五十三皿目、 ――最後の日常 3
白い深皿に大盛りの炊き立てご飯をよそい、トンカツを乗せる。
上からたっぷりのルーを溢れんばかりに掛けて、横にらっきょうと福神漬けを添えれば出来上がり。
俺が皿を持っていくより先に、二匹は卓袱台の上で待っている。
「ィタァキマース」「ッターキマ」
「はい、召し上がれ」
カツを奪い合う兄弟喧嘩の声と俺のスプーンが立てる音。
大きいのは自分のだと取り合い、最後の一切れは自分のだと食いつき合う。
本格的に喧嘩になりそうなら止めるが、大抵最後には半分こして食べているのだから仲の良いものだ。
そしてその仲の良さで、今度は俺のカツを狙い始めるのだから困った奴らだ。
一切れ投げ渡して、二匹が引っ張り合っている間にさっさとカツだけ平らげてしまう。
その後は、早々に米も食らい尽くした二匹が、俺におかわりを要求する。
「オカァリ」「オカヮリー」
そんな言葉まで覚えたか。
「もうカツは無いぞ」
言いながら、俺は二匹の皿に米とルーをよそってやる。
本当に良く食べるもんだ。成長期というやつか。
「大きく育てよ。育ち過ぎない程度に」
「イタキマー」「イタァキマ」
おかわりに顔を突っ込む二匹を尻目に、俺は自分のカレーを片付ける。
俺はまだ知らなかった。
キンダイチが、竜を追ってすぐ側までやって来ていたなんて。
そして、既にこの場所を突き止めているなんてことも。
そして、日常は終わりを告げます。




