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不穏なる影

日差しが照り付ける真夏の海はひどく神秘的だった。はるか彼方まで見える地平線、光が水面に反射し波の打ち付ける心地いい音が場を支配した。 その中で氷雨達女組は持参した水鉄砲で波打ち際で遊んでおり、 その様子を鼻の下を伸ばしながら海パンを履いた長谷川が鼻息を荒くしながら見ていた。


「あー、全員ビキニか。こう、恥じらいを知らない乙女みたいなものだな」


ブルーシートの上にパラソルを指して固定した空間で目の保養と言わんばかりにマジマジと見ていた。


「そぉれ!! この、避けるんじゃないわよ!」


黒の三角ビキニを着こなし、抜群のプロモーションを誇る氷雨は動くたびに胸が揺れていた。 改造を施した水鉄砲から放たれた水は一直線に結衣の胸部に掛かっていった。


「きゃっ、もうお姉ちゃんってば!」


結衣は白の三角ビキニを着ており、氷雨と同じく抜群のプロモーションを誇っているのでこれも動くたびに胸が揺れており長谷川にとっては非常に眼福だった。 結衣も負けじと水鉄砲を二丁持ちで可愛らしく撃っていた。


「こういうのは初めてです……」


たどたどしく水鉄砲を握っているのはアイラだった。 ピンクと白の柄ワンピースタイプの水着で年相応といった雰囲気が出ている。2人の勢いに押され気味で水鉄砲を遠慮がちに2人に向けて撃っていた。 そんな微笑ましい光景を長谷川は目に焼き付けており、非常に満足していた。


「やっぱ夏はこうじゃなくっちゃな」


「ちょっと長谷川さん?」


不意に呼び止められた長谷川が振り返るとそこには遍在した氷雨が居た。ビキニの上に薄い上着を羽織って。


「なんだ氷雨。 話があるのか?」


「いえ大した事じゃないわ。今後の事について……」


「……あいつらももう超越者だ。 言わなくても分かるだろう。 俺達は理を超越した。だが世界に縛られたままだ。 おかしいよな。 世界を超越した筈なのに世界に縛られたままなんだ。 『苦悩』が関係してるんだよ。 俺はその苦悩を取り除きたい」


苦悩しない為に超越者になった筈だった。けど今は逆に超越者になったが為に苦悩していた。 長谷川はそれを吐露した。 長谷川は嘆息すると氷雨の頭の上に手を乗せる。


「心配すんな氷雨。 俺達の力は無敵だ。 どんな敵も倒せる。 どんな強大な敵が居ようとも倒せるんだ」


自分に言い聞かせると氷雨の頭を支えにして立ち上がる。


「気安く触んな変態」


立った途端に氷雨の頭に乗せていた手を払われるがそれはさして気にしてなかった。 氷雨を一瞥すると驚愕と恥じらいと怒りが入り混じった複雑な表情をしていた。 見ると自分の股間が盛り上がっていた。


「……まぁこんな近くに美少女が居れば勃っちゃうわな」


ちょうど氷雨の顔間近だった事もあり氷雨の顔に青筋が浮かんだ。


「この……! ど変態!!」


氷雨の渾身の一撃が長谷川の股間にクリーンヒットしたと思ったが綺麗に躱された。


「タツヒコとジェットスキーしてくるわ!」


そう逃げるように飛び出すと異空間からジェットスキーを召喚しジェットスキーにタツヒコを括り付けて猛スピードで海上を駆けて行った。


そんなちょっとした、些細な日常をシルヴィアは呆れながらも楽しそうに見ていた。 ひとときの日常を精一杯謳歌するように日が暮れていった。







広大な空間に聳え立つのはカーペットの敷かれた階段とその最上位にある荘厳なる玉座だった。 その玉座に座るのは流れるような青い髪の少女だった。 何の変哲も無い純白のワンピースすら神々しさまでも感じる程の美貌。 流れ出る雰囲気が、格が、少女を王のように厳格にしていた。 その玉座で冷徹なまでの青の瞳が映し出すのは大罪のルティナだ。


