三十皿目、 ――舞台袖或いは物語のB面 3
まず、鹿島は大きな地図を広げた。
それはこの町を映した地図だ。
研究所の上に赤い円を書く。
それから、コンパスを見て、金の針が指し示す方向を赤い直線で書き入れた。
研究所の車に乗って、離れた地点へ移動する。
山の中にある研究所から、ずっと町の方へ走って、繁華街の中に車を止めた。
コンパスをダッシュボードの上に置き、
現在地と針が差す方角を青いペンで地図に書き込む。
赤と青、二本の直線が交わるところが、竜の存在する場所だ。
離れた二点それぞれからの目的物が位置する方角が分かれば、対象の存在する地点が分かる。
地図上では普通の住宅地だった。
鹿島は思い出す。
盗人を捕まえ損ねた時のやりとりでは、彼は組織的な活動に関わっているわけではなさそうだった。
寧ろ、個人的な、どこからか依頼を受けて危険な行いをする、アンダーグラウンドな何でも屋のようだった。
まあ鹿島にあっさり捕まるほどでは腕前も知れているが。
恐らくは彼の隠れ家だかアジトだかがあって、そこに竜も保管されているのだろう。
盗み返すという手段も無いではないが……
剣呑な手段はなるべく後回しにしておこう。
まずは、アジトを見つけよう。
彼の隠れ家を知っているという情報が、交渉材料の一つになるかも知れない。
そこまで考えた時、
コンコン。
ふいに車の窓がノックされた。




