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金剛時代  作者: 金椎響
第二章 ウラルに吹く風
7/20

深き谷

 庭から階段を上り、ドアを開けるとグラディスの微笑が出迎えた。

 傍から見れば、本当に美しい女性だ。とても小銃片手に戦場を駆ける人には見えない。人は見かけによらないということを痛感する。美空とジョアンナはゆっくりとした足取りで部屋に入り、自分の席に戻った。


「それで、話はどういった方向でまとまったのかしら?」


 ティーカップを片手に微笑んでいるグラディスに、ジョアンナは静かに言う。


「ギフォーズさん、どうやらあなたはわたしたちと建設的なお話ができそうね。だから、いくつかの点で協力してほしいんだけど、どうかしら?」

「ええ、喜んでお引き受けしますわ」


 はたして、グラディスは満面の笑みを浮かべて頷く。

 ここまでのところは想定の範囲内で物事が進んでいると言える。だが、ジョアンナの言った通り、本番はここからだ。美空もまた緊張で背筋が張る。話の成り行き次第ではひと悶着あるかもしれない。


「要件を聞かずに安請け合いされても困るんだけどね。……まぁ、いいわ。まず、訊きたいのはみっつ。米国側の裏事情、“金剛のエスト”の開発の裏側、美空のことをどう捉えているのか」


 グラディスはどこか満足そうにして答えた。

 まるで、期待していた通りの問いかけに嬉しそうにする教師のよう。そのグラディスの仕草に、ジョアンナはどこか気に食わなさそうな顔をしていた。


「米国側、と言っても、彼らは一枚岩じゃありませんわ。それゆえ、言っていることとやっていることは往々にして一致していません。米国諜報軍(インテリジェンス)とCIAが相変わらず醜い縄張り争いをしています。“コムニオゲート”以来の、因縁の対決、というやつですわ」


 カップを置くと、やれやれといった具合にグラディスは大仰に両手を掲げた。

 それはつまり、この事態は流動的で、どんな方向にも転びうるということだ。美空の期待通りになるかもしれないし、美空が思ってもみなかった状況に陥るかもしれない。


「“金剛のエスト”に関して、米国側からの事前の情報提供はありませんでした。そこで、本国は独自の諜報網を使って情報入手に努めています。旧AEO時代に、老原(おう)が作らせたシリーズの、元始(げんし)の一機と言われていますが……。残念ながら、まだ確証を得られていません」


 グラディスは紅茶を飲み干すと、手を挙げて合図する。すると、隣の部屋で控えていたメイドが継ぎ足す。作業が終わると、メイドは足早に退出した。グラディスには紅茶を味わう余裕がある。

 逆に、今のジョアンナは駆け引きに夢中で、そして美空はこのふたりのやりとりを黙って見守るしかない。

 じれったいけれど、仕方がない。今の美空にはこの一枚上手な淑女を相手に口で言い負かすことはできない。ここは役割分担だ。現に、ジョアンナは今のところ、うまくやってくれている。美空はどうしても見過ごせない点にだけ、口を挟めばいい。


「美空さんの件についても不明です。そもそも、美空さんが“金剛のエスト”を得た経緯についても、知る者は限られているようです。米国諜報機関群インテリジェンス・コミュニティの秘密の合同会議では、名前が伏せられていたとか。現在、本国は事実関係を確認中です」


