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七十六皿目、 ――『 』 5
「……取り乱しました」
「うん、まあ、俺も意地の悪いこと言ったけど、ちょっとボリュームを下げてくれ」
「ソウですね、ご近所にも迷惑でスし」
勝手に水をもう一杯呷って、狐目はほうと溜息をつく。
「長い間待って生まれた卵デスから、ついカッとなりましタ。
大事に大事に育てタでス。私ノおなかで十年十ヶ月……」
ん?
ちょっと待て。
「今何か変なこと言わなかったか?」
「何がデス?」
「十年十ヶ月?」
「卵できるまでそれくらい掛かりマス」
「おなかで?」
「竜のお母さん、しばらクおなかで卵育てマス。
生んでかラの方が割と早イ」
……ってことは……、
「こいつらが入ってた卵は……」
「勿論、私産んだデス!おなか痛めた子達デス!」
「ああ、なるほど……」
そういうことか、と。
俺の耳が悪くなったわけじゃなかったか、と納得しかけて――
「んなわけあるかぁっ!!」
絶叫した。
生んだ?
生 ん だ ?!
「ってことはお前、メスかあぁぁっ!?」
指差して怒鳴ってしまった。
「失敬な!見れば分かるでショう?」
「分かるか!!」
ようやく狐目の正体が判明しましたw




