四十皿目、 ――知らぬが仏 4
おばあちゃんが階下へ戻ってから、俺は玄関の扉を閉める。
鍵も掛ける。
途端に、どっと疲れが襲ってきた。
――罪悪感と、自己嫌悪。
世話になってる人に嘘をつくって、嫌なものだ。
貰った金平を冷蔵庫に入れてから、シロウとクロウの様子を見に行く。
俺に叱られたと思った二匹は、部屋の隅の暗がりで小さく丸くなっていた。
「おーい、もう怒ってないからこっち来い。
ほら、おやつもあるぞ」
ざらざらと皿の上に広げたピーナッツやドライフルーツを差し出せば、二匹はそろりそろりと近寄ってきた。
「よしよし、怒鳴って悪かったな」
ぺたんと床に伏せた頭の、耳の後ろをくすぐってやる。
二匹は、すぐに機嫌良く擦り寄ってきた。
シロウは俺の膝の上で丸くなり、クロウは俺の肩と頭によじ上る。
「お前ら重い」
本当に、結構重い。
だから肩凝りになる前に降ろしてしまう。
クロウはやや不満そうだが、シロウとは反対の膝に乗せて背中を撫でてやれば、じきにうとうととまどろみ始めた。
悪戯っ子共も、昼寝の間は大人しい。
二匹が完全に寝入ったところで、そっと座布団の上に移動させる。
今の内に、ちょっと就職活動に出かけてこよう。
音量を絞ったテレビをつけっ放しにしておきながら、俺はそっと部屋を出た。
「……いい子で留守番してろよー」
ぱたり、と極力音がしないように扉を閉める。
それから、足音を殺して部屋の前を離れた。
もしこの時、こんな風に過ごせる時間がもうあまり残ってないことを知っていたら、俺はどうしただろう。
もっと思いっきり、好きなだけ遊んでやれば良かった。と今でも思う。
次回以降、またB面に視点が移ります。