 グラディスは滔々と語る。


「……あの」ついに重い口を開ける美空。

「あら。どうかしましたの、美空さん」

「いや、それでグラディスさんはわたしたちに何を望んでいるのかなって……」


 美空の何気ない一言に、ジョアンナも真剣な表情になる。

 グラディスは一瞬だけ真顔になって、それから普段通りの笑顔に戻った。


「わたくし個人の望みは美空さん、あなたが手に入れた力を正しく使うこと。それに尽きるでしょうね」


 予想だにしない回答に、美空もジョアンナも目を見張る。

 てっきり、様々な要望をぶつけられるとばかり思っていたからだ。

 だが、改めて言われてみると、“金剛のエスト”を正しく用いるということは、かなり難しい問題だ。

 決して、こうなることを望んでいたわけではないが、それでも無力な自分ではなく、力が欲しいと願った。

 だからこそ、美空には責任があるはずだ。

 この力を正しく、適切に、より多くの人々から理解されるよう使う責任が。


「まぁ、本国は“金剛のエスト”の軍事機密情報が喉から手が出るほど欲しいでしょう。手に入るものならば、それこそあなたたちを排除してでも入手せよだなんて考えているのかもしれません」


 グラディスのあまりに明け透けな言葉に、美空はつい身構えてしまう。

 グラディスもその心中を察してか、手で制す。


「ただ、それはわたくしの個人的な心情とは相反しますわ」


 グラディスは目を瞑る。伏せた瞼から漂うのは、美しさと悲しさ。そこに、美空は彼女が歩んできた道をなんとなく想像させられた。どこか掴みどころがない彼女だが、心のシグナルはそこかしこから出ている。

 グラディスは、言葉を絞り出すようにして言う。


「老原動乱時、諜報合戦でも多くの血が流れましたわ。しかも、その多くはナショナル・インタレスト――国益という加速する国家の欲望の代償として、ね。大義などなく、それはもう正義の欠片もなく。本当にそれが利益になるかだなんて、これっぽっちも考えもせずに。それはただ膨れ上がり、そして蔓延(はびこ)っていた」


 グラディスは意味深長な顔つきになり、遠くの風景を見据えた。


「悲しい、悲しいことですわね。ただ、わたくしは同時に知っているのよ。こんなことはもうたくさんだ。そう思う人たちが純粋な、そして善なる心、清き魂から過激な主張な行動を取ってしまうということも」


 美空とジョアンナが黙ってグラディスの言葉に耳を傾けていると、不意にグラディスはおかしそうに笑い出す。

 唐突な笑い声を上げる目の前の女性を前にして、面を食らったふたりは思わず顔を見合わせる。


「アンはともかく、美空さん。あなたはもう少し人を疑うということを知ったほうがいいわね。特に、この業界では嘘と欺瞞で満ち溢れている。美辞麗句を一皮向けばそこに広がっているのは地獄絵図、そんな世界なの。だから、わたくしの吐露も話半分でいいのよ」


 やはりね、という感じで肩を竦めるジョアンナだが、美空はそう言って微笑むグラディスの言葉をどこか聞き流すことはできないと感じた。

 戦場(いくさば)で小銃を構えたときの狩人(かりうど)のような怜悧(れいり)な横顔と、まるで少女のように陽気で朗らかな二面性を持った女性、それがグラディス・ギフォーズなのだと美空は思った。



 ロシア国境の地は、人家も疎らでどこか寂しい気配に満ちている。

 ロシアを南北に縦断する、ウラル山脈。

 ユーラシア大陸をヨーロッパとアジアに分かつ自然の境界線。石炭紀後期にできた古期造山帯で、現存する山脈でも最も古い。平均標高は九〇〇から一二〇〇メートル、最高峰は一八九四メートルにも及ぶ。

 原生林が広がる一方で、侵食が進んで豊かな鉱物資源が剥き出しになっている場所もある。そのなかにはベリルやトパーズといった宝石の原石の姿もあった。美空はあれを全て拾っていったら一体いくらになるだろうか、と現金にも思った。


