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第3話 ギルド《アルスター》②

第3話です。

ブクマ・感想・評価等多くの人にしていただけて嬉しいです、ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。

「え……? バルドさん? 何でここに?」

「今日、闘技場行ってたろ? その帰りだ」

「へっ?」


 思わず変な声が出た。

 ヒーローみたく助けてくれた、と思ったら帰り道にたまたま見かけたから〜みたいなノリで言われたら、誰でもそうなるだろう。


「まあ、家がアッチだからな」


 バルドはアルクの家がある方と同じ方向を指差した。

 どうやら家のある方向が同じらしい。

 闘技場から家に帰る途中に偶然通りがかった、ということだろうか。


「そ、そんなことより敵は!?」


 確かにバルドの槍は黒装束の女を吹っ飛ばしたが、バルドはアルクの後ろの方から槍を()いだので、態勢的にあまり力は入り辛いだろう。


 それでも10mほど吹っ飛ばしたのだから、流石の一言に尽きるが、まだまだ油断は禁物だ。


 黒装束の女が吹っ飛んだ方向を見ると、黒装束の女の仲間らしき者が2人駆けつけていた。


「バルドさん……!」


 バルドはアルクを(かば)うようにして、槍を構える。


 黒装束の女の仲間はこちらを警戒しつつ、距離をとっていく。

 それなりの距離をとったあと、3人は建物の陰に入るようにして視界から消えていった。


「あのお2人さんが()る気なくて良かったな」

「そう……ですね、ありがとうございます」


 アルクは自分の弱さに唇を噛んだ。

 バルドは尻もちをついたまま立てずにいるアルクに、手を差し伸べる。


「ま、これから強くなれるさ。ギルドからの帰りだろ?災難だったな。家まで送るぞ」

「……ありがとうございます」


 戦闘後の会話のあと2人とも無言のままアルクの家が近づいて来た時、バルドがおもむろに口を開いた。


「まさか本当に襲われるとは思わなかったな……」

「俺も驚きました、まさかこんなに早く言われたことが実現するとは」


 アルク自身はもちろん、忠告したバルドも、まさか忠告したその日にアルクが襲われるなど、思いもしなかった。

 だが、バルドの忠告に救われた部分もあるだろう。

忠告が無ければ、あの黒装束の女に気づくことなくあの世行きだった。


 ギルドからアルクの家への帰り道は明るいとは言えず、人通りも広場が面する大通りの人数に比べて数段落ちる。たしかに、広場の近くよりは襲いやすいとも言えるだろう。


「それにしても、俺が来るまでよく耐えたな」

「いえ、バルドさんが来てくれた時が2度目の攻撃だったので」

「ほぅ、1撃目は対処できたのか」

咄嗟(とっさ)に体が動いてくれました。『火事場の馬鹿力』というやつです」


 バルドはアルクから、助けるまでの状況を聞き出す。


(なるほど……火事場の馬鹿力にしても、黒装束の女の実力は決して低くないように感じたんだがなぁ)


 バルドは黒装束の女とは1度しか刃を交えてはいないが、彼の経験と感覚でどれくらいの強さか感じていた。


 おそらく、35レベルかそこら。

 一般的なレベルが30レベルだから、平均もしくはそれより少し上といったところか。


 アサシンのようなスキルを取得していた。

 バルドであれば余裕で対処できるだろうが、そこらの冒険者で不意を突かれれば、一、二撃で終わりだろう。


 戦闘スタイルから、隠密(おんみつ)系のスキルを所持してるのだろう。

 真正面で戦えば普通の冒険者にはむしろ劣るレベルの実力だが、からめ手を駆使すれば自分よりも実力が勝る相手でも勝ちうる。


 アルクは認識する余裕があり、まぐれだったとはいえ、暗殺を得意とするアサシンの一撃目を凌いだことは凄いことだと言える。


「咄嗟の判断か……なかなかやるな」

「ありがとうございます!?」

「今日こんなことがあったことだし、明日から俺がビシバシ鍛えてやるから覚悟しとけ」

「お、お手柔らかに……お願いします……」


 鍛えてもらえるのはありがたいんだけど、なんであんな嬉しそうなんだ?


