七十九皿目、 ――『 』 8
狐目の指先に噛みつく素振りでじゃれて遊ぶ二匹を見ている間に、ぽつりと、こんな疑問が口をついて出た。
「ほんとに竜なのか」
「証拠見せましょうカ?」
「いや、いい」
どんな?と聞いてみたかったが、懸命にもやめておいた。
どうせ竜の姿に戻るとか、そういうのだろう。
見るまでもない。
クロウとシロウの態度が全てだ。
言葉で確かめておきたかっただけだ。
気分の問題。
事ここに至っては、俺の感情なんかより大事な問題がある。
俺は狐目に問う。
「そいつらをどうするんだ?」
「連れて帰りマス。この子達にはオ勉強が必要でス」
勉強?何を勉強するってんだ?
竜には学校も試験も何も無いだろうに。
「この子達、竜の世界を知りまセン。
私達あまり群れては暮らしマせんが、でもルールはありマス」
ぐりぐりとシロウの鼻先に自分の鼻を押し付けながら、狐目は答える。
それが、竜にとっての親愛を表す仕草なんだろう。
「この子達、竜の言葉モ知りませン。覚えるコト沢山あります」
「誰に教わるんだ?」
「母親達でス。母親と子供だけノ特別な群デ。
子供達少し大きクなったら、母親と群に入りマス。
老いた雌が先生でス。母親と子供達両方ノ」
「子竜もいるのか?同い年くらいの?」
「イます。皆一緒ニお勉強でス」




