表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/101

七十八皿目、 ――『    』 7



圧倒的存在である竜という身を隠してまで、人間の世界に来る理由があるのか?

もしかして、鹿島みたいな連中は意外と少なくないのかも知れない。


人間の振りをしていた方が、竜でいるより安全というのはそういうことだろう。

しかし、卵だけは擬態できないが故に、見つかって持ち去られてしまった。

有り得る話だ。


会話が途切れた拍子に、狐目がチッチッチッと短く舌打ちをした。

猫の子を呼ぶような仕草で、クロウとシロウを手招く。

二匹は、もぞもぞと鞄から這い出し、飛びつくように狐目に寄って行った。


鹿島の時にはあんなにピリピリしていたと言うのに、狐目に対しては何の警戒も抱いていない。


「おーよしよし、大きくなりましたネー♪」


膝の上に乗った二匹を、狐目はにこにこと嬉しそうに抱き上げた。

シロウは狐目の腕に収まり、クロウは肩によじ登る。

俺にするのと同じように、狐目の頬に鼻先を擦りつけて、一声鳴いた。



「ママー!」「ままー!」



とどめだ。

聞き間違いじゃない。

幻聴でもない。

確かに二匹は、「ママ」と言った。


クロウとシロウが、こいつを母親だと認めた。

これ以上確実な証拠なんか無いじゃないか。


すとんと、俺の肩から気負っていた気持ちが滑り落ちたような気がした。

重い荷物を下ろしたように、何だかやけにすんなりと、目の前の事実を受け入れられる心持ちになっていた。


クロウとシロウは、狐目に腹をくすぐられてはしゃいでいる。

卵の外では会ったこともない筈なのに、それでも二匹にはこれが自分達の母親だと分かるのだ。


不思議だが、人間には分からない――いや、“父親”には分からない何らかのメカニズムが、母と子の間には有るのかも知れない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