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動き出す戦局

激化する戦闘はシルヴィア達に確実に疲労を与えていた。 しかし、それを感じさせずに戦闘を行うのも敵の士気を上げさせない事に繋がっていく。


シルヴィアは四方を敵に囲まれながらも魔法を駆使して突破していった。 傷で服は所々が裂けておりそこから出血もしていたが、その影響を微塵も感じさせず敵を屠っていく。


「ふっ!! はぁぁぁぁぁ!!」


上空に展開された魔法陣から大量に射出されるナイフは地面を蹂躙するとそのまま光に包まれ爆発を起こす。 シルヴィアは畳み掛けるように魔法を連続して放つ。 今度は荒れ狂う暴風が兵士達を易々と呑み込み、身体を切り刻んだ。


「数だけは多いね、全く」


そう辟易したように呟くも音速を超える速度での攻撃は勢いの衰えを感じさせなかった。

魔力も随分と消費したがまだ回復薬も残っており、雑魚を片付けるのには充分な余力はある方だ。


(やれやれ、これだけやってもまだ大将は動かないのか……。 奥の手、発動しちゃおっかな)


一瞬の逡巡の内、無意識に敵の攻撃を躱しながら思考を巡らすと力を解放するように身体を大きく反らす。 シルヴィアを中心に莫大なエネルギーが駆け巡り、数多の兵を屠りあげた後、静寂が訪れる。長い金髪を靡かせ、紅の双眸を携えたシルヴィアが姿を現わす。


シルヴィアはここで回復薬を飲み、後の大将戦、アイーシャ・フォン・ゴンハルトとの決戦へと備える。


(アイラちゃん達はどうしてるかな?)


ふとアイラ達の事が脳内によぎる。 アイラや長谷川達は頼りになる仲間だからこそ気になってしまう。 仲間の身を案じ、一歩踏み出した瞬間、荒野全域に魔法陣が展開されると考える間も無く極光が降り注いだ。


潰される視界と節々を襲う激痛。 そして膨大な魔力の持ち主がシルヴィア達全員を挑発するかのように殺気を放った。


「アイーシャアアアアアア!!」


剣を具現化させ喉が裂けんばかりに咆哮しながら一蹴りで距離を詰める。 視界には佇む仮面の女、アイーシャと、後方からアイーシャを同時に襲う氷雨とメイルの姿が映った。


「威勢が良いな。 が、威勢が良いだけでは私は倒せんぞ」


攻撃が当たる瞬間、認識不可の攻撃が三方向から襲いかかったシルヴィア達を全員吹き飛ばした。 氷雨は切り立った崖の岩壁に直撃、メイルは追撃と言わんばかりにレーザーで内包された。


(ぐっ……今のは……斥力か?)


シルヴィアもそれなりに飛ばされたが致命傷は防いだ。 そしてあのアイーシャの攻撃を分析するように思考する。 しかし悠長に考える暇を与えてくれないのか、無数の細いレーザーがシルヴィアに降って襲い掛かる。


地面に着弾すると抉るように爆発を起こすがそれをシルヴィアはバックステップで躱す。 しかしそれだけでは終わらなかった。 シルヴィアの動きに合わせてレーザーも動きを合わせてきた。 所謂追尾型レーザーだった。


「くっ……!」


シルヴィアは唇を噛みしめると上空へ飛び上がる。 それに続きレーザーも軌道を変え上昇する。 シルヴィアは鬱陶しそうに振り向くと魔法陣を展開させる。しかしレーザーは急に現れた魔法陣をものともせずに躱すとシルヴィアを驚かせる。


「全く、やってくれるね」


シルヴィアは諦めたように呟くと無数のレーザーに身体を撃ち抜かれた。





アイーシャに吹き飛ばされたメイルは即座に態勢を立て直すと地面にクレーターを残して凄まじい速度で駆けていく。


(私の全ての力を使い果たしても良い……アイーシャを討つ!)


全ては差別を無くしあらゆる人々が分け隔てなく過ごせる未来を作る為、そしてそこでブラストと同じく平穏な日々を謳歌する為───。 これはその前段階に過ぎない。


メイルはアイーシャの姿を捉えた時には既に攻撃していた。 が、その攻撃を難なく躱され仮面がメイルを射抜く。


「今の今までお前の存在を忘れていたな……。 あと一人はどうした?」


超音速だというのにアイーシャはメイルの攻撃を捌きながら口を開く。 しかしメイルはその問いを無視すると一層攻撃速度を上げる。


一撃一撃を繰り出すたび地面が破壊され、空間が歪む。 そんな攻撃を目で追い、尚且つ捌き切るアイーシャも完全に人の領域を外れていた。


「"破壊の宝玉"」


「ほう、深淵竜の宝玉……奥の手か」


メイルの全身に何かの紋章が浮かび上がると直ぐに全身を蝕んだ。 一定間隔で発光を繰り返すメイルの紋章。 奥の手の一つをメイルが解放したというのにアイーシャはやけに冷静を保っていた。


「これ以上本気を出されると流石の私も辛いな。 能力を使わせてもらうぞ」


淡々と呟くとアイーシャはメイルの攻撃を掻い潜り、メイルの勢いを利用した一撃を繰り出す。


「がっ!!」


動きの止まった所にさらに顔面への殴打、腹部への強烈な蹴りを叩き込んで無理矢理距離を空けると、膨大な魔力を消費して魔法陣を出現させた。


「まだ我が先祖を召喚するには足りないが、これくらいなら容易いか」


アイーシャは自身が呼び寄せた生物に目をやった。 一回り大きい人型の姿形に、全身から生える触手、白色の皮膚に紅い双眸はどこからどう見ても生物兵器のような生物だった。 触手は意思があるかのようにゆっくりと動いている。


「『異世界から呼び寄せた』が、あいつらをやるにはちょうど良いだろう。 魔力を今のうちに溜めておかないとな。 やれ」


アイーシャが命令すると、白い怪物はアイーシャを一瞥した後、視線を戻した。


「恐ろしいものを召喚させたわね。 随分と気持ち悪い趣味をしてるわねあんた……」


嘆息と共に怪物に攻撃が放たれ、数ある触手の一本を切り刻んだが、すぐさま再生した。

攻撃の主、氷雨が黒髪のツインテールを揺らしながら怪物とアイーシャを半目で射抜いていた。


「朧 氷雨だったか? 随分な言いようだな。 だが流石のお前も私とこいつを相手取るには無理があるだろう?」


「そうね、 "適応因子" で弱点を見ようにもこいつには弱点が見当たらないし、見た目も気持ち悪過ぎる。 奥の手を使っても良いんだけど、あなたの後に控えてるやつとの戦闘を考えるとどうしても使う気になれないのよ」


氷雨の一言にアイーシャの髪が微かに靡いた気がした。


「お前は私がやろうとしている事を解っているのか?」


「さぁどうでしょうね」


アイーシャの問いに氷雨は肩を竦めると気だるそうに氷剣を顕現させると軽く振い、地面に突き刺した。。 すると地面が凍りつき始め、それと同時進行で空間が凍りつき、その凍り付いた空間が徐々に音を立てながら広がっていく。


「 "真・氷結世界" 」


全ての空間が氷に包まれ、氷結空間へと早変わりした。 氷雨は突き刺した氷剣を引き抜くと振り抜いた。


「やれやれ、この魔法を本格的に使うのはあなたが二人目よ。 さぁ、やりましょうか」


凄絶な笑みを浮かべた氷雨は強者との戦いに心を打ち震わせるかのように白い怪物に目を向けると神速の一撃を繰り出した。

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