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巫女服の少女達

シルヴィア達全員の殺気を浴びても竦まない二人の少女。 その内の片手剣を持った巫女服の少女が左手を前に突き出すと長谷川以外のメンバーが超速で飛ばされてしまう。


「っ!! 皆!!」


振り返り叫んだ時には既に眼前には誰もおらず、凄まじい剣圧が背後から襲った。長谷川は戦闘態勢に入りすぐさま超越者になる。 神の理を超越し世界に縛られない絶対者。

ふと、長谷川が違和感に気付く。目の前の少女が何の制約も無く立っている事に。


(おいおい……冗談だろ。 まさかこいつも超越者かよ)


冗談キツイぜと言わんばかりに自らの右手にオリジナルの大剣を創造すると肩に担ぐ。大剣は長谷川の身の丈程あり刀身に様々な紋様が描かれている。 そして腰を落とし足に力を溜めると地面を爆発させて尋常じゃない加速をする。


「おぉらぁ!!」


時間を無視するよりも速く放たれたそれは、周囲の景色を両断し、斬線を受け止めた少女も軽々とビル街まで飛ばしていく。 少女が進んでいくのと並行して周囲の景色も同時に切断されていくが少女は超越者であるが故に切断概念から切り離されている。次の瞬間には長谷川の頬が切れていた。


「……やるな。 あいつらと離されて正解だったかもな」


いつのまにか長谷川に斬りかかっていた少女の膂力に内心驚くも嘆息を漏らし弾き飛ばすが持ち堪えられ、蹴りを頬に喰らわせられる。 超高層ビルに激突し、衝撃でビルが瓦解して粉微塵になる。 そして追撃と言わんばかりに無数の斬撃がビル街諸共細切れにせんと襲い掛かる。


「くっ……!」


長谷川は内心焦っていた。 自身が最も得意とする能力が使えないからだ。 正確には相殺されている状態に等しい。 この目の前の少女によって。


(参ったぜ……この女、俺と同等の超越者とはな。 俺と相性が悪過ぎる。失われる可能性とそれに付随する無限の可能性が常に否定されているのか? いや、これは拒絶か)


あらゆる優先度を無視する速さの剣速を同じ速度で捌きつつ少女の特性(のうりょく)を探る。 長谷川が得た結論と合致する存在と一人だけ心当たりがあった。 彼女(・・)ならば超越者に至っていてもおかしくはない。


「もう良いだろ? 氷雨」


その瞬間、僅かだか巫女服の少女の動きが止まる。


「まさか当てられるとはね。 ビンゴよ長谷川さん」


狐の面が外され、素顔を晒したのは氷雨だった。 氷雨だと分かった長谷川は戦闘態勢を解こうとしたが氷雨の超越者の殺気がそれをさせなかった。


「何だよ……まだやる気か? お前だと正体が分かった時点でこっちにやる気は……」


長谷川の言葉は氷雨の強烈な一撃で遮られる。 それを間一髪で受け止めた長谷川は感覚的に無限に存在する末端世界が消し飛ばされたりと理解する。


(ちっ、デタラメな威力だな。 無限個の末端世界を消し飛ばすなんて……まぁ今の俺らから見れば石ころみたいなものだが)


長谷川は能力て無限個の末端世界を修復させると対象を氷雨に絞って全力で攻撃するが不可視の拒絶の炎で防がれた。


「もうちょっと楽しみましょうよ。 どうせあいつらからは認識も干渉も受けないんだし。終わったらレベルを落とせば良いだけよ?」


「無茶言うな氷雨。 同じ超越者、それも仲間と殺し合いなんざしたくねーよ」


「ふん、つれないわね。分かったわよ」


そう言い、氷雨は自身の存在を超越者から一般に認識可能なレベルに落とした。 それを確認した長谷川も同じようにする。 するとあれほどの戦闘で傷付いていた世界は存在しなかった。 立派な超高層ビルか立ち並ぶ都市がそこにはあった。


