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世界の現状

「まずは世界の構造を噛み砕きながら話すわ」


氷雨は何も無い空間から机を出すと紙とシャープペンシルも同時に机の上に出す。


「この世界は前提として完全に独立した可能性世界が無限に存在するわ。 過去の可能性世界、現在の可能性世界、未来の可能性世界。それぞれが無限個存在し、基本的に干渉出来ない。それこそ概念系の能力か因果律系の能力で無いと無理よ。 そして異世界に当たるのが可能性世界」


氷雨はスラスラと紙に書いていく。それをマジマジと見つめるシルヴィア達。


「可能性世界の他に、並行世界もそれと同じだけ存在するわ。 この日本も無限に存在する並行世界の一つよ。 そしてその外側に広がるのが宇宙ね。 この宇宙は世界を内包して終わりの無い広さを持つ。 そしてこの宇宙もまた世界と同じ数だけ存在するし、並行宇宙と過去現在未来の可能性宇宙も同構造で存在する」


ここまで書くと同時にタツヒコの手が挙がった。タツヒコは眉を訝しげながら声を唸らせる。


「めちゃくちゃでかいってのは分かったが、俺らの宇宙は他の宇宙と交わる事は無いのか?」


タツヒコの質問に氷雨が顎をさすりながらふんふんと鼻を鳴らす。


「世界改変とか可能性干渉くらいじゃないと無理ね。そして今私達のいる世界の異常はそれが関係してくるわ。それは追々話すわね。

話を戻すと、宇宙は法則があるの。 その法則を捻じ曲げれるのが能力と呼ばれる力よ。そしてその法則の一部として存在するのが世界よ」


「その法則ってのは例えば何があるんだ?」


タツヒコが再度問う。 氷雨は紙を追加して書き出した。


「そうね……例えば生死の概念。 これは法則に則った概念の一つね。 生きる者あれば死する者あり……生まれ方や死に方は様々あるにしても根源は変わらない。 私やあんた達みたいな死を超越した存在は別だけど。 そしてこの世界を含む無限個存在する宇宙が連鎖的な無限内包を繰り返したのが多元宇宙ね」


「連鎖的な無限内包?」


今度はシルヴィアが声を挙げた。そしてそれに氷雨ではなく結衣が答えた。


「はい。 それによって宇宙は膨張と内包を繰り返してます。そしてその多元宇宙も世界と同構造で無限に存在します。 干渉するには法則に干渉する必要がありますが移動や改変など出来ます。 さらに多元宇宙が連鎖的な無限内包を繰り返した果てに存在しそれを内包するのが末端世界です」


「末端世界……ルティナが言ってたやつだ」


シルヴィアが呟く。 結衣は続けざまに言う。


「末端世界はそれまでの世界や多元宇宙の集合体と言っても良いでしょう。 隣接する他の末端世界に行きたい場合も例によって概念や法則に干渉する必要がありますね。 そして……ここからが大事なところです」


結衣の声がくぐもる。今度は氷雨が口を開く。


「今私達のいる世界は複数の末端世界が一つの世界に干渉する形で存在してる。 つまり、時空が歪んでる。 様々な法則や概念が入り混じり、人やそれ以外の種族もこの世界に集まってる。 魔界都市みたいな状況よ。 そして……何よりヤバイのが転生者と呼ばれる存在」


「転生者?」


「無限数の末端世界を内包する天界を内包する神界と呼ばれる神々の世界から遣わされた異世界の人間の魂が入った転生体の事よ。 神と等しい力を持ち、それを悪用して世界の法則を狂わせる存在。 数が多いから私がある程度減らしたけど、あんた達にも手伝ってもらうわ。 今回あんた達に干渉して呼び出したのはこれが理由よ。 私は私でやる事があるから……転生させてる主犯格の神を殺すというね」


氷雨の怒気を含む声にシルヴィアは底冷えした。


「でもどうやってその神を殺すの?」


シルヴィアの問いに氷雨が愚問だと言わんばかりに嘆息した。


「神界に乗り込んで直接潰すわ。腐れ神ども……首を洗って待ってなさい。 言い忘れてたけど私みたいな超越者は例外的な存在で、さっき言った世界云々の束縛を受けないわ。

天界や神界からの束縛も受けない。 理を超越してるもの」


ここまで言って氷雨が伸びをする。


「まぁ堅っ苦しいのはここまでにしましょ。

簡単に今回の目標を言うわ。 あんた達は転生者の討伐、私は転生の首謀者の消滅。 今すぐしろとは言わないし、転生者もあんた達から見ればかなりの強敵なんだからしっかり気合い入れなさい。 乗り越えるべき試練だと思ってね」


「その転生者の具体的な強さはどんなもんなんだ?」


タツヒコの問いに氷雨は意地悪く笑ってみせた。


超越者(わたし)が軽くひねり潰せるくらいの強さだからあまり気にしなくて良いわ。 転生者によって細かいスペックも違ってくるし。 それと、神界より上の世界もこの騒動が終わったら言うわ。 こっちの方がある意味本命だから」


氷雨の最後の意味深な発言に長谷川と結衣以外の頭にハテナが浮かぶ。


「…………」


長谷川と結衣は神妙な顔付きを浮かべていた。 それを知ってか知らずか、氷雨がすくっと立ち上がる。


「さて、辛気臭い話の後は皆で買い物に行くわよ! ほらさっさと準備しなさい! 立ちなさい!」


皆強引に立たされると氷雨を主導に買い物に付き合わされる事となった。

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