四十九皿目、 ――追跡行 4
「あらまあ、あなたのペット?」
「いえ、私のではないんですが、頼まれて探している最中でして」
嘘はあまりつかない方がいい。本当の事と混ぜて、肝心なところだけ誤魔化せばいい。
不都合な情報さえ隠し通せればそれでいいのだ。
婦人は不思議そうな顔をしながらも、見たこと無いわねえ。と答えてくれた。
「あ、もしかしたら、新垣さんなら知ってるかもしれないわ」
「新垣さん?」
唐突に人名が出てきた。
鹿島の知っている名ではない。
「新垣さん家にも大きなトカゲがいるの。
だからもしかしたら、見つけて保護してくれてるかもしれないわ」
「本当ですか!」
思わず、それだ!!と声を上げかけたが、辛うじて飲み込む。
婦人は、鹿島の大声にびっくりして目を丸くする。
「ごめんなさい、分からないわ。もしかしたらだもの」
「驚かせてすみません、もしかしたらでもいいんです。
新垣さんというのはどのお宅ですか?」
「うちの上よ」
婦人が指差して教えてくれたのは、二階の左から二番目の部屋だった。
「ありがとうございます、ちょっと尋ねてみます」
礼を言って、二階に上がる。
表札を確認すれば、“203”という部屋番号の下に、“新垣”と名札が入っていた。
ピンポーン。とチャイムを鳴らした。
返事は無い。数度扉をノックしても、同じだ。
そっとドアノブを回してみたが、鍵は掛かっていた。




