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七皿目、 ――そして今に至る 3
小さな頭が、中からヒビをつついている。
鼻先で殻を押し上げ、顔を覗かそうとしている。
コツコツとつつき上げる動作で、殻の穴を着実に広げていく。
そこから爪が覗いた。
あ、頭がもう一つ。
卵の中から、必死にもがき出ようとしている命が“二つ”。
隙間から見える顔は、鱗に覆われていて蜥蜴っぽい。
双子の爬虫類は、あっという間に殻を破ると、そこから這い出して卓袱台の上でのたくった。
もつれてごろごろと転げ合い、首をもたげて辺りを見回す。
まるで、ここはどこだ?と様子を窺っているようだった。
蜥蜴よりはちょっとスマートな体格。
首が長くて尻尾も長い。
そして、背中に小さな羽がある。
羽?
生まれたばかりの爬虫類の片方が、欠伸するように口を開ける。
ピィと甲高く鳴くと同時に、ちろりとマッチぐらいの火を吐いた。
…ドラゴン?
竜?
竜なのか?
竜だ。間違いない。
竜だ。
二匹は前足で立ち上がって大きく伸びをした。
つぶらな目でこっちを見上げて、呆然と立ち尽くす俺に、ピィともう一声高い音で鳴いて見せた。