っていえば良かったのに。
そしてそこにバルドたちも加わる。
「酒だー酒ー!」
なんだかんだバルドたちもノリノリで歓迎会に参加していく。
ははは、このギルドらしいや。
アルクも丁度迷宮帰りでお腹が減っている。
なんだかんだ、アルクも人のことは言えず、久々の豪華な料理にお腹もぐぅぐぅと鳴っている。
「おーっし、食べるぞー!」
少しでもいいな、と思っていただけたらブクマ・感想・評価等お願いします!
ちなみに作者がこんなこと言っていいのかわかりませんが、カルラみたいな人、めちゃくちゃ好きです。
ということで、この後もちょくちょく出てくると思うのでお楽しみに。