八皿目、 ――そして今に至る 4
竜は、物珍しげに俺の部屋を歩き回る。
お互いにのし掛かったりつっつき合っては、俺に向かってピィピィ何かを訴えて来る。
はたと思い至った。
そうだ、腹を空かしてるんじゃないだろうか?
自分自身の空腹も同時に思い出した俺は、台所へとって返してやや深めの皿を持ってきた。
そこへ牛乳を注ぐ。
赤ん坊なんだから、ミルクが良いだろうと思ってのことだ。
ミルクの皿を竜の前に置き、自分の前にはカレーの皿を並べる。
俺と竜の食卓。
実に奇妙な光景だ。
竜は牛乳に鼻先を近付けて匂いを嗅いだ。
赤い舌がぺろりと白い液体を舐める。
が、俺がスプーンを取ってカレーを食べ始めると、二匹は俄然俺の皿の方に興味を示した。
ルーの匂いを嗅ぎ回り、米を鼻先でつつき出す。
あ、食べた。
米を食べた。
生まれたばかりで固形物が食べられるのか?
もう一匹は遠慮会釈なくルーに頭を近付けている。
「おい、これ辛口……」
追い払う間もなく、ルーを一舐めしやがった。
案の定目を丸くして、ミルクの皿に頭を突っ込む。
がぶがぶと物凄い勢いで牛乳を飲み干し始めた。
いくら竜と言っても赤ん坊に刺激物はマズい気がする。
大丈夫か?
死んだりしないか?