 間もなくアルクは家につき、バルドと別れた。

 幸い、バルドの家はここから5分ほど歩いたところみたいだ、何かあれば俺のとこに来い、と言ってくれていた。


 その日はとても寝れる気分では無かったが、通り魔との戦いで常にかなり気を張っていたため、気持ちとは裏腹に、肉体も精神もすっかり疲弊(ひへい)しており、ベッドに横になると、すぐに眠りについた。



 ☆☆



 コン、コン、コン

 何かを叩くような音で目が覚める。

 窓を見ると、まだ日が昇っていない。


「何だ、まだ早いじゃないか」


 2度寝とシャレこもうとするが、コンコンコンという音が鳴り止まない。


 こんな時間に起こすなんて、文句でも言ってやろうと思ったが、幸いそこまでうるさくない。

 眠気が勝ったので2度寝することにした。


 いや、しようとした。


「起きろぉ! 鍛錬の時間だ」


 誰だ、こんな朝から鍛錬とかいうバカなこと言ってる奴は。


「誰だよ、こんな時間から……」


 玄関まで行き、ドアを開けると……

 大きくゴツい体に、その大きな体に負けず劣らず大きな槍を背負った男ーーバルドが目の前に立っていた。


「よう、朝から鍛錬とかいってるバカで悪かったな」


 今さっき思ってたことが口から出てしまってたようだ。


「あ、あの、すいません。おはようございます……」

「今日からビシバシ鍛えるって言ったろ?」


 やらかしたぁぁぁ!

 朝弱いからって、命の恩人でしかも稽古つけてくれる相手をバカ呼ばわりしまった。


「そういやそんなことも言ってたような、言ってなかったような」

「とりあえず1分で支度してこい」


 睡眠時間削って鍛錬しに行くなんて聞いてない……そう思いつつ着替えて武器と防具を装備する。

 硬いパンを1つ口にくわえたまま、外に出る。


「おし、とりあえず一旦ギルドハウスに行くか」

「かなり早いですけど……この時間帯でもメンバーいるんですか?」

「たぶん二十階層くらいに行くだろうから、これくらいの時間帯には集まるぞ」


 早い、まだ日昇ってないぞ!


「俺はそんな上まで行かないですよね? まだ寝てても……すいません、行きます」


 バルドの目が死んだ魚を見るような目になっている、これはいかんやつだ。

 そう思ったアルクは180度方針を転換させた。


 アルクの家からギルドハウスまでは、歩いて10分はかかる。

 そこから迷宮まで更に10分、朝から重労働である。

 故郷で親の農業の手伝いをしてたため、足腰はそこそこに鍛えられているが胸当てやら何やらの装備だけで10キロほどあり、かなり体に負担になっていた。


「朝から辛い……」

「こんなもんで疲れてたら、やってけねぇぞ〜」

「朝が弱い&昨日の戦闘で体が動きたがりません」

「あー……そういやそうだったな。頑張れ」


 バルドさんは自分の体よりもでかい槍をもって、鎧まで付けているが、キツそうな様子は微塵もない。

 30代後半なはずなのに、恐るべしである。


「そういえば、昨日のことなんですけど」

「ん? 何だ?」


 アルクには1つだけ気になることがあった。


「なんで昨日戦闘が行われた近くには、人が全くいなかったんですか?」

「あれは人払いの結界だな」

「結界?」


 結界! なんか凄そうだ。


「予め、目標(ターゲット)を定めて、その周囲には人が近寄らないようにする結界がある。それを張ったんだろうな」

「その目標(ターゲット)が俺だったんですか? でも、何で狙われたんでしょう?」


「たぶんお前が目標(ターゲット)だったんだろうな。理由についてはわからんな、単なる戦闘狂って可能性も有り得るが……」


 なるほどそんな効果のある結界があるのか……それで誰にも見つからず、殺しを実行できるわけだ。


 あれ? 俺は重要なことを忘れていた。


「人払いなのにバルドさんは何故入れたんですか?」


 人払いなのに入れるのは謎だ。

 人払いの結界なのに、入れたら意味が無い。

 それに入れるというのはどういうことなのか……


「帰り道にたまたま結界見つけてそれを破ったら、アルクがやられてるところに遭遇したんだよ」


 なんか求めていた回答とは違うが……ひょっとしてこの人はいわゆるチートなのか?

