四皿目、 ――後悔役に立たず 4
俺は、キンダイチが小銭の一枚目を投入口に落とし込んだのを確認した。
これで暫くは振り返らない。
ほんの数秒程度だが、それで十分過ぎる。
素早く隣のベンチへ移動し、缶バッジの位置などを写真と見比べる。
――間違いない、このバッグだ。
肩提げ用のベルトを掴む。担ぎ上げ、一目散に走り出す。
右手にズシリとくる重み。大きくて丸いものが入っている感触だ。
俺は、大急ぎでその場から逃げ去った。
キンダイチが煙草を片手に振り返った時には、
もう俺も鞄もとうにそこから消え失せていた。
俺は喫茶店に戻ってきた。
息急ききって店内に駆け込み、窓際の席に狐目の姿を探した。
居ない。
店内を見回すも、他の席にも姿はない。
便所にでも行ってるのか?
……いや、テーブルが片付いている。伝票もない。
居ない?
居ない。
狐目は居なくなっていた。
俺は慌ててカウンターに駆け寄り、店主に尋ねる。
「あの席にいた客はどうした?」
「つい先程出て行かれましたよ」
店主は、グラスを磨く手を止めずに答えた。
「どこに行くとか言ってなかったか?」
「いいえ。でも伝言を頼まれました」
「そいつだ!教えてくれ」
店主は、小さく折り畳んだメモを俺に差し出した。
そこには、暗い赤色のインクでこう書かれていた。
『急用有、鞄預ける』
「ふざけるなあっ!!」
苛立ち任せに手酷く罵ろうとして、俺は奴の名も聞いてなかったことに愕然とした。
こんなのでも、主人公は一応悪人ではありません(苦笑