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神との邂逅 そして警告

シルヴィア達は今メイルの固有空間内にいるがメイルの姿は見えなかった。 それもそのはずだ。 メイルはブラストの指示でかつて亜人戦争に力を貸したリヴァイアサンという神に会うために移動しているからだ。


そしてシルヴィア達はメイルの固有空間内にいるため内部からメイルの様子を見ていた。

ブラストもメイルの固有空間内に居座っている。


「本当にそのリヴァイアサンって神様が力を貸してくれるの?」


シルヴィアがブラストに疑問を投げかける。

ブラストはそれに唸りながらも頷くと腕を組む。


「今回も力を貸してくれるか分からねーが行ってみないと分かんねーな。仮に仲間にならないでも有力な情報くらいは持ってるはずだろう」


「へぇ……しかし神様か。 にわかには信じられないな」


ブラストの言葉が信じられないのか肩を竦めるシルヴィア。 それに反応したのがタツヒコだった。


「シルヴィア、魔界には魔神ヴァルグ……お前の親父がいるだろう? 魔界を統べる神なんだろ? 身近にいるじゃねーか」


「あ、そうだったね」


そう言って戯けたように笑うシルヴィア。それにタツヒコは嘆息を零すと欠伸を噛み殺す。


「お前ら魔界から来たのかよ……道理で強い訳だ」


ブラストは意外な事実に目を丸くしたのだった。





一時間もすると目的地が近いのか広い海岸線が見えて来た。 メイルは転移魔法を使い、一気に砂浜まで移動をすると指を鳴らす。 足下から徐々に現れたシルヴィア達。 シルヴィア達は見たことのない海の綺麗さに目を奪われたかのように視線が集中していた。


「やぁ、また来たんだ」


不意に声が鼓膜を震わせる。 それにシルヴィア達が振り向くと小さな子どもが目に入った。 純白のワンピースに深い藍色のロングストレートの髪型にそれと同色の瞳。 一見すれば小学生に間違われそうな容姿だったがどこか一線を画す雰囲気を醸し出していた。


絶世の美少女と謳われても遜色ない程の可憐さと相まってそれは一層深みを増していた。


「リヴァイアサン……久し振りだな」


「ブラスト・シルヴァ……会うのは一〇年振りだね。 また私に仲間になれと言いに来たのかな?」


ブラストとリヴァイアサンが言葉を交わす。 リヴァイアサンは鼻で笑うような態度をしていたが心底馬鹿するような態度ではなかった。 ブラストもそれを理解しているのか首肯すると目的を述べた。


「ああ……性懲りも無くな。 俺はお前の力が必要だ」


「人間世界に神があまり干渉するような出来事は避けたいんだけど? それに……ん?」


リヴァイアサンがシルヴィア達に気付いたのか言葉を遮ってシルヴィア達に視線を向けると既にリヴァイアサンはシルヴィア達の目の前に移動していた。 眉根を寄せながら口を開いた。


「君達はこの世界の住人じゃないね? まぁソレは百歩譲って許そう。 だけど、私は君達がやってる事を看過出来ないな」


「私達がやってる事? なんの事?」


シルヴィアがとぼけて見せるがリヴァイアサンはその態度が癪に障ったのか顔を怒りに歪ませた。


「私の目を欺けるとでも? 魔王シルヴィア。 君達がやってる事は歴史の改変。 世界の史実の改変だ。 その世界にはその世界のルールがある。 それをイタズラに変える事は私が許さない」


小柄な体躯のリヴァイアサンだったがその並々ならぬ闘志と殺気はシルヴィア達よりも数段上だった。


「私達は自分達の世界を守る為にやってる事だ。 それに世界が滅ぶ原因を取り除いてるだけだよ」


「まぁいい……。一応警告はした。 世界を管理する身にもなって欲しいけどね……。 話の無駄だってのは分かった。 これ以上世界の歴史を改変し続けるのならその時は……君達の最期だよ」


