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天界侵攻

シルヴィア達と別れた氷雨は即座に無限の末端世界を無限連鎖内包している天界の第一層に乗り込んだ。 天界と世界の間には何者の干渉も認識も許さない障壁が貼ってあるが超越者である氷雨には関係無かった。軽々と障壁を破ると天界の第一層へ足を踏み入れる。

ただそれだけで天界の空間と天使の8割が死滅した。


「ふん、情けない。よくこんなので天使と名乗れたわね?」


常人では認識すら出来ない瀕死の天使達を見下しながら自慢のツインテールを揺らす。


「ぐっ……貴様……この天界に何用だ?」


「用っていう程も無いけど。あんたんとこの神をぶっ殺しに来たのよ。わざわざ遠回りしてね。神の手先でありながら下界に干渉せず管理者を気取ってる無能な天使達もついでに殺そうと思って」


息も絶え絶えな天使の顔を踏み付け冷酷な目付きで一瞥する。天使は声を上げる事すら出来ず氷雨との格の差に体が耐え切れず絶命した。 氷雨はめんどくさそうに手を薙ぐと、天界の第一層を無限に内包している第二層が音を立てて破壊される。 さらに常に偏在している不可視の氷雨は法則性を超越し、自分より劣る全ての力と力そのものを拒絶した。


「呆れる弱さね……神様?」


ボヤく氷雨の眼前には瀕死の神と思しき白い布切れを巻いた老人が跪いていた。まるで最初からこうなっていたかのように。瀕死の神は震えるだけだったがゆっくりと顔を上げる。


「はぁ、はぁ……はぁ……私が何をしたと言うのだ? ただ哀れな若者達に第2の人生を与えていただけだ」


苦し紛れとも言えるその言い訳に氷雨の顔に青筋が浮かぶ。そして思い切り地面に足を踏み込むと天界の連鎖的な無限内包を繰り返した神界が破壊され、氷雨の拒絶世界が展開された。


「その結果、下界の法則は歪み、いくつもの世界が滅びた。下界の神に管理を押し付けあんた達はお気楽に生きてるんだから腹が立つわね。 まぁ滅びた世界は長谷川さんの性質で元通りになったけど。そして、あんた達は結衣を傷付ける原因を作った。 私はその()を消しに来たの」


氷雨の冷ややかな怒りは万物拒絶の世界に現れていた。理の一切を拒絶し、力そのものも拒絶する強大な炎は一層強さを増す。超越者の眼光にあてられた瀕死の神の存在概念が大きく揺らぎ、脆くなる。


「脆いわね。 何が理そのものよ。あんた達神は超越者になり得ない理由はその存在にある。 理そのもの……自身がその上限存在であるから。自分で自分に枷を掛けてるのよ。

まぁこれから死にゆく哀れな転生を司る神に語る言葉は無いわね。 消えなさい」


氷雨が手を下ろすと万物を拒絶する炎が神の体を焼き尽くし、存在そのものを拒絶された。 神を殺した超越者は滾る炎の絶対世界の中に佇んでいた。拒絶世界を解き、神界そのものを根源から消し去る。


「天界と神界というものをどうして創造主は作ったのかしらね」


まだ見ぬ創造主の無能ぶりを実感しながら元の世界へ戻ってきた。 背中の骨が小気味良い音を奏でる。


「さて、順調ね?」


「ああ……超越者になり掛けてる。1番はおそらくタツヒコだろう」


何も無い空間に氷雨は話しかけると長谷川がいつのまにか氷雨と背中合わせになっていた。


「そう……。この不完全な世界を完全な世界にさせる為には全員が超越者に、いや、それ以上の存在になる事が絶対条件よ」


「俺達だけでそんな事が出来るのか?」


長谷川の問いに氷雨が鼻で笑う。


「まさか。『協力者』に力を貸してもらうのよ」


「奴等か……」


氷雨の意味深な言葉に長谷川が唾を飲み込む。


「万物を超越し、無限次元世界を統べる超越神達にね」


「それで、奴等に協力を仰いだとして元凶に勝てる勝算と勝率は?」


「…………」


言葉を紡ぐ氷雨に長谷川は何かを察する。


「なるほどな……。これは手厳しいな。他の案は?」


「無いわ。 仮にあったとしても『奴』には効かない」


「そうか。 だがとりあえずはこの現状を見るしかないか。あいつらを全員超越者にするぞ」


長谷川の言葉に氷雨は力強く頷いた。

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