六十皿目、 ――そして再会 7
「稲生!」
俺を捕まえている方の白衣が、相方の名を呼ぶ。
「相沢、そいつを離すな!」
鹿島が、俺にしがみ付いている方の白衣――相沢とやらに命令しつつ、突き飛ばされて倒れた稲生とやらへ駆けつける。
ちっ、隙が無い。
「主任、捕まえました!」
「でかした!」
稲生の両腕に、クロウが捕らえられていた。
じたばたもがいているが、がっちり抱えられていて逃げられない。
クロウは、すぐさま大きな檻の中に放り込まれた。
ガチャン!と扉を閉められて、鍵まで掛けられる。
「ピィィッ!」
クロウが悲痛な声を上げる。シロウを呼んでいるのだろう。
「シャーーーッ!」
階段の手摺に止まったシロウが、喉を震わせて威嚇の声を放つ。
怒っているのだ。クロウを捕らえた鹿島達に。
そして、口の中に、ちらりと燃える炎が灯った。
「!! 逃げろ!」
鹿島と稲生が飛び退いた次の瞬間、
ゴオゥッ!!
地面から火柱が立ち上った。
シロウが炎を吐きつけたのだ。
火炎放射器よりも巨大な火の塊が、鹿島達の一瞬前に居た地点を襲う。
「あちちっ!」
俺の方にまで熱気がやって来た。
ぶすぶすと煙を上げて、地面が焦げている。
割れて転がっていた盾が、見る影もなくどろりと溶けていた。
金属製の檻がまともに炎を受けて赤熱しているが、クロウは涼しい顔だ。
あんな火を浴びても、平気だというんだろうか。




