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八十四皿目、 ――カレー曜日 3



そんなことを考えているうちに、スーパーマーケットに着いた。

家の近所では一番大きい店だ。

大概どこでも似たり寄ったりな造りをしているもので、店に入ってすぐは生鮮食品売り場だ。

手前側が野菜で、奥が鮮魚や食肉。


キャベツと大根に特売の値札がついているのをチェックしながら通り過ぎたところで、ダンボールに山積みされたジャガイモと玉葱を見つけた。

ごろごろと袋詰めして籠に入れる。

こういう個数売りは必要な分だけ買えるから有り難い。

ついでに、鮮魚コーナーへ向かう途中の卵が積まれた棚から、Mサイズ十個入りを1パック取る。


角を曲がれば肉売場。確かチラシでは明日の方が鶏肉が安かった筈。

ウインナーの二袋束が二割引になっている。こっちにしよう。


缶詰やインスタント食品の棚を通り過ぎて、調味料売場の横で足を止めた。

いつも使っているカレールーと、他にも何種類かが安くなっている。

特売のポップが付いて、宣伝音楽も流れている。

テレビでよく聞く有名メーカーのCMソングだ。


『好き好き大好きカレーライス!

 今日も明日も明後日も♪ 毎日がカレー曜日!』


無意識に、俺とあいつらが好きな種類を二箱ずつ手に取る。

そのまま籠に放り込もうとしたところて、はたと気付いた。


「……そうか、もうカレー作らなくていいんだ」


皿一杯のカレーを貪るようにがっついていた奴らは居ない。

カレーと聞くと、ぴぃぴぃ騒いで喜んでいたあいつらは、もう居ないのだ。


そこに思い至ってようやく。

本当に、あいつらは居なくなったんだってことを。

俺は心から理解した。


そっとカレーの箱を棚に戻す。



「……今夜は肉じゃがにするか」




こうして、俺のカレー曜日は終わりを告げた。







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