第1話 エースとの出会い
第1話です。
初投稿なので至らないところばかりとは思いますが、何話か覗いていただけたら嬉しいです。
良かったらブクマ・感想・評価等お願いします。
「あ、あの……」
「ん?俺に何か用か?」
話しかけるつもりでは無かったが、頭で考えるよりも先に口が動いていた。
ギルド掲示板を見ていた男が振り返る。その男は白銀を基調とした服装に身を包んでおり、180cmを優に超える上背に、背中には彼の身長を上回るほどの大剣を背負っていた。
物語でしか見たことの無いような白銀の鎧に身を包んだ男に見蕩れる。アルクにとって憧れの騎士のような装備だったのだ。
「ギルドに入れてください!」
(待て待て、何を言っているんだ俺は……!)
思わず口から出たセリフだが、頭が追いつかない。アルク自身も、自分で言った言葉に混乱する。白銀の騎士も突然のことに呆気に取られたようだった。
(いきなりギルドに入れてだなんて、失礼だ。謝らないと……)
「す、すいませんでしたっ!!」
「別に謝ることはないさ、急に話しかけられて驚きはしたけどね」
「ごめんなさい」
「だから謝ることではないよ……それでギルドに入れて欲しいって?」
「いえ……はい」
「まあ、とりあえず話だけでも聞こうか。あそこのベンチで話そう、ここは話しにくいしな」
☆☆
ギルド掲示板のある広場には、ギルド勧誘やギルドに入ろうとしている人でごった返している。ここでは話し辛いだろうということで、白銀の騎士に連れられ広場の端の空いているベンチに腰掛ける。
「ところで名前を聞かせてもらってもいいかな?」
「申し遅れました、アルクといいます」
「俺はエースだ。よろしく。ギルドに入りたいんだっけ?」
「はい!」
「何故ウチに入りたいと思ったのか聞かせてもらっても?」
エースの装備を見て、つい話しかけてしまったのだと言うと、エースは自分を気に入ってくれた。
「わかってんなぁ、この鎧の良さを!最近は身軽さ重視のローブとかに耐性を付与してるやつが多くてこういう重い鎧は流行ってないから嬉しいぜ」
「俺もこの鎧着たいです!」
「よっしゃ、ウチに来い!幸いギルドの枠は空いてるからな!ビシバシ鍛えるから覚悟しとけ?」
「はい!ありがとうございます!」
☆☆
迷宮都市ヴィネスは特別な都市だ。
他の都市とは違いヴィネスには魔力の素--魔素、が空気に豊富に含まれているのだ。
冒険者たちは、空気中にある魔素と体内にある魔力を組み合わせることによって、魔法やスキルを使用することができるのである。
それは装備にも応用でき、耐性を付与して装備の耐性を高めたりすることができる。どうやらエースもその耐性を鎧に付与しているらしい。
広場ではトントン拍子で話が進んで、ギルドを案内してくれることになったのである。ギルドに着くまでの間に色々と装備について語ってくれた。
「っと、ここが俺らのギルド《アルスター》のギルドハウスだ」
「おお!《アルスター》……カッコイイ名前ですね!そして建物も凄く大きくて立派です」
「だろう?自慢のギルドハウスさ。さぁ、中に入ってくれ」
昼間で人がギルドハウスにいるためか、扉に鍵は掛かってないようだ。エースが扉を開けて入っていく。それに続いて俺も中に入っていく。
「ただいま〜」
「おっ、おかえり〜」
「エースさんおかえりー」
ギルドハウスの人たちがエースが帰ってくると声をかけている。結構な人がギルドハウスにいるようだ。丁度お昼ご飯の時間なのだろうか?
「ところでマスター、後ろの男の子は誰なの?」
若い女性冒険者がエースに聞いた。
え?マスター? んん?
「あぁ、今日からうちのギルドに入るアルクだ」
「アルクです。よろしくお願いします!」
「アルク、よろしくな!」
「アルクさんよろしくお願いしますね」
「よろしく〜」
と矢継ぎ早に声をかけられる。
今ギルドハウスにいる人達には一通り歓迎の言葉を掛けてもらえたようだ。
ソロで野良のパーティーに入れてもらって時の扱いとは全く違う温かいもので、嬉しい。
そういえばマスターって誰なんだろう……さっき女の人が俺の方に向かってマスターって言ってたけど……
「ところでマスターって誰なんですか?」
アルクがそういえば、というようにエースに聞くと
「ん? 俺だぞ?」
「え?」
「え?いや、だから俺だって」
そういえば確かに、自分が入りたいですって言ってた時に1人で決めてたし……何で気づかなかったんだ……。
「なんだ、また言ってなかったのか?しっかりしてるんだが、こういう抜けてるところがエースらしいなぁ」
「むっ、またとはなんだ。またとは」
「いや、この前の大会もギルドマスターなのに言ってなくて向こうの人困惑してたからな」
「そうなのか?」
「だから代わりに俺がマスターってことにしといた」
「おい」
あちこちから笑いが湧く。凄くアットホームないい雰囲気で心地いい。
「ところでアルクは幾つなんだ?」
切り傷や火傷の痕が体に刻まれたワイルドな風貌の大男が問いかける。
「15です」
「若いなぁ、俺の3分の1くらいしか生きてないのか」
「え?そうなんですか!?」
「今年で40代に突入するな、あぁ嫌だ嫌だ」
冒険者という職業は身体を酷使する。戦闘スタイルにもよるが、エースやこの大男のように重い鎧を着て、武器を背負って迷宮に潜るのだから体力や筋力は必須となる。
魔術師は自身の魔力を増幅させる服を着たり、攻撃手段が呪文なためある程度は年齢を重ねても活躍できる。
だが、魔術師とて同じ場所に留まって呪文を放つわけではないし、自分の狩場までは自分の足で歩かなければならない。
が、話しかけてきた大男は風貌からして、いかにも近接戦闘一筋といった外見なので驚きだ。決めつけは良くないと思うけど、剣持ってるし多分そうだろう。多分。
ギルドメンバーも色々な人がいて、色々なことを聞かれたり、聞いたり、賑やかな雰囲気で歓迎された。
ここのギルドの人たちは平均年齢が高く、余裕がある大人のような感じでかっこいい。
そして、遅めの昼ごはんをとり、ギルドメンバー全員に自己紹介して、雑談をして、あっという間に夜になってしまった。
楽しい時間というものはどうしてこんなに速く過ぎてしまうのだろう、と思いつつ帰路に着く。
こうしてギルド《アルスター》のマスターであるエースと出会い、ギルドに入団することが出来たアルク。そして、この新しいギルドでの新生活が楽しくなると、この人たちと並んで戦えるようになりたいと、強く思ったのである。