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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界は存外異常なようで

鼬と能力者の戦闘というもの

作者: ゼタ

一人の少女がこの町で一番高いビルの上に立っていた。

少女の背は低く歳は12前後だと推測できる。

灰色のくすんだ短めの髪は夜風に吹かれるたびに揺れる。

少女は青く澄んだ目で冷酷に町を見下ろしていた。

少女は防弾チョッキらしき服の上から灰色のロングコートを羽織って下は迷彩柄のズボンをはいている。

口元はマフラーで隠されており腰には二丁の銃が収められている。

少女はコートのポケットから端末機を取りだし操作し何かを確認するとビルから飛び降りた。

少女は落下の途中で空中に足をつけるとそのまま空を翔た。










ある日の夜、赤い三日月が町を照らす中、黒いジャージを着た少年がトボトボと歩いていた。

黒い髪は寝癖をそのままにしたかのようにボサボサでかなりの猫背だ。

そして半開きになっている目は赤くて禍々しく輝いていた。

少年の足取りは重く、その進むスピードは幼稚園児に匹敵している。

何故彼が夜出歩いているのかというと彼の妹が来週誕生日であり彼が出歩ける時間が夜だけであり、力が半分戻っているのが今日だけであるからだ。

彼は吸血鬼だ。昼間に出歩くことなどいくら人間に近い時であっても自殺行為に等しい。

普段ならけして家から一歩もいや、部屋からほとんど出ないのだが普段からかなりお世話になっている愛しい妹の誕生日が迫っているためプレゼントをコンビニへ受け取りに行くためこうして夜出歩いているのだ。

4日前にネットでを購入し、サプライズのため受け取り先をコンビニにしたのだ。

彼は通常は日光にあたれない、銀に触れれないことを除けば人間と何も変わらない。

しかし彼はいつからかはさだかではないが吸血鬼になってしまっえいるので吸血を行わないと死んでしまう。本当は毎日飲まなければいけないのだがヘタレな彼に人を襲って吸血するということは出来ず、唯一彼が吸血鬼であると知っている彼の妹から週一で吸血している。

毎日飲んでいないので力は半分程度しか戻らない。もし、人が死ぬほど吸血すれば力は全て戻り、彼一人で軍隊を壊滅させることができるだろう。

逆に吸血力がない場合は小学生にも負けるほどの弱さである。

よって不良などに絡まれたときに対処出来るように吸血を行った今日の夜に受け取りに行くことにしたのだ。


少年以外に人はおらずときたま犬の遠吠えが聞こえる程度でほとんど静寂であった。

夜風がほのかに吹き少年の頬を撫でたその刹那、静寂は消え失せた。

パンッという乾いた音、硝煙の匂い、尻餅をついてしまうほどの衝撃、自らの肉体が何かに貫かれる痛み、流れ出す赤い液体の生温かさ、血生臭い香り、視線の先にある黒い物体、それを握りしめるマフラーを巻いた少女。

