六十八皿目、 ――絆 4
その夜は一緒に布団に入った。
「ほーら、来い来い」
寝転んだ横を空けて呼んでやれば、二匹は喜び勇んで潜り込んで来る。
明かりを消した真っ暗な中で、二匹と一人が頭を並べる。
扇風機の風だけがそよぐ生ぬるい闇に目を開けると、今日の出来事を思い出す。
大変な日だった。
竜のことも、鹿島のこともそうだが、何よりこれからのことに頭が痛い。
「逃げるか……」
鹿島は、また来ると言った。
すぐ明日にもという可能性は低いだろうが、どうせなら早い方が良い。
ここがバレた以上、留まっている理由はない。
これ以上の騒ぎを起こして、ご近所に迷惑を掛けたくもなかった。
今日はたまたま何ともなかったが、次は誰かに目撃されるかも知れない。
いや、誰かを巻き込んで大怪我をさせる恐れもある。
遠くへ行く方が良い。
おいそれとは見つけられないくらい遠くへ。
心当たりは無い。身を寄せる当ても無い。
逃げるにしたって先立つものは入り用で、そっちにも自信は無い。
だが、二匹を助けたいと思った。
どこか遠いところへ逃がしてやりたい。
あんな奴らには捕まらないところへ。
広くて、空が高いところが良い。
竜だから、きっともっとずっと大きくなるだろう。
緑の野原の上で昼寝をして、雲のように高いところを悠々と飛ぶ。
そんな風に育って欲しい。
北海道なんてどうだろう?それとも外国がいいか。
どこへ行っても、こいつらは付いて来るだろう。
隣を見る。
二匹はすっかり寝入って、すやすやと寝息を立てている。
身じろいで寝返りするついでに、シロウがぽつりと寝言を零した。
「……パパ」
シロウに圧し掛かられて、ぱたぱたと羽を揺らすクロウも。
「パーパ……」
俺の枕に顔を埋めて、まどろみの中で笑う。
幸せそうに俺の夢を見る二匹の寝顔を見て、
俺はちょっとだけ泣いた。