「シルヴィア達に手を下すのは私の役目だったんだけど、警告しなかったかな? 大罪のルティナ」


凛とした声音が玉座の間を支配する。その声音を受け取ったルティナは鼻で笑う。


「まさか。 ボクは彼らを見返したい。 その障害となるならボクは(きみ)を喜んで殺そう。神王リヴァイアサン……」


ルティナの殺気が空間を支配する。 リヴァイアサンと呼ばれた少女は眉1つ動かさず淡々と告げた。


「世界を管轄する(わたし)を殺す? 驕らない方が良い。 ルティナ、君に私を殺せるとでも?」


突如として溢れ出る膨大な量の神の力。 それは彼女が神々の絶対の王として示す強大無比な力だった。 ルティナは嘆息で返事をすると肩を竦めた。


「流石神王とだけ呼ばれるだけはある。 が、純粋な神でない君は奪った猫神の力で擬似的な全知全能を持ったに過ぎない哀れな神だ。 リヴァイアサン、君は超越者を知ってるか?」


ルティナの姿が大人びた美女に変貌する。 神剣具現化をしたのだ。手には神に対して絶対的な殺害権限を誇る神剣ベルフェゴール。ルティナの言葉にリヴァイアサンは眉を吊り上げた。


「超越者……? それは初耳だ。けどルティナ、君はただの魔人に過ぎない。ただの魔人が神にどう勝つ?」


リヴァイアサンの返答にルティナは落胆を表情に出した。


「やはり君は造られた神(・・・・・)だ。 今の君がボクに勝てるわけがない。 全力で行かせてもらう」


そう言ってルティナは七罪獣の力を行使してリヴァイアサンと激突した。 玉座の間が消し飛び、世界が書き換えられた。


「同じになるわけ無いだろ?リヴァイアサン」


嫉妬の性質を持つルティナがベルフェゴールを振るう。 改変された世界という例がある以上、その例と同じにならないのが嫉妬の性質の強みだった。


「君がボクに抱く全ての感性が統一されない。 瞬間瞬間に変わり続ける。 二度と同じ感性を抱くことはない。 ボクは他者であり続ける」


嫉妬……ただそれだけで世界の改変も操作も効かない。 他者の望んだ力や結果が自分の力となる。自己に無いものを望み続ける永劫の嫉妬はリヴァイアサンの表情を歪めさせるには十分だった。


「ルティナ……! 君は何者だ!?」


「何者であってほしい? ボクは何者にでもなれるよ。 君が望んでも望まなくても……他者の理想とする存在がボクだ。 同時にリヴァイアサン……君もボクの1人だ」


リヴァイアサンの額が縦から裂けた。 しかし突如空間が割れてその中からリヴァイアサンが姿を現わすがルティナは失望を隠せなかった。


「既に超越者としての力は得ている。君では力不足だ。リヴァイアサン……」


ベルフェゴールがリヴァイアサンの喉に突き刺さり、神性を宿すリヴァサンは即死した。 再生する事も復活する事も無い。


「神と言えどもこの程度か……」


「遅かったですか」


不意に聞こえた声にルティナは振り返る。そこには褐色の肌を持つ銀髪の少女が立っていた。 少女はルティナを見ると微笑んだ。


「ああ……君がこの次元世界を管轄する超越者であり門して鍵である存在か」


ルティナは一目でその存在を看破する。 少女、サラは微笑を崩さなかった。


「流石ですね。 今の貴方は危険過ぎる。ここで消しておくのが妥当でしょう。お姉ちゃん達に会わせる訳にはいかない」


サラの言葉にルティナの眉がつり上がる。


「なるほど。君のお姉さん達がこの全ての世界を管理している存在か。 面白い。是非とも会ってみたいね」


ルティナの発言に露骨に不快感を露わにするサラ。


「私は彼女達が人間の頃から知ってますが、貴方のような矮小な存在が不用意に近付いたらどうなるかというのは嫌という程見てきました。そして、彼女達を守る為に私がいる……。今すぐ消し飛ばす!!」


サラは超越者の権能をフルに使いルティナを消そうと試みた。 が、ルティナにその一切を無力化されてしまう。


「世界改変程度でボクを殺せるはずないだろ? 死の概念そのものでもあるボクは絶対に死なない」


「つっ……! "優先事象"」


サラは全ての事象を最優先にさせて自らの優先度を高めルティナに勝ろうとしたがこれも看破されてしまう。


「ふふふ……もう飽きちゃった。 ばいばいサラちゃん」


心臓に穿たれた剣を抜きながら血を振り払う。 崩れ落ちたサラの髪を掴んで引きずりながら歩き出す。


「良い餌が見つかった。 これであいつらをおびき出すとするか」


(ごめん……なさいお姉ちゃん……私、)


サラは薄れ行く意識の中で己の無力さと不甲斐なさを呪った。


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