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反逆の魔王

「ボクは君達を超えに来た!!」


 神剣ベルフェゴールに刺さったサラを振り払う事でその嬉々という感情を表現したルティナは力を爆発させた。 七罪獣全ての権能を身に纏い常に異なる認識において力を使用する。 性質も能力も権能も全てが異なる力。

 瞬間瞬間において異なるので通常の相手ならそれだけで塵も残さず消し飛ばせるのだが相手が悪いと言わざるを得なかった。


「強さには理由がある。だから私達には勝てない」


 リーネの理由支配は容易く理由を改変出来る。 今回のルティナの最たる強さは他者の理想そのもの。 故にこう足せば良かった。


他者の理想そのもの(・・・・・・・・・)であるが故に(・・・・・・)私達に負ける(・・・・・・)。 私達に勝てる理由を私達に負ける理由に改変させてもらった」


 リーネは勝ち誇った笑みを浮かべる。 強弱とは表現の域を出ない。 理由そのものの改変。恐ろしい力だった。 しかしルティナは構わずに突っ込む。 突き出した拳はルーシィーが差し出した掌に収まった。 そこから生み出された莫大なエネルギーが吹き荒れる。


「残念ね。 これ程の力、失うのは勿体ないわ。 でも私の仲間に手を掛けたんだからそれは償ってもらうわよ」


 ツインテールを暴風に靡かせながらルーシィーの表情に怒気が滲んだ。 ルティナの足を払い思い切り地面に叩きつけた。 地面が陥没し余波で次元にヒビが入る。さらに間髪入れずにルティナの顔面にルーシィーの爪先がめり込む。


「がぁ……!!」


 鼻血を吹き出しながら何とかルーシィーを捕まえようと手を伸ばすがそれを踏み潰される。 骨の折れる音が響く。


「これで済むと思わない事ね」


 さらにルーシィーはルティナの胸ぐらと腕を掴んで背負い投げを食らわす。 一回では済まさない。 何度も何度も。 そのたびに次元が音を立てて崩壊した。ルーシィーはルティナを空中に放り投げるとネフィリアとハイタッチを交わして入れ替わる。


「表現を殺してあげる」


 瞬間、ルティナの「表現された強さ」が殺された。七罪獣の権能が無情にも無力化された。 簡単に無力化されたルティナにフィレーナの平等の一撃が猛襲した。差異を、他者を認めない平等がルティナの全身を侵食した。


「ごっ……がはっ!! ぐっ、っっ!!」


 地面に両手両膝を突きながら吐血するルティナに超越神が囲む。 すると黒髪を肩甲骨辺りまで伸ばしたカジュアルな服装の少女がルティナの胸ぐらを掴むと顔を引き寄せた。 あどけない表情だが殺意と共に眉間に刻まれた皺は激情を如実に表していた。


「はぁ、はぁ、君は……?」


「増殖の超越神ミールス。 どう? 私達に嬲られた感想は? 」


 しかしルティナはそれに答えずミールスの顔に血の混じった唾を吐きつけた。 そしてその事実を唾棄するように嗤った。


「はっ、全く以って良い気分だよ。 力の差を明確に感じられる。 例え無限に進化を重ねたとしても勝てないと教えられてるようだ」


 ミールスの殺意が増長する。ミールスの性質は増殖。 何かが増えるごとにミールスの力の総量が上がる特性を持っていた。


「もう死んどく? 負け犬の魔王サマ?」


 ミールスの問いにルティナは斬撃で返した。ミールスの頬が切れ、一筋の血が流れ出て力が爆発的に上昇した。 その流れ出た血を指で絡め取ると微笑を零した。


「傷を付けられたから力が上がっちゃった……どうするのルティナちゃん?」


 ミールスの性質上、あらゆる可能性分岐点の数だけ強くなる。 増殖するごとに干渉範囲とスペックも増えるので、あらゆる行動によって起こる分岐点に偏在し干渉することによって全能の力を得ている。 依然として力の差は開くばかりでルティナとしては苦笑を浮かべるしか無かった。


「ははは……参ったな。 勝ち目が無い」


「当たり前でしょう? 行動を起こせばそれだけで私達の力になる。 糧になる。 初めから詰んでるのよあなた……」


 嘆息したミールスはまるで当然の行動のようにルティナの顔面を地面に叩きつける。超越者すら軽く屠る魔王がこのザマだ。


「飽きちゃった」


 その一言でルティナは空中に放り出される。


「そろそろ終わりにしてやろう」


 フィレーナを含む6人の超越神の力が無慈悲な終焉に向け力を集約する。 光が世界を包み込み、ルティナは存在を根源から否定され消滅した。 ルティナを消滅させた6人はつまらなさそうに肩を竦めるとシルヴィア達の所に集まった。


「時間を取らせて悪かった。 さぁ黒金色香の所へ行こうか」


「黒金色香の居場所に見当はついてるの?」


「ああ……だが干渉出来るか不明だ。何せ私達より上位の存在だ。運良く干渉出来たとしてもそうした時点で消されるかも知れん」


「めちゃくちゃね……ルティナを軽く捻り潰したあんた達が可愛く見えるわ」


 リーネの言葉に氷雨とシルヴィアが嘆息する。 身に覚えのある場所に転移した。 酷く懐かしい感覚に襲われた。


「ここは、魔王城……私の城だ」


 シルヴィアが呟く。 そう此処はシルヴィアの城の中だった。


「む、ここはお前の城だったか。 全く、ここも大分変わったな。 数億年前はここまで豪勢なな城では無かったぞ」


 フィレーナが呆れながら呟く。 すると奥から巨躯な全身を取り戻した魔神ヴァルグが現れる。 リヴァイアサンが居なくなった事で呪いが解かれ力を取り戻す事に成功したのだ。


「シルヴィア……っっ!?!?」


 ヴァルグが認識した瞬間にその格の差に存在ごと押し潰される。


「パパ。 無事だったんだね」


 シルヴィアが掛かる言葉すら存在が軋む程の圧となって襲い掛かる。


「ぐっ……!! シルヴィア、抑えろ……このままじゃ儂の身体が」


 苦痛に悶えるヴァルグの顔に手が添えられた。


「ほう……お前、あの魔王の子孫か。シルヴィアの親だ。潰すのは流石に酷というもの。存在を保てる程の力は分けてやる」


 フィレーナが力を与え漸く存在が軋む程の圧力から解放されるヴァルグ。 冷や汗が全身に及んでおり激しくなっていた呼吸を整える。


(っっ……! 全盛期の力を取り戻したこの儂を凌駕するとはこやつらは一体!? それにシルヴィアも……)


「ごめんねパパ……忙しいからまた後で」


「あ、ああ……」


 それだけを交わすとシルヴィア達はヴァルグを尻目に移動を続けた。


「ここだ」


 魔王城の最奥にそれはあった。 時代を感じさせる禍々しい髑髏が彩る狂気の扉。その門にフィレーナは手を触れる。


「ここはかつて原初の堕天使が作りだした12の回廊からなる無限牢獄の入り口。 私達でもここは踏み入れなかった場所だ。だから何があるか分からない。 ここ以外の全ての場所を調べたが黒金色香は見当たらなかった。 いるとするならここ以外あり得ない」


 そして扉を押す。 禍々しい闇が溢れ出し、瞬く間にシルヴィア達は呑み込まれた。

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