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久々の休暇と反省会

「よっ……と。 我が家に到着かな」


魔王城の会議室に転移してきたシルヴィア達。 早速紅茶が用意されそれぞれが席に着く。


「さて皆、お疲れ様。 今回の世界はかなりイレギュラーがあったけど全員無事で何よりだよ。 早速だけど今回の世界について感じた事はある?」


シルヴィアが労いの言葉を掛けつつ、全員の意見を聞こうと意見を投げ掛ける。長谷川が手を挙げるとシルヴィアが顎をしゃくる。


「とりあえず俺が感じた事は上手く出来過ぎてる事だな。 トントン拍子に事が上手い具合に行き過ぎてる……。 個人的には複数の国が絡み合った複雑な差別問題だと感じたんだがな……まぁ過ぎたものは言ってもしょうがないか。 俺からは以上だ」


「物事が私達にとって上手く行き過ぎてる……か。 ありがとう長谷川さん」


シルヴィアが長谷川の言葉を重く受け止める。思い返すと確かに上手く行き過ぎていた。 あの世界だけじゃなく、今までの世界全てで。 シルヴィアはそう思考する。 ふと目を向けるとアイラが手を挙げているのが目についた。 シルヴィアが促すとアイラが言葉を発した。


「私は……リヴァイアサンという神様が言っていた事が引っかかりますね。 世界には正史があるけど、私達が乱入した事で正史が乱れ、歴史が改変されるって所ですか。 もしそれが本当なら私達のやってる事は正しいと言い切れるんでしょうか?」


不安そうな表情と声音でアイラが呟く。 その問題にシルヴィアも眉をひそめて唸る。


「うーん、確かに正しいとは言えないのかも知れないけど、何が正しくて何が間違ってるのかなんて誰にも分からない……これは前にアイラちゃんが私に教えてくれた事だよね。

だったら私達が信じるやり方を貫くしか無いんじゃないかな? 無限に存在する全ての世界を救える訳じゃないけど、私達は私達の世界が崩壊しないためにやってる事なんだし。 この魔王城だって世界の一部に過ぎないよ?」


シルヴィアの言う事にアイラは返す言葉が見つからないのか押し黙ってしまうが不安そうな表情は未だ拭えない。 それを抱えたままアイラは俯いてしまい、ポツンと呟いた。


「なら……世界はどれほど存在するんでしょうか? 無限に存在すると言っても、私達の可能性や時間による分岐によって日々生み出されていく事もあります。 さらにそれらを内包する世界も存在するんじゃないでしょうか。

さらにその世界をも内包する……と言った具合に世界は連鎖的に無限内包されてるんじゃないですか? まだ私の仮説に過ぎませんけど」


「確かに言えてるわね。 アイラの仮説が正しいか間違いかなんて誰にも分からない……。 でも、少なくとも私はアイラの仮説を推すわ」


アイラの意見に賛成の意を示したのは氷雨だった。 さらに氷雨は続ける。


「あと私も少し違和感を覚えたところもある。 何故別世界の存在であるカトレアをアイーシャが召喚出来たって事。 アイーシャによれば継承者であると同時に先祖らしいじゃないカトレアは。 奴の能力は全能。 もし、別次元の世界に奴の能力の継承者が他にも居たら……なんて私は考えるわ」


「並行世界や可能性世界の他に多次元世界が存在すると?」


「そうなるわね」


シルヴィアの問いを肯定する氷雨。 少し頭を抱えたシルヴィアだったが、頭を振るうと同時に手も払う。


「仮説の話ばかりしていても埒があかないから一旦話は置いとこうか。 さて、他に意見はあるかな?」


シルヴィアは他に意見を求めるが誰も手を挙げなかった。 それで意見無しと判断したのか咳払いを一つする。


「なら……今日のところはここまで。 各自自由にしてて良いよ。 あと氷雨、ちょっと良いかな」


解散を宣言したシルヴィアが氷雨を呼び出す。 人目の付かない所まで移動した所でシルヴィアが切り出した。


「これ見てよ」


シルヴィアの右手から闇が溢れ出す。 その禍々しさに氷雨は思う所があった。


「怠惰神イルザークが纏っていた闇の衣じゃない」


「そう……氷雨が呼び出した影響なのかどうか知らないけど私も使えるようになったんだ」


と哀愁の漂う笑みを浮かべる。 シルヴィアは息を軽く吸うと氷雨の瞳を射抜く。


「七罪神を私に封印したのは誰か分かる?」


そのシルヴィアの問いに氷雨は鼻で笑う。まるで答えが分かりきってるかのように。


「あんたならてっきり正解に辿り着いてると思ったんだけど……まさか本当に気付いてない訳じゃないでしょう? こんな芸当出来るのは一人しかいないわよ。 あんたの父親である魔神ヴァルグよ」


その言葉を聞いた時、シルヴィアが先に感じたのは驚愕で無く、落胆に似た確信だった。


「そう……だよね。 やっぱりパパしかいないわよね。 それと、私は氷雨にパパの情報は与えなかったのに何で私のパパって分かったの?」


「私の力は普通のそれとは違うのよ。 それくらい朝飯前よ。 拒絶世界を初めて展開させた時に私の力は覚醒した。 そしてその時にあんた達の持つ可能性を垣間見させてもらったわ。 アイラの時も発動したけど」


人智を超越した力の持ち主の氷雨がぶっきらぼうに呟く。


「これだけは忠告しといてあげるわ。 七罪神の力、簡単に使いこなせると思わない事ね。

まだ使えても闇の衣が限度と思いなさい。 全ての力を引き出したかったら、奴等全員を屈服させあいつらの力を取り込むのよ。 一筋縄じゃ行かないでしょうけど。 じゃあ私は休ませて貰うわ。 またねシルヴィア」


氷雨は手を振りながら踵を返すとシルヴィアの前をあとにする。 氷雨の姿が完全に消えたと同時にシルヴィアの肩から魔神ヴァルグが姿を現わす。


「パパ……今氷雨が言った事は本当なの?」


悲壮を隠せないシルヴィアにヴァルグは巨大な顔を動かしながらも黙っていたが、しばらくすると肯定した。


「そうだ。 あの小娘の言っとる事は事実だ。 儂が封印した。 七罪神の神々はそれぞれの異世界にしていた七柱の神の総称だ。それらを全て倒し、当時赤子だったお前に封印した。いつかその力を使いこなせると思ってな」


「……」


「シルヴィアよ……儂は父親失格だな。 お前を危険な目に合わせてしまっている」


魔神ヴァルグが伏せ目になると済まんと一言だけ呟いて風景に同化するように消えていった。


「パパ……そんな事ないよ。 私が使いこなせないだけだから。 それでも……生き残らなきゃ」


シルヴィアの悲痛な想いが言葉となって木霊した。

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