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街の様子

街への危害が気になるというレルシュに連れられて街の方まで足を運んだシルヴィア達。

結論から言うと街に大した被害は出ていなかった。 森の約半分は消し飛んでいたが次の日には元通りになっていたのはレルシュ曰く猫神の力のおかげだという。


「シルヴィア、猫神から許可は貰ってきてるんだろ? なら羽伸ばしも兼ねて少しばかりここで買い物とかするのはどうだ?」


「そのつもりだよタツヒコ君。 お金……というよりこの世界に通貨の概念があるのか怪しいけど、どうすれば良いんだろう?」


タツヒコの提案に乗り気なシルヴィアだったがこの世界に通貨があるのかも不明な為買い物どころではなかったがレルシュがシルヴィア達全員の注目を集めた。


「この世界では通貨の代わりにこの特殊な石に魔力や能力を抽出してそれに伴った商品を買えるというシステムを採用しています。より高純度ならば店ごと買えますよ」


と言い全員に黒い楕円形の石を配り始める。


「その高純度となる基準は何なのさ?」


「透明度です。透明に近ければ近いほどより高純度となっていきます。 ここで重視されるのは魔力や能力の『質』です。能力の効力などは反映されませんので下手なインチキは通用しません」


「それはそれは便利なこった。 早速実践してみるか」


長谷川が全ての能力を石に込めると黒色だった石が段々と輝きを取り戻していき様々な色に変化していき、透明度のある緋色で変化が止まる。


「長谷川様は純度はかなり高いです。 一つ一つの能力としての質もあるという証拠ですので誇ってください。 そうですね、透明度は申し分なしで色は緋色……店の一つは充分に買い取れますね」


「ならそれで充分じゃねーのか? 店一つ買い取れるんだろ?」


長谷川の言い分はもっともだったのでそれで近くの店に寄る事にした。 店はお守りやアクセサリーを扱った感じなのか全体的に女性向けと言ったイメージだ。


「親父、これで人数分買えるものだけ欲しいんだが……」


ゴトッと長谷川が自身の能力の質を表した石を置くと店主である中年男性の目が驚愕に染まる。


「っ……好きなだけどうぞ。 そうだ。 ちょっと待っててください」


店主は懐から小型デバイスを取り出すとホログラムデータが映し出され、そのデバイスを石に向けるとその石が分解され転送されてしまった。


「な……何を……」


長谷川達が唖然としているのを横目に店主は笑いながら頭を掻く。


「いやぁすまんかった。 かなり上質な石だったから能力者協会の方にその石を送らせて貰ったよ。 こっちにも紹介報酬として特別報酬が貰えるからな。 大目に見てくれると助かる。 その代わり好きな商品を好きなだけ持ってって良い。 うちの商品は絶大な加護を持つお守りばかり扱ってるからな! ワッハッハ

!」


急にハイテンションになった店主の態度について行けずに苦笑いを浮かべるシルヴィア達だったが店主の好意に甘えて商品の物色もしようと各々バラけた。


シルヴィアは猫型のお守りを取るとそれを調べ始める。 表と裏に猫という文字以外入っていないシンプルなものだった。


「おっ、嬢ちゃんそいつに目を付けるとは冴えてるね。 それは猫神様直々の加護が注入された代物だ。 それさえあれば、あらゆる厄災から守ってくれるんだ。究極の厄除けと言った方が良いな。 そいつは持っといて損は無いぜ?」


「ならこれを貰っておこうかな。 デザインも可愛いし」


シルヴィアは少し上機嫌になりながら引き続き商品を物色し始めた。 アイラもシルヴィアと同じく商品を物色していると鳥型のアクリルホルダーが目に止まり目を輝かせながら店主の方に持って行った。


「おおっ嬢ちゃんも良い目を持ってる。 これは飛来してくるものから身を守ってくれる展開型の結界の効果を持ったアクリルホルダーさ。 見た目も可愛いから嬢ちゃんにもピッタリだ」


「わぁ……ありがとうございます!」


アイラもお礼を言うと引き続き物色し始める。 タツヒコと長谷川も見ているが女性向けの商品が多い為身に付けるのに抵抗感が生まれていた。 長谷川の両手に持っている二つのアクリルホルダーは店主曰く絶大な効果のあるものらしい。 右手に持っているひよこのアクリルホルダーは付けた対象に判定の性質が付与されるらしく、物事の判断力などが上昇する珍しいものだった。


「うーむ……この性質は非常に素晴らしいがデザインがな……。 こんなおっさんがひよこのアクリルホルダーなんか付けてたら笑われそうだな……」


「そんな事ないぜ。 あんたも見たところ立派な戦士のようだ。 持ってて損は無いはずだ。 それにこっちはあんな上質なモン貰ってるからな……。 あんたには特別にこれもやろう」


と店主が長谷川に渡したのはミニチュアサイズの剣がキーホルダーになったものだった。


「これは意思に呼応する万能型の武器さ。 剣にもなるし盾にもなる。 なんなら鎧にすらなる。 効能も様々な 店一番のアイテムだ。 これを使いこなせるかどうかはあんた次第だぜ」


「店主……良いのか?」


「構わない。 雰囲気で人となりは察せるのが俺の特技さ。 それに能力の質も上等だからあんたにピッタリだと思っただけだ。 さぁ貰ってくれ」


長谷川は店主に向けて頭を軽く下げるとキーホルダーを受け取った。 そしてタツヒコの方を向くと何かをタツヒコに投げる。


「これは?」


「能力を向上させ意思の強さによって様々な効果が現れるアイテム。 兄さんはとてつもない意思を持っている……。 だからそれが良いと思ってな。 だが自らの大き過ぎる意思に飲まれない事だ。 昔猫神様が言っていた別世界に存在するクジラという生物を真似て作ったんだ」


店主は豪快に笑いながらタツヒコの肩を力強く叩くと元の位置に戻っていった。粗方見終わったシルヴィア達はその店を後にし、街を散策して猫神のいる城へと戻っていった。






「おお、戻ったか。どうだった? 街の方は」


「とても良いものでした。それと気になる事がいくつか」


玉座に座る猫神にシルヴィア達は今日あった事を報告していた。 シルヴィアは猫神の目を射抜くと息を吸う。


「 "能力者協会" とは何でしょうか?」


「 "能力者協会" は我が組織した協会じゃ。この組織の他に "魔法協会" も存在するがな。 "能力者協会" は言うなれば能力者からなる組織社会じゃ。 治安維持、依頼の発注や受注などを主にしておる。 我はこの世界の器そのものじゃが我一人でこの世界を管理していては身が持たん。 それに今は力がほとんど無い状態じゃ。 こんな時も見越して協会というのを組織した……。 じゃが奴らではルティナには対応出来んじゃろう。 そのためのお主達じゃ」


猫神のどこか達観した雰囲気を持っている。


「大罪のルティナをこの世界から追放すればこの異常事態も収まるじゃろう。 奴の強大な力が異質な力を引き寄せているのは確かとなった。 引き続き調査をし歪みの修正をせい。 大変じゃろうがルティナをこの世界から引き剥がしてほしい。 奴の目的や行動は未知な部分も多いがなるべく迅速にな」


「分かりました猫神さん……私たちに任せてください」


シルヴィア達は一礼する。 猫神は手を振るとシルヴィア達は玉座の間を後にする。


「ルティナ、それにリヴァイアサン……貴様等は一体何を企んでおる?」


猫神の問いは誰にも届く事なく溶け消えて行った。

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