「本当に、こんなところに人がいるのかしらね」


 ジョアンナはずっと不満げだ。

“金剛のエスト”を乗せて運ぶために、空軍基地から旧式のトランスポーターを借りるまではよかった。

 だが、肝心の美空は大型特殊車両を運転する免許証の(たぐい)を持っていなかった。なので、ここまでの道中をずっとジョアンナがステアリングを握り続けている。

 車幅の問題から距離を短縮できる山道を使うことができず、そうなると自然と走行時間は伸びた。ジョアンナの集中力も限界に達した感がある。


「どこかで一休みできればいいのにね」


 美空は周囲をゆっくりと窺う。

 ウラル山脈は並行する小さな山脈群からなり、東経六〇度の経線に沿って連なっている。ウラルスタン北部からロシアの北極海沿岸まで伸び、その長さは約二五〇〇キロにも達する。


<ご安心を。合流地点はまもなくですわ。もう少しの辛抱を>


 ダッシュボードに置いた無線機から、トランスポーターを先導する四輪駆動車に乗るグラディスから連絡が入る。


<美空、車道を見下ろす複数点の岩場の陰に、隠れながら移動するいくつかの人影を捉えています。詳細な走査を行い、的確に状況を判断するためにも、トランスポーターから発進したいのですが、いかがしますか?>

「……えっ!? うっ、うーん」


 美空は逡巡(しゅんじゅん)する。

“金剛のエスト”は美空たちにとっては切り札だ。みだりに使っていいカードではない。

 だが、今の美空には、現在の状況を正しく把握して、懸命な判断を下す自信がない。

 グラディスが本国の圧力に屈して反旗を翻す恐れはある。しかし、美空にはこの懐疑を裏付ける証拠を持っていない。だからこそ、“金剛のエスト”を出すべきか。何かを選ぶとき、決断するときに、情報は選択肢を広げる。


「だめ、かな。今、オデッサを出すと話が(こじ)れちゃうかもしれない。グラディスさんが裏切る確かな兆候があるまでは、なるべく穏便に」


 今の美空は世界から追われる危険人物だ。日本には玲花や友達たちがいるし、今隣にはジョアンナがいる。“金剛のエスト”と“力の剣”は奪われてはいけない。それに、ODESSAには目的がある。だから、ここで全てが潰えることになってはならない。

 そうだ、美空は慎重に選び取らねばならない。助けるために、助けられるために。みんなが笑って暮らせる、そんな世界を生きるために。今はいない人の想いや言葉を胸に。そのためにも、美空はしっかりしなくてはならなかった。


<承知致しました、美空。では、共焦点光・複合センサー走査プロープ装置を用いて、機体をトランスポーターから出さずに周囲の状況を判断します。この手段ならば、謎の第三勢力も、グラディス・ギフォーズもいたずらに刺激しないと推察します>

「そうだね、それが一番いいと思う」


 ODESSAは戦術データ・リンクからトランスポーターのシャッターを操作し、微かに開けた隙間から、触手のような情報収集装置の先端を出す。

 美空はODESSAに自身の判断が正しかったか訊こうとしたが、迷って結局口を開かなかった。美空にできないことをODESSAが行うのは仕方がないかもしれないが、何事もODESSA頼りでは困る。美空が選び、美空が決断して、美空が背負う。


<移動物の存在を確認しました。移動目標の追尾を優先し、合成開口レーダーモードからドップラー・レーダーモードに切り替えます>


 ドップラー・レーダーモードは高速な走査可能だ。

 精度の高いビームを発振できるレーダーと得られた情報を処理する高性能情報処理システム――陸上移動目標表示機能(GMTI)能力で、肉眼では到底判別できないような小さな点を浮かび上がらせる。


<美空、やはり岩陰に人が潜んでこちらを窺っています。そして、崖の窪みに未知のFHDを確認。ただし、即時に戦闘可能な状態ではなく、どうやら投棄されている模様です。敵味方識別装置(IFF)では敵性判定です。所属は“クラスト”>

