夏色*.・第1章・.*
君が大好きだったよ。
君のにおいも 温もりも 優しさも 可愛さも
全部だいすきだったよ。
あれからもう3年が経つね―・・・
*.・1章・.*
『成美ー!』
いつもの昼休み、いつもの教室。
駆けてくる君。
私の名前は斉藤 成美
高校1年生だ。
そしてさっきから犬のように私にへばりついているのが伊藤 和也
同じく高校1年生だ。
私達は入学してすぐ恋におちた。
今では誰もが認めるカップルらしい。
『成美っ成美っ今日も一緒に帰ろうなっ』
『どうしたの?いつもそんなこと言わないのに・・』
『今日は絶対一緒に帰りたいんだよぉ』
いつもに増して和也は子犬みたいな顔をして私を抱きしめた。
子どもみたいに無邪気だけど、体はちゃんと男の子で、とても温かい。
そんな和也が大好きだ。
ずーっと・・・一緒にいたいと思っている。
放課後。
校門の前で和也はそわそわとしながら私を待っている。
『和也ー!!』
私は大きく和也に手をふった。
和也はにっこりと笑うとまた、大きくふりかえした。
そして私の手をにぎり、歩き出した。
『成美の手ぇ、いっつも冷たいな。』
『和也の手はいっつもあったかいね。』
『そりゃ夏だもん。あったかいだろ。』
『あれ?ホントだ・・・じゃぁなんでアタシつめたいのかな?』
『心が冷てぇんじゃねぇの?』
『ばかっ』
こんなバカっぽいいつもの会話。なにもないただ幸せな日常。
通り道の土手で、私達はごろんと寝転んだ。
『あっ』
和也が何かを思い出したように起き上がる。
私もつられて起き上がると和也は私に手で目隠しをした。
『・・・?なに・・・?』
『ちょっと目ぇつぶってて。』
和也は目をつぶる私に軽くキスをした。
首になにか冷たい感触がある・・・・
私は目を開け、首元を見た。
すると、シルバーのハートがついたネックレスが首にかかっていた。
『これ・・・・』
『俺、成美のこと大好きだから、なんかあげたくて・・・』
『いきなりすぎる・・・』
いつの間にか涙がこぼれてきた。
『ご・・・ごめっ!?嫌だった?!』
『・・・ううん。うれしくて、泣いてるの。』
後は和也は黙ったままだった。
そして私をゆるく抱きしめた。
普段はうるさい蝉達の声も、うっとぉしい夏の暑さも、
気にならない。幸せだからー・・・