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能力者協会からの誘い

昨日に引き続きまた調査をしているシルヴィア達。 小さな森の生態系の変化から空間の歪みと種類は多種多様でありそれらを直すのに苦労が絶えなかった。 また、凶暴化した魔物の退治が最も多く、大した強さの魔物はいないが頻繁に襲い掛かってくるためそれに辟易していた。


「いくら異質な存在や事象の影響とは言え、こうも多いとね……精神的に疲れてくるよ」


シルヴィアがそうぼやきながら真後ろから襲い掛かってきた魔物を見向きもせずに空間の穴からナイフを射出させるとそれを爆破させて魔物を絶命させる。


「そう言うなって。 地味だがこう言うのが一番の近道になっているんだよ」


タツヒコがシルヴィアにドヤ顔をしながら語る。 シルヴィアはそれに軽く嘆息を吐くと肩を竦めた。


「そうは言うけど、異質な存在ってのは元々この世界に存在(・・・・・・・・)しないはずのもの(・・・・・・・・)なんだからね。 いくら猫神様の力の一部を分けてもらったとはいえ私たちも充分今回の件に関わってると言えるよ」


「そうか……俺達もこの世界から見れば充分異質な存在か。 でも元はと言えば猫神から力を奪ったルティナとリヴァイアサンが原因だろ? ルティナはこの世界にいる事が確定してるとして、倒せる確証はあるのか?」


タツヒコの問いにシルヴィアが眉根を寄せる。 腕を組んでしばらくの逡巡を見せた後タツヒコを見据えると口を開く。


「あいつは確実に倒さなきゃいけない存在だ。 たとえ刺し違えてでも奴を殺す……」


「仮に奴を倒したとしてもリヴァイアサンもいるかも知れないんだぞ? それに俺らが生きてるという保証は何処にも無い」


「その可能性も否定出来ないけど、今のところはそれは無いと思う。 この世界に何らかの干渉があった場合は猫神が気付くはずだ。

力が弱まっているとは言え知覚は出来るはず。 もちろん、その力の一部を貰った私達も」


シルヴィアはそう確信めいた発言をすると魔力を爆発的に高めて解放する。 それから生み出された魔力は周囲の魔物の魔力に干渉し、シルヴィアの魔力の大きさに耐え切れずに全ての魔物が消滅した。


「……ふぅ、粗方片付いたかな」


シルヴィアのその言葉を合図に全員が戦闘態勢を解除する。 全員を支配していた緊張感は霧散し、レルシュがデバイスを取り出して何処かに連絡をし始めた。


「レルシュ……? 何してるの?」


「いえ、猫神様に報告をと思いまして。 今のお話などの内容も。 ちょっと気になる事もありましたので」


「何がヒントになるかも分からないからそれも良いかもね。 情報の共有も大事だ。 さて、そろそろ街の方にも行ってみよう」





街に着いたシルヴィア達は調査も兼ねて街の様子も観察していた。 するとシルヴィア達に近付いてくる二人組の男女が目に入った。


「すみません、私、能力者協会という組織の人間ですがあなた方が最近この近辺を調査している方々でよろしいですか?」


二人組の女の方がシルヴィア達に話掛ける。

それにシルヴィアの眉がピクリと動く。


「そうだけど……能力者協会の人が私達に何の用?」


「……ここでは何ですから私達の協会で話をしましょう」


と女が指を鳴らすと既にどこかの建物に移動していた。 シルヴィア達全員が能力者協会の建物内に入ったのだと悟った。 女は縛っている髪を解き、シルヴィア達に対して頭を下げると謝罪をした。


「貴方達の意思を無視してこちら側に連れてきた事に対して謝ります。申し訳ありません。 ですが、貴方達の能力は素晴らしいものです。 是非、能力者協会に入って頂きたい」


「いきなりそんな事言われてもね……こっちにはこっちの事情が……」


「エリナ、いきなり勧誘は急過ぎるぞ。 そちらの方も困っている。 お前の悪い癖だな」


シルヴィアの言葉を遮ってエリナと呼んだ女の肩を掴んで制止したのは黒の短髪を立たせ、サングラスを掛けた大柄な男だった。


「ウチのもんが迷惑を掛けたな。俺はこの協会のマスターをやってるガルーアというもんだ。 こっちが言える事じゃ無いが、良かったら見学だけでもしていかないか?」


「見学だけなら……良いよねレルシュ?」


「大丈夫です。 猫神様もこの事は知っておられますから」


その言葉にガルーアの口角がニヤリと吊り上がった。


「なら決まりだな。 まずは受付所から案内しよう」


それからが早かった。 ガルーアは案内と同時にこの協会のシステムを砕いて説明し、なるべく分かりやすさに努めてシルヴィア達の理解を促した。 この協会は猫神が組織した協会ではあるが、民の信頼と能力者達の協力で成り立っている事が大きいとガルーアは言う。 しかし同時にガルーアは懸念も示していた。


「猫神様の力が奪われ、世界を形として保つのがやっとと聞く。 そして世界は今とても不安定な状態であると。 もし、猫神様が果ててしまったら俺達やこの世界そのものはどうなる? 滅ぶのか? 存在そのものが無かったことになるのか? ……だからこそ猫神様という存在を無くしてはいけない」


そう言ったガルーアの決意は固そうだった。

それを聞いたシルヴィアは、ガルーアと自分達は目的の一部は合致すると内心思った。


最後にガルーアが案内したのが訓練場だった。 そこでは何人かの能力者が互いに戦っている最中だった。 協会では常に自己鍛錬や実戦を怠らず上を目指すというのを主体に、強力な魔物や敵対存在という脅威を排除するために力を入れているとガルーアは説明した。


「マスター!」


「マスター、お疲れ様です!」


何人かの能力者がガルーアの姿を確認すると声を掛ける。 ガルーアはそれに手を挙げて応えた。


「常に強く在ろうとする奴らが多いからなここは。 だから鍛錬を怠らないやつらばかりだ。 実戦形式での戦闘で経験を積んでそこから対策や攻略性を見つけていく。 ほんと頼りになる奴らだよ」


信頼の表れのような微笑を零すガルーア。


「今のタツヒコ君みたいだね?」


「ああ……」


シルヴィアの言葉にタツヒコは握り拳を作りながら協会の能力者達の戦闘に食い入るように見ていた。 それを聞いていたガルーアが申し訳無さそうにシルヴィア達を見やると手を合わせてきた。


「厚かましくてすまんが、こいつらにちょっと違った相手とバトルをやらせてやりたい。 もし良かったらあんた達の中で二〜三人やってみないか? もちろんあんた達にも何かしらの発見や刺激になり得るし互いにとって悪い話じゃないはずだ」


「……私は構いませんよ」


ガルーアの懇願にレルシュはぶっきらぼうに答える。 手を挙げたのはタツヒコとアイラと長谷川だった。

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