七十五皿目、 ――『 』 4
取り戻しに来たはいいが、直接行っても埒が明かないから、赤の他人に盗ませようとしたと。
ついでに子竜の餌にすれば一石二鳥で万々歳と。
ふざけやがって。
随分な手の懲りようじゃあないか。
「警察にでも行きやがれ、そういうのは」
「無駄でス。竜、この世界にイナイ。いないもの盗めなイ」
確かに、俺が警官でも竜の卵を盗まれたなんて言われたら、笑い飛ばすかからかうなと怒ることだろう。
「で、それを証明するものは?」
「証明?」
「当たり前だろ!
お前の話なんか、『はい、そうですか』と信じられるか!」
「酷イ!こんなに真摯に話しテいるのに!」
「どの口が言うか、詐欺野郎!」
第一、信じたところで、そもそも何故こいつが竜の卵を持っていたのかの説明にはならない。
大方こいつもどこかから盗んできたんじゃないのか、という俺の疑念は責められるものじゃないと思う。
「どうせ取り返すって話も嘘なんだろ。
お前の方が盗人じゃないって根拠は無いじゃないか」
「この子達は、私ノです!!」
狐目が、急に強い口調で叫んだ。
顔色が青ざめて、握り締めた手が震えている。
「あの卵は、この子達は、私の子デス!
私の大事ナ!ずっト心配して!本当に大切ナ!!」
「分かった!分かったからちょっと落ち着け!」
頭に血を上らせて怒鳴る狐目に、慌てて水を飲ませる。
コップの中身を一息で飲み干し、二度深呼吸して、ようやく狐目は人心地ついた。




