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夏色  作者: 砂沙
7/9

夏色*.・第7章・.*

『成美!』

私が目を覚ましたのと同時に母が抱きついてきた。

『お母・・・さん?』

『成美ね、和也くん家で倒れていたのよ?!』

和也・・・・・・・?

『か!和也のお母さんは?!』

『大丈夫。今は違う病室で眠ってるはずよ。』

『どこの病室?!』

『305だけど・・・成美、あなたまだ冷静にしないと・・・看護婦さんよんでくるから』

母は病室を出て行った。



数分後。

看護婦に許可をもらい和也の母親のいる病室に言った。

病室に入ると窓際のベットで和也の母親は外を見ていた。

『おばさん?』

『成美ちゃん』

『大丈夫ですか?』

『ええ』

『・・・・・っあの・・・』

<どうしてあんなことを・・・>



聞こうと思ったがいざとなると声が出ない。

すると和也の母が口を開いた。

『なんだか、外の空気が吸いたいわね、屋上で話しましょ。』

私は和也の母親に手をひっぱられ屋上に行くことにした。




屋上につくと、フェンスに手をかけ和也の母は話し始めた。

『成美ちゃん、私もうだめだわ』

『・・・・・・え?』

『和也とお父さんがいないと何にもできないのよ。』

『そんなっ・・・でも・・・おばさんは死んじゃだめだと思います。』

『成美ちゃん?』

『だって、だって、おばさんがいやだって思ってた和也がいなくなってからの日々は、和也が過ごしたかった未来だし・・・えっと・・・だから・・おばさんは、和也やおじさんの分まで生きて、楽しまなきゃ・・・・あ・・・・あれ?あたし・・・なに言ってるんでしょう?』

『ううん。それじゃぁちょっとだけ、生きてみようかしら』

『ちょ・・ちょっとじゃないです。ずっと生きて下さい。約束です!』

私は無理やり和也の母の小指をとり、指きりをした。

涙ぐんでた和也の母親は少し微笑んだ。



『成美ちゃん。渡しそびれてたんだけど、これ。』

和也の母は少しすると小さな袋を取り出した。

『和也のポケットから出てきたみたいよ。帰ったらあけてね』

私はこくりとうなずくとそれをポケットに入れた。




退院の許可がようやく出た。

家に帰ると私はさっそく和也の母からもらった袋を開けた。

きれいな袋だけど、ところどころ黒ずんで、破れている。


袋をさかさまにして、手で出てきたものをうけとめた。



涙が出た。



私の手の中には、シンプルな指輪があった。

シルバーで、ハートが規則的に彫られていた。

私は左手の薬指にそれをつけた。窓から射す光に反射してキラキラしてる。

『きれい・・・・』

和也 和也 和也・・・・・

『見てよ・・・すごい綺麗じゃん・・・』

そのあとはただ泣きじゃくった。


その時



<コンコン>


『成美!成美!』

お母さんが呼んでる。

『どうしたの?』

私は涙をふきながら答えた。




『それが・・・和也くんのお母さんが!!!!!』


胸がざわめく。

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