四十二皿目、 ――再び、B面 2
鹿島の所属する研究所と、《信奉者》は敵対している。
片や“竜”という生物を解析しようとする科学者で、片やそれを信仰する宗教者では、相互理解の余地が無い。
鹿島達(厳密には教授)が卵を持ち出したと知ったら、力尽くで取り戻そうとしてもおかしくはない連中だ。
彼らの中には、稀に《魔術》という特異な技能を扱う者が存在する。
例えば、何も無いところへ火をおこしたり、つむじ風を吹かせたり、雨を降らせたりすることができる。
それらは、“あちら側”の技術で成し得る超常の現象だ。
彼らは昔、崇めた竜からそれを習い、現在までひっそりと受け継いで来たらしい。
魔術を行使する者は、竜の教えを体現する者として“竜司祭”と呼ばれる。
きっと狐目は、その司祭だったのだろう。
「まさか本物に会えるとはな」
こんな時でもなければじっくり取材をしたいところだが、同じものを求めている以上、再びまみえれば争うことになるだろうと思う。
その時のためにと、鹿島は魔術や司祭に関する資料をひっくり返していたのだが、成果は先に言ったとおりだ。
司祭ならば、竜を探すにも鹿島程もは苦労しないのだろう。
追うにせよ追われるにせよ、有利になるためのカードは増やしておきたいところだった。
「仕方ない。あれを使うか」
鹿島は、教授の部屋の戸棚からトランクケースを取り出した。
幾重もの鍵が厳重に掛かった中に仕舞い込まれていたのは、小型の双眼鏡と白く滑らかな刃を持つ短剣。
勝手に持ち出したそれらを、鹿島は自分の鞄に詰め込んだ。
先に出た《信奉者》の説明です。
竜を崇める組織の名が《信奉者》。
その中でも魔術を扱う上位の人を《竜司祭》、
魔術があまり使えない下位の人を《信者》と呼びます。
別に重要でもないのでスルーでも結構ですw




