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第八の世界

空間に穴が開き、その中からシルヴィア達が落下する形で地面に着地する。


「よっ……。 さて、ここが次の世界見たいだね。 周りは森みたいだけど」


シルヴィアが辺りを見回しながら呟く。 シルヴィアの言う通り視界一杯に広がるのは木々が連なった盛りと形容すべき空間だった。

シルヴィア達は周辺を探知したが特に異常と呼べるような感じは無かった。


「私達の世界へようこそお越し下さいました」


その声が聞こえるまでは。 その声を認識したシルヴィア達全員が殺気を放つと同時に能力を展開した。 シルヴィア達が目にしたのは胸元と股下を何かの毛皮で隠した服装で猫耳と黒と白の縞々の尻尾が特徴の獣人の少女だった。


「君は……?」


シルヴィアが警戒心を強めながら問いただす。 猫耳の少女はシルヴィア達の能力を物ともせず敬意を表した礼で頭を下げる。


「申し遅れました。 私は猫神様の配下のレルシュと申します。 以後お見知りおきを」


レルシュと名乗った少女は頭を上げると手を前で組んでその場で直立不動の形を取る。 シルヴィア達は以前と警戒を解く事は無く鋭い眼光でレルシュを睨んでいた。 レルシュは透き通った色を持つ碧の瞳でシルヴィア達を一瞥すると姿勢を変えずに口を開いた。


「そろそろその殺気と私を縛っている能力を解いていただけると有難いのですが無理な話ですよね。 私は猫神様の命を受けあなた達を迎えに上がったのです」


「その猫神様って言うのは?」


「あなた達の存在を予見し、予言した存在です。 今は力の大部分を無くしておられますがあなた達が猫神様の代わりにこの世界を救うと猫神様自身が言っておられました」


レルシュの言葉を信用し切れないシルヴィアは眉根を寄せながら少し前に出る。 風に靡く木々が音を奏でる。


「……何故そこまで断言出来るの? まだ私達とあなたはこんな形とは言え出会ったばかり。 猫神様とやらの話は理想論となるかも知れないのに」


シルヴィアの反論にレルシュは一拍置いて息を吸うと絶対の意思を持ってるかのような独特な瞳でシルヴィアを射抜き、シルヴィアの意見に首肯する。


「確かにそれも充分にあり得るでしょう。そしてこの話を信じない、到底信じられないあなた達がいるのも可能性の話としては重々承知しています。 ですが、猫神様はこうも仰ってました。 自身が知覚出来ない存在を倒せる可能性があるのもまたあなた達だけだと。 信用出来ないのは承知の上ですが、どうか私達にその力を貸してほしいのです。 今は黙ってついて来てくれないでしょうか? もしそれでも信用出来ないと判断したのなら私を殺しても構いません」


懇願とも言えるレルシュの声。 シルヴィアは諦めたように息を吐くと能力を解除した。


「分かった。 半信半疑な話だけど全部が全部信じれない訳じゃない。 猫神様とやらの所に連れて行ってくれるの?」


「はい。 ささやかながらもてなしの準備もしております。 異世界から渡ってきたあなた達の口にお合いするかは分かりませんが、猫神様の予言を参考に料理を作りました。 では話が一通り纏まったのでここじゃ何ですから私達の居城へと案内しましょう」


そうしてシルヴィア達は獣人の少女レルシュの案内の下、森の中を歩き始めた。 道中で森はレルシュの世界では神聖なる森と呼ばれていたり、それによる恩恵も受けているとレルシュから説明を受けたりしていた。 そうこうしている内にレルシュ達獣人族の居城に辿り着いた。


絢爛豪華な装飾で彩られ、森を突き抜ける程の大きさを誇る城。 シルヴィア達が小人に見えてしまう程の圧巻の大きさと、何階にも分けられた作りがどれ程の広さを持っているかを物語っていた。 ぐるっと囲うように作られた門も存在しており、警備の猫耳少女が二人立っている。


「では行きましょうか」


レルシュを先頭にシルヴィア達が開けられた門をくぐっていく。 門番の少女達の身体つきが良いのか長谷川が鼻を伸ばして舐め回すように見ていて門番の少女は多大な殺気と恐怖と困惑が入り混じった表情で見送った。


中へ足を踏み入れると外装と同様に内装も絢爛豪華だった。 大広間へと招かれたシルヴィア達を迎えたのはとても食べられない量の料理とそこで働いているであろうメイドの少女達だった。 やはりレルシュと同じように猫耳が存在し、一人一人模様や大きさが微妙に違っていた。


「ようこそ御出でなさいました。 ささやかながらのもてなしもありますのでどうぞごゆっくり御堪能下さいませ」


メイド達が声を揃えて頭を下げる。 その動きはプロのそれであり一切のブレが無い完成されたものだった。


「凄いもてなしぶりだね……。 ちょっとびっくりしてるよ」


シルヴィアが乾いた笑みを浮かべる。 タツヒコ達も同様なのか声を詰まらせ唖然とした様子だった。 そんなシルヴィア達に一人の少女が近づいて来た。 レルシュ達と同じ猫耳が付いていたが肌は褐色、尻尾は白と黒で二門に分かれて生えていた。 服も露出度が高いが装飾が施され一介の獣人とは多少雰囲気が違った。 褐色の少女は身長の違いでシルヴィアを見上げる形となったが透き通ったオレンジの瞳で確かにシルヴィアを射抜く。


「お主が魔王シルヴィアじゃな。 我が居城へようこそ。 我は猫神。 お主達の存在を予見し予言した張本人じゃ。 積もる話もあるが話は後じゃ。 料理が冷めん内にさっさと食べてしまおうぞ」


さぁさぁとシルヴィア達を促し、猫神もシルヴィア達と同じ席に座って飲んで食べての宴会さながらの盛り上がりを見せた。 料理は和洋関係なく様々な品物がありどれも出来立てだった。 猫神は気さくに話しかけ誰とでも分け隔てなく接する事でシルヴィア達全員の警戒心を緩和させ、徐々に打ち解けていった。 特に長谷川は酒を浴びるように飲み、猫神と飲み比べまでして競い合う仲にまで発展し、最後はお互いに頬を紅潮させながら肩まで組んでいた。


「ははは……凄いね長谷川さん。 もう猫神さんと仲良くなってる」


シルヴィアは互いに肩を組み合う長谷川を遠目に見ながら紅茶を啜る。 料理も綺麗に食べられておりどの料理もシルヴィアの舌を唸らせた。 この豪勢を極めたもてなしをする価値が自分達に有るのかと言う疑問が頭を掠めたがそれは今は必要無いだろうと振り払う。

料理自体に毒やそう言った類のものは入ってないというのは分かっている。


「ははは! 無礼講じゃあ! メイド諸君も飲んで食べて踊っても良いぞ! 皆で楽しもうぞ!」


良い感じに回って来てる猫神が叫び、宴会は朝まで続いて行った。

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