六十六皿目、 ――絆 2
気は進まないが、自分の分のカレーも用意する。
目の前にしてみると不思議なもので、芳しいスパイスの香りを嗅げば多少腹が減ったような気もしてくる。
「いただきます」
「いたアきまゥ」「いたラきまァ」
いつもの食卓風景だ。
がつがつと食らいつく二匹が、あっという間にカレーの山を崩していく。
俺もスプーンを自分の口に運ぶ。
ルーをまとった米を噛みしめ、飲み込む。
肉を取り合って、引っ張り合い転げる二匹を見て笑う。
ちょっとだけ、疲れが取れたような気がした。
後片付けをして風呂で汗を流した後は、すぐに布団を敷いた。
こんな日は、さっさと寝てしまうに限る。
ところが、今日に限って二匹は目が冴えているようだ。
いつまでも玩具の辺りでそわそわしていて、眠る気配が無い。
いつもならこの時間には遊び疲れてうとうとしているのに。
こいつらにも、今日の出来事がストレスになっているのだろう。
また鹿島が来るんじゃないかと思って、不安で寝付けないのだ。
もしかしたら、二匹は知っていたのかもしれない。
卵だった自分達を運んでいたのが鹿島だと。卵の中に居ながらにして。
「今日は夜更かしか、お前ら?
俺は先に寝ちゃうぞ」
枕を定位置に置いて、電気を消そうとしたところで、シロウとクロウが足元に寄って来た。
二対の目が俺を見上げる。
「大丈夫、あいつらは来ないよ。心配するな。
もし来たって、急いで逃げればいいんだ」




