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圧倒

空中では絶え間無く衝撃波が発生し、空間が削り取られていく。 長谷川とナナはその渦中で戦闘を行っていた。 ナナは自身の周囲の空間から無数の武器を顕現させるとそれを長谷川に射出するが即座に粉微塵になり失敗する。 ナナは口を開け絶句しているがそれの余韻に浸らせてくれる程長谷川は甘く無かった。


「どーしたナナちゃんよ! その程度かぁ!?」


複数の能力を駆使しながらナナに干渉する長谷川。 停滞能力でナナの思考を停滞に追い込み、それ以上思考が進行するのを阻害しているのだ。 考える事すら許さない長谷川の能力によりナナは思ってもいない苦戦を強いられた。 未だ致命打になり得る一撃を長谷川に与えられていない事実に歯噛みしながら直感で長谷川を穿つ。


「甘い」


空間を削り取る一撃ですら長谷川には届かない。 途端にナナの顎が跳ね上がる。 予期しない不意の強烈な一撃により意識が飛び掛ける。


「っっ〜〜!?」


痛みに耐えながらナナはしっかり気を持つと長谷川を見据える。 フードが取れ、ショートカットの銀髪と猫耳が露わになるが気にかける時間は無かった。思考が戻される。


「ぐっ、まだまだ!!」


意識を極限まで集中させ自身の身体と意識を一体化させる。 しかしそれも一瞬で解けてしまう。 その直後に長谷川が深い嘆息を吐いた。


「どんな状態になろうともその直前の状態が持っていた可能性が失われる。 それに干渉してお前を元の状態に戻して続けている。 まあそれだけじゃつまらないから止めておいてやる。 俺の能力も使い方次第じゃここまで強くなるという認識に至ったから充分だ」


片手剣を顕現させている長谷川は無防備に立っているナナに襲い掛かるがナナはそれにしっかりと反応し応戦する。 そして速度を上げるとやがて音速を超える。 ソニックブームが巻き起こり闘技場を蹂躙する。 ナナは苦悶の表情を浮かべながら必死に長谷川に喰らいつく。


(速い……! この人能力だけじゃない)


繰り出される数多の剣戟を捌き切る正確性と膂力を見せながらナナは自分と長谷川を巻き込む形で武器を顕現させるとそれを一斉に射出した。 腹部、腕、脇腹、足など武器が刺さり、貫通し激痛が走る。 それを耐え、勝ったという確信を得ながら長谷川の方を見遣る。

その光景にナナは唖然とし、思考が絶望で染まる。 ナナの視界に映る長谷川は傷一つ負う事無くナナを残念そうな表情で見ていた。


「……バッカみたい」


ナナは自嘲すると意識を失い、制御を失った身体が地に落ちようとする。 長谷川は能力を行使し全てを元通りに復元すると意識を失ったナナをお姫様抱っこで持ち上げゆっくりと地上へ降り立つ。


「誰かこの子を……」


長谷川は近くにいた女性にナナを預けるとシルヴィア達のところへ戻る。


「長谷川さん、お疲れ様」


「ああ……。 思ったより能力を使わずに済んだ」


「てっきり全力を出していたとばかり思ってたけど」


そう言うシルヴィアに長谷川は拳骨を見舞う。


「如何に少ない手札で相手を圧倒出来るかってのも戦闘に要求されるものだろ。 それに人間ってのは日々進化するもんだ。 俺の可能性は無限大だぜ」


長谷川はそういうとタツヒコに目を向ける。


「タツヒコ。お前の強さはお前だけのものだ。 だがな、一つの事に固執し過ぎて周りが見えななくなるようじゃお前はそこまでだ。

視野を……可能性を広げてみろよ。 人生の先輩からのアドバイスだ。 殻を破り捨てろ」


「っっ、やってみる」


長谷川の言葉を背にタツヒコが闘技場へ上がる。 動きは固く、その様子に長谷川は肩を竦める。


「あれで大丈夫か? 緊張をほぐすつもりが逆効果になっちまったな」


「タツヒコ君もこの戦いで何かを感じ取ってくれると良いんだけどね」


「まぁ大丈夫だろ。あいつなら上手くやると思ってるよ」


長谷川の言葉を最後に全員がタツヒコに視線を注いだ。

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