「ええっ、“クラスト”ッ!? なんでこんなところに」


 その言葉に過剰に反応して、つい周囲をきょろきょろと見回してしまう。

 当然、一年も経てばその残骸はパッと見ただけではわからないだろう。でも、美空はできれば自分のこの目で見てしかと確かめたかった。それが無性に悔しい。


<現時点では情報が不足しているため、原因を推測できません。しかし、地形に人為的な陥没や溝など複数の痕跡があります。どうやら、以前ここが戦場となったようですね>

「……ここで戦ってた“クラスト”が、負けた?」


 通常兵器では穴どころか傷ひとつつけることさえかなわないエリジウム鋼製の兵器が壊され、残骸になっている。しかも、それはたとえ機能を失っていたとしても、厳重に管理されていなければならないはずだ。それなのに、回収もされることなく、こんな辺鄙(へんぴ)な場所に、無造作に打ち捨てられているだなんて。

 欠片(かけら)の知識のない美空にもわかる。これは変だ。何かがおかしい。


<美空さん、わたくしもこれから会う相手のことはあまり信用しておりませんの>


 トランスポーターのダッシュボードに無造作に置かれていた無線機からノイズ雑じりにグラディスの言葉が発せられる。


「グラディスさん……」

<ただ、“虚ろなホロウマン”のかわりに現れたあなた、美空さんにぜひ会いたい。そう先方は言うの>

「……先方?」

<ええ、“虚ろなホロウマン”の身柄を確保する当初の目的を果たすための、われわれの協力者ですわ。ただ、彼らはわたくしと同様、本国や国際秩序とは別の思惑を持つ、不確定要素です。米英と協力としたのは単なる利害の一致、相互不干渉のため>


 そこで、先ほどまで運転に集中していたジョアンナが露骨に眉を(ひそ)める。


「ちょ、ちょっと! まさか“虚ろなホロウマン”のかわりにわたしたちを手土産に、差し出そうって言うんじゃないでしょうねっ!?」

<まさか。わたくしはこう見えて我が身大事なの。そんなわたくしが、爪の甘い自殺行為を取ると思って? さっきから美空さんが白い巨人さんに内蔵されているソフトと話し合ってるのは、すでに存じ上げておりますわ>


 ころころと無邪気に笑うグラディス。


「それよりもグラディスさん、ここに捨てられてる残骸は“クラスト”のですよね!?」

<あら、やはり見る人にはわかるんですのね。さすがは老原動乱の英雄。そうですわよ>

「……やっぱり。どうして、こんなことに?」


 顔が強張る美空。無線機は刹那の間沈黙して、すぐにグラディスの言葉を(つむ)ぐ。


<それは、一年前の動乱のさなか“クラスト”がここを大挙して襲い掛かり、そして返り討ちになったからですわ>

「……そんなっ!?」


 初めて“クラスト”のハサミを持つ巨体に襲われて壊れていく街を、美空は今でも鮮明に覚えている。

 あのとき、敵はあまりにも強く、こちらは美空が駆けつけるまでは明らかに劣勢だった。

 その“クラスト”が負けた。

 そして、機体を回収する余力もなく、退散した。美空は動揺を隠せない。グラディスが優位な関係を築くための、欺瞞情報だろうか。いや、違う。

 美空は知っているはずだ。毒をもって毒を制する。なぜ戦いの渦中に自分が見出されて、そして戦わねばならなかったのか。それは強大な敵に対抗する手段がたったひとつしか残されていなかったからだ。


「“オリハルコン”――いやエリジウム鋼」

<かつて、中央アジアはその覇権を巡って大英帝国とロシア帝国が熾烈に争っておりました。グレート・ゲーム、そのなかでイギリスはこの地に住むある部族と同盟的な関係を保ってきました。FHDという人型機動兵器が生み出されるよりもずっと前のことです>


 前方を走っていた四輪駆動車がようやく止まった。

 そこで道は途絶えていて、その先は山と山の間、深い谷になっている。車高の高い車両が動いているときは気がつかなかったが、そこだけ雑草が生えていない。おそらく、獣道になっているか、人が定期的に行き交って自然と道になっているのだろう。


