六十七皿目、 ――絆 3
胡坐をかいて座った俺の膝に、二匹がよじ登る。
「ん?どうした?」
交互に、首を伸ばしてぱくぱくと口を開け閉めしている。
何事かを言おうとしている様子だが、声になっていない。
まさか具合が悪いのか?病気か?
それともどこか怪我してたのか?
心配になってシロウの体を抱き上げた時、
「パーパ」
不意にそんな音が耳に届いた。
何?
一瞬思考が停止した。
「……おい、今パパって言ったのか?」
「パーパ!」「パパー!」
クロウまで得意げに俺を呼ぶ。
聞き間違いとか勘違いじゃない。
こいつらは、俺を“パパ”と呼んでるのだ。
「もう一回言ってくれ」
「パパ!」
「もう一回!」
「パパー!」
愕然とした。
疲れなんて吹き飛んだ。
ちょっと本気で驚いて、
かなり本気で感動した。
そんな自分にもう一度驚いた。
俺は、嬉しかったのだ。
胸の中に、じんわりとあったかい気持ちが広がっていく。
そんな自分にびっくりだ。
コミュニケーションが発達したこいつらに、思っていた以上に情が移っていたようだ。
たった二音節の言葉に、これ程心を揺さぶられるとは。
父親っていうのは、こんな気持ちなんだろうか?
こんなにも幸せな気持ちを、感じられるものなんだろうか。




