五十二皿目、 ――最後の日常 2
帰り道に肉屋によってトンカツを買ってきたのだ。
俺にとってはちょっとした贅沢。
「カレー!」「カレー♪」
好物が待っているとなれば、途端に機嫌も直る。
現金な奴らだ。
「今から作るから、良い子で待ってろよ」
二匹を部屋に残したまま、台所へ向かう。
カレールーの鍋をコンロに乗せながら、米をボールに移して研ぎ始める。
火は弱火で十分、焦げないように時々様子を見つつ。
煮詰まりすぎて水分が足りなければ水を足すが、今回はまだ大丈夫。
同様に、具の方もジャガイモが若干煮崩れているが、まあ許容範囲内。
元々大きめに切ってあるし。
研ぎ終えた米を炊飯器に入れて水を注ぎ、炊飯ボタンを押す。
後は待つだけ。
その間に皿とスプーンを用意し、付け合せのらっきょうと福神漬けを出しておく。
まだ温かいトンカツは、一旦キッチンペーパーの上で余計な油を切る。
それから、包丁で一口大に切る。
米の炊き上がる甘い匂いと、ふつふつと泡立つルーのスパイシーな香りが充満する頃、待ち切れなくなった二匹が顔を出す。
「マダー?」「マダー?」
「まーだだよ」
「……マダー?」「マダー?」
「まだだってば」
ちょろちょろとうろつき回っては、炊飯器の横で炊き上がりの合図を待っている。
まともに蒸気を浴びているのに、熱くないのか?
俺は、ルーが焦げないように時々かき混ぜる。
そのうちピピピッと電子音が鳴ると、二匹が騒いで教えてくれる。
「ピーピー!」「ぴーぴー!」
「はいはい、聞こえてるって」