「あれは超越者の世界か。 全く」


「それに近いわ。 さて、結衣はどうなったかしらね」


「結衣? お前と一緒にいたもう一人の巫女服の子か?」


「そうよ。 血の繋がりは無いけど私にとって見れば家族同然の存在よ」


昔からの幼馴染だし、と付け加えながら長谷川と氷雨は喧騒を取り戻した街中を歩く。

遠くの方で破裂音と噴煙が上がってるのが確認出来た。


「あそこね」


パチンと指を鳴らすと氷雨と長谷川の目の前にシルヴィア達と巫女服の少女───結衣が居た。全員ボロボロで誰しもが血を流していた。


「氷雨……」


「氷雨さん……」


シルヴィアと結衣が呟く。 結衣は巫女服は汚れ、所々破れており、そこに垣間見える肌から流血していた。 本来は濡羽色の髪を思わせる程の艶やかな髪はそれが失われていた。氷雨は顔を顰めながら結衣とシルヴィア達を一瞥した。


「結衣、行くわよ。 十分こいつらの実力は知れたでしょう。それとシルヴィア達……あんたらも付いて来なさい。 余所者のあんた達だから泊まる場所もないでしょ。 結衣のとこに泊まらせてあげる予定だったからそこでこれからの事も話すわ」


氷雨は踵を返し、シルヴィア達は慌ててそれに付いていった。





着いた先は神社だった。 立派な鳥居とゴミひとつ落ちていない境内、そして歴史を感じさせる本堂を含む様々な建物が並んでいた。シルヴィア達は思わず感嘆の声を挙げる。


「わぁ……凄い。これ皆結衣ちゃんの?」


「私は神薙神社の神主の娘でもありますが今は私の両親もいないので私が管理してます。

と言ってもほぼ式神に任せっぱなしですけどね」


と言って苦笑する結衣。そして結衣に案内されやってきたのは和風の家だった。


「ここで私達としばらくの間生活してもらいます。 不便な面もあると思いますが理解をお願いします」


「結衣、こいつらは基本的にどんな環境でも生きてけるわ。だからそんな事言わなくても良いわよ」


「お……氷雨さん、ちょっと厳しいですよ。そんな事言わなくても」


「ふふ、冗談よ。 さ、中に入りましょう」


ガラガラと引き戸を開けて氷雨が入ると続いて全員が中に入っていった。 中は年頃の女の子が過ごしてるとは思えない程殺風景な部屋だった。 歴史を感じさせる日本家屋で、引いてある畳といやに高い天井が目立った。


「相変わらず殺風景ねー……障子を挟んで縁側があるだけって……。 全く、今時の女子高生ならもうちょっと年相応のとこに住みなさいよ」


腰に手を当てた氷雨が文句垂れるがどこか楽しそうなのか怒気は含まれてなかった。それに反応したのか結衣は頬を膨らませて眉を曲げる。


「お姉ちゃんはうるさいんだってば……」


小声で反論するが氷雨は聞こえてないふりをし鼻を鳴らす。


「奥に寝室もありますので後で案内しますね。 さて、ここいらで自己紹介でも」


広間で集まって座って結衣が一言。


「私は神薙神社で巫女をしてる神薙 結衣です。しばらくの間皆さんと衣食住を共にします。 よろしくお願いします」


ぺこりと結衣が頭を下げ、釣られて皆下げた。


「私はシルヴィア。 氷雨に干渉される形でこの世界に来たけどよろしくね結衣ちゃん」


とシルヴィアが挨拶をすると順次それに続く。


「アイラ・シルエートです。 結衣さんと仲良くなりたいです。 打ち解けられれば良いかなと思ってます。しばらくの間お世話になります。よろしくお願いします」


とアイラ。


「タツヒコだ。よろしくな」


タツヒコは少し緊張しているのか声が震えていた。長谷川の番になった。


「長谷川たつおだ。三十代前半の元社畜派遣社員をしていた。 趣味はネットサーフィン。 何の因果か現代日本に久しぶりに来たからネットも使うかもな。 そして結衣ちゃんと出来ればお近付きになりたいなーって」


「結衣に手を出したら殺すわよ」


ふざけて言った言葉に氷雨の本気の殺気とドスの効いた声で長谷川の顔が一瞬青くなる。 結衣はそれに苦笑で返した。


「さて全員自己紹介が済んだところで本題に入らせてもらうわ。 この世界の現状とこの世界の基本構造についても同時に説明させてもらう」


と氷雨の一言が場を静寂にし、支配した。

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