四十三皿目、 ――再び、B面 3
コンパスと地図も忘れずに持って、部屋を出る。
先日とは別の車に乗り込み、エンジンをかけたところでコンパスを確認。
ゆらゆら揺れていた針が一方向を指して止まった向きを、地図に記録した。
再び繁華街まで車を走らせ、駅前の広場から以前と同じようにまた方角を記録する。
「ふむ、やはりあの辺りなのは間違いないようだな」
先日の地図に記された交点と比べても、然程変化がない。
あの住宅地のどこかに竜がいることは疑いなさそうだ。
コンパスは“あちら側”のものに反応する。
司祭は、半分“あちら側”だ。
故に、先日は針が誤作動を起こして司祭と鉢合わせる羽目になった。
(今日も、というのは御免だ。少し慎重に行こう)
と鹿島は思った。
住宅街に着いた。
近場のショッピングセンターに車を止め、ディパックを担いで降りる。
もっと近くまで車で行きたいのだが、とっさに駐車できる場所がなさそうなので仕方ない。
徒歩で十分程歩けば、もう辺りは民家ばかりだ。
地図とコンパス、教授の部屋から持ち出した諸々は忘れていない。
狐目にどんな企みがあるにせよ、鹿島のすることはただ一つ。
竜の確保だ。
可及的速やかに見つけ出し、取り戻さなくてはならない。
大事な研究材料だからというだけではない。
扱い方を知らない人間の元に竜を置くことは、本当に危険なのだ。
竜自身のストレスにもなるし、何かの拍子に竜から危害を加えられる可能性も有る。
赤ん坊竜と言えど、人間にとっては猛獣同然だ。
あの盗人がまるで平然としていたのが、鹿島には信じられないくらいだった。




