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猫神という存在

歓迎会の翌日、シルヴィア達は猫神に呼び出された。 客間というにはあまりに広い部屋に様々な装飾が彩られている。 階段の頂点に位置し、玉座に座する猫神は足を組みながらシルヴィア達を見下ろす形で口元を三日月状に広げた。


「昨日はどうじゃった? 楽しかったか?」


昨晩のようなおちゃらけた感じでは無く落ち着いた雰囲気を醸し出してはいるが、その言葉の一言一言は重かった。


「はい。 楽しませていただきました」


シルヴィアを含む全員が最敬礼の格好で礼を言うと猫神は嬉しそうに口元をさらに歪めた。


「それなら良いんじゃがな。 ならさっさと本題に入らせてもらう。 レルシュから多少聞いておると思うが我はお主達にこの世界を救って欲しいと思っている。 正確にはこの世界の歪みを直して欲しいんじゃ」


「歪み……ですか?」


猫神の言葉にシルヴィアが首を傾げて聞き返す。猫神はそのシルヴィアの言葉に首肯で返すと一息つく。


「そうじゃ。我は世界を形作る器のような存在じゃ。 その中身がこの世界と言ったような感じに近いか。 今の我の力はある存在のせいでとても不安定でな。 全盛期の力には遠く及ばん。 故に世界に歪みが生じ、異質な力が世界を侵食し始めた。 お主達にはその歪みを正し、我の力をある存在から取り戻して欲しいんじゃ」


猫神はそこまで言うと口を閉じシルヴィア達の反応を窺う。 シルヴィアは失礼だと分かっていても反応せざるを得なかった。 躊躇いながらも恐る恐る口を猫神に向け開いた。


「歪みは出来る限り直したいと思っていますが、その猫神さんの力を奪った存在とはどんな……?」


「……リヴァイアサンと大罪のルティナ。 その二人が我の力を根こそぎ奪って行った。 リヴァイアサンに大半の力を持ってかれたからか大罪のルティナには少ししか奪われなかったが」


猫神の言葉にシルヴィア達は絶句した。もしそれが事実だとすればシルヴィア達はリヴァイアサンとルティナの二人を相手取らなければならないという事になる。 シルヴィアの脳裏に二人の姿が浮かぶ。 しかしすぐに搔き消すと猫神の方を向く。


「リヴァイアサンと大罪のルティナには会ったことはありますが戦った訳ではありません。なので勝てるという保証は致しかねます」


「よいよい。 我も力を取り戻すのは諦めておる。 最悪時間経過と共に回復するから時間は掛かるが問題は無い。我ら神の力は無にはならんからな。 ならばお主らに再度命じよう。 この世界の歪みを無くして欲しい。この通りじゃ」


猫神はシルヴィア達に深々と頭を下げて懇願する。 それを見たシルヴィアは慌てたように立ち上がる。


「そんなっ! 頭を上げてください。 神様に頭を下げられたら困りますし、我々としても目的が明確になったので礼を言うのはこちらの方です!」


「よい。我もお主達の力を見込んでの事じゃ。お主達の力は我ら神にも匹敵する。 その力を以って世界を修正して欲しい。 僅かながらこの世界の "感覚" をお主達に付与した。これで異質な存在との間に認識の差異が生まれてより分かりやすくなるはずじゃ。どうか頼んだぞ」


猫神はそれだけ言うとシルヴィア達を下がらせた。 部屋には猫神と付き人のレルシュと護衛が数名。


「猫神様、よろしかったのですか? あの人達だけに任せて」


レルシュの言葉に猫神は眉を寄せる。


「うむ。 あやつらなら偉大なる方々(・・・・・・)とも肩を並べる存在となろうぞ。 それに比べればリヴァイアサンなど可愛い存在に過ぎん。 あのお方達に比べれば我もリヴァイアサンも塵芥の一つに過ぎんからな。 あやつらにとっても超えればならぬ壁じゃ。 レルシュ、お主もシルヴィア達についてゆけ。 お主の先導があればより迅速に片が付くはずじゃ」


猫神の言葉にレルシュは首肯し、一礼してから部屋を後にする。


「世界を形として保つのだけでも精一杯じゃが頑張るとするかの。 シルヴィア達が失敗したらそれまでの話じゃがな」


猫神は深く溜息を吐くと立ち上がる。 尻尾が猫神の意志とは関係なくゆらりと動いている。 猫神の瞳は期待が入り混じった感情が渦巻いていた。

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