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六十五皿目、 ――絆 1
その後はもう本当に疲れていて、晩飯を作る気力なんてこれっぽっちも残ってなかった。
こういう時、カレーを温めるだけで文句も出ないというのはありがたい。
二匹分の大盛皿を仕度して、卓袱台に置く。
そのまま、俺は座布団を枕にしてごろりと横になった。
何だか食欲も無くて、とにかく休んでいたかったのだ。
が、一旦は喜んで卓袱台に上がった二匹は、何故かすぐに俺の側へと寄って来た。
「ピィ?」「ピ?」
首を傾げて俺の顔を覗き込む。
「何だ?どうかしたか?」
「カレー!」「カレー!」
「カレーならそこにあるだろ」
湯気を立てるカレーライスを指差すも、二匹は違うとばかりに首を振る。
「ピ!」「ピー!」
二匹で俺の袖を咥えて引っ張り始めた。
「こらこら、服が伸びるだろ」
新しい遊びか?
しかし、一向に止める気配はない。
「カレー」「ゴハーン」「イッショー」
何だ何だ?
つまり、一緒に飯を食えと言ってるのか?
「俺は腹減ってないんだよ」
「ダメー」「いッショー」「たベルー」
聞き分ける気は微塵も無いようだ。
「やれやれ、しょうがねえな」
どっこいしょ。