 黒装束の女をアルクの後ろから、槍を少し()いだだけで10m吹っ飛ばすなんて、尋常ではない気がするし。


 そんなことを考えているうちに、ギルドハウスについた。

 既に中には明かりがついているから誰かいるのだろう。

 バルドがドアを開き、中に入りアルクもそれに続く。


「おはよう」

「おはようございます」


 バルドが挨拶し、続いてアルクも挨拶する。


「なんだ、バルドとアルクは一緒か」


 こんな時間だというのに既にエースはギルドハウスにいた。

 さすがはギルドマスター!と言うべきか。


「俺が家に起こしに行った。今日からビシバシこいつを鍛えるからな」

「なるほどね」


 エースが一緒に来たのかと意外そうに言う。

 バルドさんは意外と単独で動くのが好きなのだろうか?


 パッと見回すと、エース以外にも10人くらいが既にギルドハウスに集まってるようだ。


 バルドさんはエースさんと何やら(多分昨日の黒装束の女の話だが)話し込んでいたので、昨日見かけなかった人に、挨拶しにいく。


「新入りのアルクです。よろしくお願いします!」

「マスターから聞いたぜ、同い年なんだってな! クロムだ。よろしく!」


 驚きだ。まさか同い年がいるとは。

 15歳は冒険者全体からしてみても、かなり若い。


 このギルドは20代後半が多く、10代はギルドメンバー45人のうち俺を含めて、3人しかいないと聞いていた、そのうちの1人なんだろう。


 もう1人、昨日見掛けなかった人物がいたので挨拶しにいく。

 服は何故か水着を着ており、杖を持っている女性だ。

 回復系のスキルを使うのか、マジシャンか……


「新しく入ったアルクです、よろしくお願いします」

「カルラだ、よろしく」


 カルラ……? どっかで聞いたことあるような名前な気がする……


「もしかして……魔術師(マジシャン)最強と呼ばれるカルラさんでしょうか?」

「……最強じゃあないよ。買いかぶり過ぎだ、大手のギルドで強いヤツなんてゴロゴロいるからね」


 まさかこのギルドだったなんて思いもしなかった。

 カルラさんの技を見てみたいなぁと考えていると、


「おし、アルク。そろそろ迷宮行くか!」

「おっ? 迷宮に行くのかな? バルさんとアルク君で?」


 若い女性冒険者が声をかけてくる。


「あぁ、同じ槍使いだし、モンスターと戦いつつ教えれるかと思ってな」

「私も行っても?」


 右手を大きく挙げてアピールしながら、若い女冒険者は言った。

 後ろに短剣を携えてるので、おそらくサブマスターのエルサと同じ戦闘スタイルなんだろう。


「エリも来たいのか、でも基本的にサポートだぞ?」

「大丈夫ですよ〜、サポートでも任せてください」


  どうやらエリというらしい女性は、無い胸を張りながら、サポートも出来ますから! と言っている。


「なら、エリと俺とアルクの3人で行くか」


 バルドさんはもちろん、エリさんという女性冒険者も来るようだ。


「エリさん、よろしくお願いします!」

「アルくん、よろしくね〜」


 いつの間にかアルくんって呼ばれるようになってるんだけど……ギルドの人と仲良くなりたいし、それで仲良くなれるなら、別に呼び方にこだわりはないけども……


 こうして3人でパーティーを組んで迷宮に挑むことになった。

いよいよギルドメンバーと行く初めての迷宮です!


感想・レビュー・ブクマして頂けると非常にモチベになるので是非お願いいたします。

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