リヴァイアサンはそれだけ言うとメイルとブラストの元へ移動し、指を立てた。


「そうだな。 まぁ仲間にはなれないけど君達に有益な情報をあげよう。 今から二週間後、戦争が始まる。 無論君達と五賢帝達との……だ。 私の鱗を渡してもいいけど、それは今回無しだ。 神の力の所有者もいるしね? あとはそれに近い力の持ち主も数名……。 今回の戦争は二週間後と比較的早いがシルヴィア達が関与してるから多少前後する可能性はあるが……まぁ前回はダメだったけど今回は見せてくれよ……人間の底力というのを」


リヴァイアサンはウィンクをすると数歩だけ歩みを進めるとメイルを一瞥した。


「君がメイルちゃんか……。君は強いね。 その優しさがこの世界を救うだろう。 期待してるよ」


リヴァイアサンはメイルの腹部に手を置くと優しく微笑んだ。 メイルはどんな反応をして良いのか分からず狼狽した様子だった。 またもやリヴァイアサンはシルヴィアの所に移動すると冷めた目で一瞥する。


「君達のやってる事も分からなくはないが限度ってものもあるよ。私の管轄外ならいくらでも構わないけど管轄内なら多少は考えてほしいものだね。 精々私を怒らせないように。 魔神ヴァルグの子シルヴィアちゃん」


「っ!? パパを知ってるの!?」


リヴァイアサンの言葉に目を剥くシルヴィア。 リヴァイアサンはそれを小馬鹿にしたように肩を竦めた。


「やれやれ、異世界を荒らしてたあのヴァルグを打ち負かして魔界に縛り付けたのは私だ。 やはり蛙の子は蛙って訳か……ヴァルグから聞いていただろう? 子どもの姿をした神にきをつけろ、と」


確かにリヴァイアサンの言う通りだとシルヴィアは思った。 シルヴィアは確かにヴァルグから忠告を受けていた。


(姿は子どもだが会っただけで次元が違う事を思い知らされる……か。パパ……)



ヴァルグの言葉が頭の中で反響する。そんなシルヴィアを尻目にリヴァイアサンはタツヒコ達も順番に見ていくと氷雨でリヴァイアサンの目が僅かに見開く。


「君の力……奥の手はもしかしたら私より上かもね……それぐらいの可能性を秘めてるよ。 その力を使う時は近い。 人間の域を超えてるな」


「ふん。 神様に褒められるなんて予想外だったわね……戦争になったら思い切り暴れてやるわ」


氷雨は氷雨で存外満更でも無さそうに胸を張ると鼻を鳴らす。 リヴァイアサンは期待してるよと声を掛けると次の瞬間にはシルヴィア達から少し離れた場所に移動し、全員の注目を集めた。 咳払いをすると話し始めた。


「今回の戦争は異世界からの来訪者……シルヴィア達が関与してるがそれでもギリギリの戦いになるだろう。 私は世界の中枢を担う存在であり全能ではない。 私は人間が面白く、そして好きだ。 だからこうやってコンタクトも取っている。 この戦争は大変興味深いから見守らせてもらうよ……。 ではまた……運が良ければ会えるかもね」


リヴァイアサンはそれだけを言い終えると大量の水柱で姿を覆うと水柱が砂浜を濡らす頃には既にその場から消えていた。 波の音だけが響く静かな空間に取り残されたような感覚に陥る。


が、いつまでもそうしている訳にもいかない。


「嵐のような奴だったな……だが有益な情報は得られた。 あいつの言った事が正しければ二週間後か……。 俺らの革命を成すのに聞いといて正解の情報だったな。 日も暮れて来た。 今日は固有空間で寝泊まりしろ」


ブラストが矢継ぎ早に言い切ると多少強引に固有空間へ全員を押しやる。 誰も居なくなった海岸は波がさざめく音だけが響いていた。

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