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箸休め、
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違和感を感じて目を覚ます。
何が、と具体的に言えるわけではない。
強いてあげるなら、“敵”。そんな直感。
泡沫の世界を夢見ていた瞳は、今や完全に現実の世界へと戻っている。
住まいに変化はなかった。
お気に入りの寝床も、小声で二時間ドラマの再放送を流しているテレビも、
半開きの窓から通り抜ける風も、全て眠りにつく前と何ら変わらない。
だが、確かに不快な何者かが近付いてくる気配があった。
すぐ隣で丸くなっていた兄弟をつつき起こす。
まだ眠たげな弟は、不満そうに頭をもたげて一度、大きな欠伸をした。
父は居ない。出かけているのだろうか。
静かな室内には、テレビから聞こえる女優の長台詞がくぐもった音で響いている。
身を一震いさせて寝床を出た。
嫌な感覚は、まだそれ程近くない。
このまま通り過ぎるならば良し。
もしここまでやって来るとすれば、住処と弟を守って戦わねばならないかも知れない。
早く父に戻ってきて欲しいと、そう思った。
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