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六皿目、 ――そして今に至る 2
一時卵のことは忘れるとして、遅い昼飯のために台所に立つ。
鍋を火に掛ければ、温まるに従ってスパイスの良い香りが漂い始める。
腹の虫が鳴く。
保温に勤しむ炊飯器から大きめの深皿に米をよそい、たっぷりとルーを盛り付ける。
食欲を刺激する匂いが鼻腔を満たす。
二日目のカレーって美味いよな。
煮込まれた具とルーが絶妙に馴染んでるのがポイントだ。
温泉卵を乗せたり、チーズやウインナのトッピングもいい。
常ならば目玉焼きの一つも焼いて添えるところだが、今はとにかく早く食いたかった。
福神漬けとらっきょう、水の入ったグラス。
それにスプーンを用意して、卓袱台の方に運ぼうとした、その時――
――パリンッ
何かが割れる音が聞こえた。
固くて脆いものが砕ける時の音。
薄い板のようで、ガラスではなく、もっとこう、陶器みたいな。
俺は隣の部屋に飛び込んだ。音の正体を探した。
原因はすぐに分かった。
割れていた。
卵が。
側面に大きくヒビが走っている。
そこから剥がれた三角形の欠片が、ぱらぱらと卓袱台の上に散らばっていた。
それが意味するところを理解して、俺の背筋に戦慄が走った。