<老原翁の息子、老原清志が“オリハルコン”の人体実験を決断したのも、その先例があったからです。彼は決して蛮勇ではなく、実験のリスクが低いということを知っていたのですわ。なぜなら、彼は以前この地を訪れて、その危険性が小さいことを確信していたからです>


 美空たちも防寒着を手に車外に出た。

 日本とは桁違いの寒さに、美空の吐く息も白くなる。視界の遠く向こう、連なる山脈の尾根に野生だろうかヤギの背中が見えた。ヤギはこの寒さにも負けず、軽快な足取りで斜面を駆け上がっていく。


「そして、“クラスト”は世界のエネルギー秩序の変革をお題目に、莫大な量のエリジウム鋼を欲していました。赤津義正や山都竜人といったエース級こそ欠いていたものの、数を揃えた“クラスト”はここを急襲して……そして敗れました。本国が秘密裏に開発していたFHDの原形とここの部族を使用者(シンカー)とする防衛部隊に」


 グラディスの言葉に、隣に寄り添うように立っていたジョアンナの表情が露骨に曇る。


「ねぇ、美空。ちょっと雲行きが怪しくない?」

「……だよね」

「不意打ちに遭うかもしれない。それに、たとえその部族に敵対的な意思がなくても、その部族とグラディスたちの抗争、政治的な駆け引きの場に引きずり込まれたかもしれない。彼女があたしたちをダシにしてね」

<問題はありません、美空>


 ODESSAがコントロールギア・リング越しに語り掛けてくる。


<そちらの動向は随時、こちらで把握し未来予測に照らして分析しています。グラディスや他の勢力に、危害を加えるような危険な予兆が現れた際には、戦闘(コンバット)モードの“金剛のエスト”で駆けつけるつもりですので、ご安心を>

「だってさ、アン」

「……でも」

<それに、ここに訪れることもまた、わたしの希望だったのです。今ここで胸の内をおふたりに明かすことができないのは不誠実ではありますが、ここはどうかこのODESSAを信じてください>

「オデッサの、希望……」


 若い女性の人工音声に、ジョアンナは顔色を悪くして美空に詰め寄る。


「ねぇ、信じていいの? こいつはあたしたちふたりの命を預けるにたりるの?」


 痛いところを的確に突かれて、美空はすぐに反論できない。


「こいつは、あたしたちの仲間なの? 味方なの?」


 そうだ、ODESSAの目的がなんであるのか、まだ美空は知らない。

 ODESSAと利害が相反するかどうか、そもそもその判断材料すら今の美空には持ち合わせていない。


「アン、あなたの言ったことは正しい。本当に、正しいよ。わたしはまだODESSAと出会ったばかりで、どれくらい信頼が置けるのか、本当にわたしたちの側なのか、実はまだよくわかんないんだ」


 あまりに率直な美空の言葉に、ジョアンナは肩を怒らせたように見えた。


「でも、オデッサは言ってくれたんだ。『わたしがあなたを助けましょう』って。助けたかったときに、助けられたかったときに」


 そう言って微笑む美空に、ジョアンナはなんとも言えない複雑な面持ちになって黙り込む。


「だから、わたしはオデッサが手を貸してくれたように、手を貸したい。わたしを助けてくれたように、オデッサを助けたい」


 はたして。美空の言葉に、ジョアンナは顔を両手で覆う。そして溜息というには大きすぎる、そんな溜息をついて笑う。いや、強張った表情を弛緩させた、と言うべきだろうか。


「……どうやら、こいつは大きな賭けになりそうね。でも、いいわ。この話、乗るわ。どうせ、今のあたしには美空と一緒にいるしかないんだしね。ごめんなさい、らしからぬ弱気だったわね。でも、これで覚悟はしっかりできたわ。だから……」


 ジョアンナは美空の手を取ると、力強く握り締める。


「ちゃんと責任、取ってよね」

「うん、もちろん。約束するよ」

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