そんな情報が頭のなかをぐるぐると駆け回った。

それでも少年は状況を把握しきれていなかった。

今まで味わったこともない痛みで痛み以外なにも感じられないのだ。

ぽっかりと空いた右胸の穴はほぼ塞がっている。

それと同時に痛みも引いてきて通常と同じ思考をすることができるようになる。

そこで少年は疑問に思った。

いつもなら完全に塞がっていてもおかしくはないのだが完全に塞がっていない。


「突き抜けた…か」


少女は呟き銃を少年に向け銃弾を打ち出そうと構える。

混乱からとけた少年はそれを見て瞬時に立ち上がると吸血鬼の力を使い全速力で飛び住宅の屋根を駆け、逃げた。

その早さは落下するときの隼に匹敵する。

しかし二件目の家の屋根に足をつけたと同時に腹に衝撃がはしる。

彼の鮮やかな赤い瞳にはマフラーを巻いた女子が写っていた。

吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる瞬間に少年の頭と足に銃弾が叩き込まれる。

それはまたも彼を貫いた。


「運の良い奴」


少女はまた呟くと物凄いスピードで彼に迫る。

それを間一髪で避ける少年。

頭も足も既に回復はしている。

しかし痛みが恐怖に変わり冷静ではいられなかった。

確実に負ける、殺されるとわかっていたのだが少女に殴りかかる。

少女はそれに対して銃弾を少年の右腕に叩き込んだ。

今度は貫くことなく少年の右腕に埋め込まれた。

瞬間に回復する。

そう思った少年だが異変に気づく。

傷が治らないのだ。

いや、むしろ傷が広がり痛みも強くなっていく。

少女は痛みで泣き出した彼に躊躇なく銃弾を再び撃ち込もうと引き金を引いた。

しかしその銃弾は彼に届くことなく二つに切り裂かれ別々の方向に飛んでいき、少女の目の前に一陣の風が巻き起こった。


「何者だ」


「どうも、オレ、鎌鼬です」


風と共に現れた青年は少女に一礼すると左手を彼の方へ振るった。

すると少年の右腕は綺麗に切断された。

痛みにより泣き叫ぶ少年。

死を覚悟し、心の中で親、そして何より妹に謝りながら涙していると切断面から腕が再生した。


「間に合ったみたいだね」


切り落とされた腕の場所には灰と銀色に輝く銃弾が存在していた。

状況がわからない少年だったが銀色の銃弾を見てあることを思い出した。


銀は吸血鬼の弱点だと


もしあの銃弾が銀で出来ていたのならばさきほど回復速度が遅かったのも青年が腕を切り落としたのも合致がいく。

銀が体内にあれば回復は出来ずいずれは体全てが朽ちて灰に変わっていただろう。


少女はそれを見て青年を敵とみなし発砲した。

しかしそれはまたも青年に届くことなく切り落とされる。

少女は舌打ちをするともう一度発砲し左袖からワイヤーを飛ばし近くの電柱に巻き付けるとワイヤーを収縮させ自身も飛んだ。

その間に二発発砲したがそれも届きはしなかった。

ワイヤーを電柱から外すとブロック塀に着地し青年に迫った。

一発だけ発砲した。

それを青年は右手を振るい切り落とす。

が、それと同時にワイヤーが青年の足に巻きつく。

収縮させながら青年の回りを円を描くように走り

発砲。

体制を崩した青年だったが銃弾が青年を射止めることはなかった。

少女は青年と距離を取るとマガジンを入れ替えそれと五つのマガジンを取りだし、五つのマガジンの中身をバラまいた。

青年はその行動に首を傾げる。

それと同時に少女の澄んだ青い目がくすんだ灰色に変わり目の淵が赤く光った。


「能力者か…っ」


青年はそれを見るとその場から飛び退き風の鎧を纏った。

地面にまかれた銃弾は灰色のオーラ的なものを纏い空中に浮かび一斉に青年に飛んでいく。

全て避けるが途中で銃弾が折り返しまたも青年を襲う。

青年は銃弾の能力を追跡系と判断し鎌鼬で全て切り落とす。

しかし二つに切り裂かれてもなお、青年を襲い続ける。

周りに気をとられすぎた青年は少女の接近に気づくのに少し遅れ銃弾を左腕に叩き込まれた。

青年は仮面を被っており表情は見えないが痛みに苦痛を感じているのは明白だった。

青年の能力なのか銃弾が傷口からこぼれ落ちる。

そして落ちた銃弾は灰色のオーラ的なものを纏い青年に襲いかかる。

切り落とすのは無意味と悟り避ける青年だが少女が銃弾の数を増やすことでそれも難しくなる。

ついに青年はどの銃弾からも逃げることができない状態に陥る。


「これは死ぬかな」


少女が勝利を確信し銃を少年に向けた。

しかしそれが悪かった。


「―――なんてね」


青年は細かい風の刃で出来た竜巻を巻き起こし銃弾を粉々の粒子に変え少女を蹴り飛ばした。


「ぐっ」


青年は右手を少女に向けた。


「組織の者か?」


「……。」


「…殺すぞ」


「ブラッディフラワー」


「最近有名な新手の組織か……任務内容は?」


「吸血鬼の監視」


「ならば何故攻撃した」


「……。」


「まぁ良い」


「手を出さないのであれば見逃す、異論は?」


「……。」


「そうか、ではさようなら」


青年は一礼すると風と共に消えた。

取り残された少女と少女。

少女は立ち上がると少年の方へ歩み寄った。

少年は警戒し構えるが少女は歩みを止めることなく少年の横を通りすぎた。

少年はそれに首を傾げたが危機がさったことに安堵した。

しかし問題はまだ始まったばかりであった。。


「この服装じゃコンビニ入れないよな……ハァ…」


少年は袖がなくなり所々に穴が空き、さらに血がべっとりとついたジャージを眺めつつため息をついた。



青い三日月が照らす町に静寂が戻った。




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